ピアノをたくさん練習しているのに上達しない件について 私の暗い過去。。。

ピアノとヴァイオリン

*今日の写真はウィーン、Mölker Basteiにあるベートーヴェンの家*

私の子供の時の悲しいお話をします。

私は中学生くらいから、かなりのピアノ狂になり、相当量の練習をしていました。
うちはクラシックを聴くような家庭ではなかったのですが、レッスンで耳にするショパンやベートーヴェンの曲の数々、心をすっかり奪われていました。

昼休みは学校の音楽室で親友と代わりばんこにグランドピアノで練習、学校からはさっさと帰宅し、すぐ練習。クラブ活動なんてそんなものでピアノの練習時間を削られたくないので、一番楽そうな「郵便友の会」や「ドイツ語クラブ」(今考えると、その時に覚えたのはGuten Tag(こんにちは)だけです)に入って、即帰宅で練習。

中学生時代、毎日4時間〜7時間は弾いていたと思います。
夜まで弾いているのでもちろんかなりの近所迷惑。庭にタバコを投げ入れられていたことは、大人になってから知りました。(のちに防音室に改造)

当時の私の先生は某音楽大学の教授先生でした。
その前の先生の紹介で、小学生の高学年から師事していました。

レッスンの様子はこうです。

まず、指ならしでハノンを弾きます。弾き終わると先生、

「はい、じゃあエチュードね〜」
チェルニーなどのエチュードを弾きます。

「暗譜して次の曲やってきてね〜」
バッハを弾きます。ちょろっと指使いなどを書いて、

「じゃあ、次は○番ね」
ショパンなどの曲を弾きます。

「フォルテ〜〜〜!ピアノ〜〜〜!」と手をパンパン叩いて言うだけ。立派なシュタインウェイがあるのに、ご自分では単旋律くらいしか弾きません。

「暗譜してきてね、次はじゃあ、リストのラプソティの1番にしましょう」
先生がお休みに(寝ていない)なっていない間は、ダンヒルのタバコの匂いがしてきます。(当時は結構普通なことでした)

はい、お会計はワンレッスン1万8千円!(45年以上前の話です)
午後のレッスンに行くと、高価なカウチテーブルの上にはこの金額の入った封筒が5枚以上置いてありました。全部税金抜きです(笑)子供心に、「私も大きくなったらこういうお仕事になるんだわ、よかったわ」と思ったものです(悲しすぎ!)

このレッスンで上手くなるわけがありません。

でもそんなことは子供の私にはわからない。音楽ど素人の母になんてもっとわからない。先生はご立派な音楽大学の教授様、素晴らしい方に違いない、と信じるしかありません。

ある日、これまた某音楽大学に勤務する楽理の先生と知り合い「ピアノを弾いてみてよ」と言われ、演奏しました。私が弾き終わると彼女は絶句。

「あんた、どのくらい練習してるの?」
「だいたい6時間〜7時間くらいです」
「はっきりいうよ。だめだよこれ、全部めちゃくそで嘘ばっか。どうする?」

私はそんなことを言われたのは生まれて初めだったので大ショックです。もう、号泣。

ピアノが何よりも大好きなのに、こんなにたくさん練習してるのに、練習しすぎて手首の下の骨が曲がっちゃうくらい頑張ってるのに、私は下手なんだ。もう死んじゃいたい!!!音楽大学にも入れないかもしれない!!(思い出して涙が出てきた)

その先生のお母上はピアノを教えるのがそれまた上手で有名な方でした。
すぐに、「ママ、大変なのがうちにいるよ、今ちょっと来てよ」と電話してくださって、私の母にも即電話をして会議。

結局はその日からお母さん先生に教えていただくことになったのです。

すべて、やり直しです。コルトーのテクニックという教本を使い、ショパンのエチュードも数小節単位で、身体や手に負担のない奏法を教えてくださいました。平均律も声部を別々にバラし、全てやり直しです。最初の頃は、たいしたお金も取らずに毎日、少しづつレッスンしてくださいました(手を壊していたから)。私の基礎はすべてこの先生によるものです。感謝してもしきれないくらいです。

で、何が言いたいかというと練習しても練習しても上手くならないのは、私の場合は100%指導が悪かったということです。「何も指導しない」指導法が最も悪だ、ということがお分かりになるでしょうか?

やる気のある学生は自己流で練習します。ピアノは大好きなので、見よう見まねで色々やってしまいます。当時はネットもなかったし…。
正しい練習方も教えず、適当に教えるとこういうことになるのです。

母は数年にわたって大金を注ぎ込み、私は何も得なかったのです。
素人が何も知らずに、言われたままにどこかの先生を紹介され、ないものを信じて突き進む。。。。

現代の日本ではそんな人はいなくなっている事を祈ります。

練習しても上手くならない、その最大の理由は
「練習方法が間違っている」これにつきます。

この練習方法をきちんと伝達できない教師はだめです。
ご自分が一生懸命練習をしているのに「なんか下手だわ」と思う場合は、セカンドオピニオンを求めてください。道が開ける可能性があります。

結果、私には不幸なピアノ中学時代だったのですが、この経験があるので、私は自分の娘の先生選びには命をかける勢いで望んできました。同じ悔しさを繰り返してなるものか、と必死でした。ひょっとしたら、うちの娘に最高の先生を私に探させるため、神様は私にわざと悪い先生を与えたのかもしれません(そんなわけないか)

追記ですが、ムスメは今、最高に尊敬できる先生のもとで学んでいます。毎朝起きて、幸せで涙が出るほどだ、と言っていますので、やっぱりね。教師というものは大切なのですよ。