ここ数年、ヨーロッパでは政治の流れもあって難民の受け入れが増え、外国人に対する警戒心が社会全体に広がってきていると感じます。特にオーストリアでは、ウクライナへの高額な支援金や補助の不公平さ、他の移民による制度の悪用などがメディアで取り上げられることも多く、移民や外国人に対する見方が厳しくなっている現実も否定できません。
「海外=差別」ではありません
「海外に住んだら差別を受けるのでは?」
留学や移住を考えるご家庭から、そんな不安の声を聞くことがあります。確かにSNSには「差別された」「傷ついた」という体験談が多く見られますが、それがすべてではありません。
私はウィーンで37年暮らしてきて、「差別された」と明確に感じたのは、たった2回だけです。
差別されないために私が自然と行ってきたこと
- 差別されそうな場所や人には近づかない
対応が粗雑だったり、アジア人を見下すような態度が見える人や場所には、最初から近づきませんでした。 - 差別をしそうな人間とは距離を置き、絶対に仲良くならない
「この人は危ない」と感じたら、無理に関係を築こうとはしません。自分の感覚を信じて、距離を保つことが何よりの自衛です。 - 毅然とした態度で接する
必要なことはしっかり伝えますが、感情的にはなりません。礼儀をもって冷静に、そしてきっぱりと対応することで、相手の態度が変わることもあります。 - 相手の文化や常識を尊重する
現地のルールや習慣を理解しようとする姿勢は、周囲との摩擦を減らします。
「環境を選ぶ」ことも、差別を防ぐ知恵
差別されたと感じるかどうかは、実は自分自身の「受け取り方」にもよると私は思っています。
たとえば、ただ無愛想なだけの人を「アジア人だから冷たくされた」と解釈してしまえば、それはすべてが差別になってしまう。ですが、実際にはその人が誰に対してもそういう態度だった、ということもあります。
「差別を受けるかどうか」は、自分がどこに行くか、誰と関わるかで大きく変わります。
人は、選んだ環境に大きく影響されます。自分に合わない、違和感のある場所には近づかない。変な言い方かもしれませんが、差別されそうな場所や人を「察知する力」を養うことも、長く海外で暮らすうえでの知恵です。
私は、感情的に訴えるよりも、冷静に話す、相手の立場も理解しようとする、そしてきちんと経済的にも精神的にも自立している姿勢を見せることが、結果的に「敬意」を引き出すことにつながると感じています。
万が一、差別的な出来事に遭ったら
- 「あれは私が悪かったのでは?」と自分を責めないこと
- 冷静に事実を切り分けて処理する心の強さ
- 一人で抱えずに、信頼できる第三者や弁護士などに相談する勇気
結びに
「差別をされたくない」という気持ちは当然です。
でもそれ以上に大切なのは、自分の身を置く場所、関わる人をきちんと選ぶこと。
そして、何かあったときに過度に傷つくのではなく、きちんと距離を取って対処できる冷静さと強さだと思います。
私の実体験を綴った過去記事も、ぜひ参考にしてみてください。