ピアノでもヴァイオリンでも 複数の先生や教授に師事することについての私感

ピアノとヴァイオリン

今日は、「ピアノやヴァイオリン(きっと他の学科でも)複数の先生に習うということ」について、私の思うことを書いてみたいと思います。さて、そういう機会はいつやってくるのでしょうか?

その1.「今習っている先生から、その先生の先生(教授)を紹介された場合」

音大進学を視野に入れて、先生の先生である音楽大学の先生に習い始める事は良くあると思います。その場合は、例えば毎週今までの先生、月に2回、教授先生、というふうになるかもしれません。そして音大合格の暁には教授先生にお渡しする、というケース。この場合は複数の先生の上下関係がしっかりしているのでなんの問題も起きないと思います。

ここで、しばし起こる問題があります。
あなたの「先生」は、自分の出身音楽大学を勧める場合が、殆どだと思います。そして、その先生の先生は、その音楽大学の教授だったりします。しかしあなたが、他の音楽大学を視野に入れている場合、もしくは、その先生の出身音楽大学を希望しない場合、困ると思います。「音大への進路など 自分の希望は後悔のないように勇気を持って発言しよう」というタイトルのところにも少し書きましたので、興味のある方はどうぞ探してみてください。

話は本題からずれますが、その時の「どうしても言い出せない」、で一生後悔することになることは、思いのほか多いものです。その時は慎重に調査して、行動してみてください。

その2.「自分で他の先生を見つけたのだけれど、今までの先生にも習いたい」

これは音楽大学などの希望者ではなく、「楽しく趣味でピアノを」、と思っている人達が、「知らない」からこそやってしまうトラブルです。「無邪気に悪気なく、平気でやってしまう」けれど、先生側はどびっくり。

私はある親御さんに、ごく普通に「うちの娘は夏休みの間ブルガリアに帰るので、その間ブルガリアの私の親友にピアノを教えさせたいの。で、あなたに習ってる曲を続けてやりたいのだけれど、他はどの曲をやったらいいかしら?」ごく普通に、さらっと言われた時は、正直ぶっ飛びました。目が点です。

ピアノは算数や語学のお教室とは違います。
私(というかピアノの先生は誰でも)は、自分の経験に基づき、自分にそれなりにメソッドがあって、それに沿って計画を立てて教えているます。よって、未完成段階で他の人に口を出されるというのは考えられません。(私の教授からなら別ですが)

でもこのお母さんにとって「ピアノのレッスン」も「算数の宿題」も一緒の感覚なのです。なぜなら「ピアノのレッスンというものを知らないから」。そして「こう言ったら相手はどう感じるだろう」という想像力の欠如が相手を不快にさせる。

きちんと説明したら、「まあ!」と驚いて、理解してくれたようではありましたが、そんなものです。普通の教師はこういうパターン、誰でも不愉快に思うので気をつけましょう。

その3.「先生達に内緒で習うこと」
これはもう、絶対にまずいです。先生を変わるだけでも一大事なのに、内緒で2人の先生に習うことは絶対にタブーです。なぜなら、絶対にバレるから。

ある例。A教授に習っていた当時小学生高学年の女の子が、内緒でB教授に習い始めました。親御さんとしてはB教授に乗り換えたかったのですが、B教授のクラスに正式に取ってもらえるまで、言わないでおこうと思いました。A教授も可愛がってくれるし、コンサートの機会は多いし、利点は多い。だから黙って2人に同時に習っていました。

しかしある日、B教授がA教授に偶然どこかのパーティで会った時に、「ああ、ところで、あの○○はうちに習いにきてるんだよね。」と言ってしまいました。A教授のプライドはズタズタになり、その女の子を即、破門。「今後いっさい、死んでも私に顔を見せるな」と怒り、電話にも出てくれず、お詫びもお別れもできませんでした。一方、B教授はその子の実力をあまり買っていなかったのでしょう。数年たっても自分のクラスに取りませんでした。自分が「教授としてモテる」事を誇示したいあまりに、自分から約束を破って言ってしまう、そんな人を私は数人知っています。。。。あと、勝手にライバルだと僻んでいる、周りの学生や親は絶対にリークします。(こわい)

この例、10年後には和解したと聞きました。他人事ながら嬉しく思いましたが、本当にこれはこの世界のアルアルです。ナイショは絶対にバレます。永く良い関係を保ちたいのならば、勇気をもってお話しすることをお勧めします。

その4.「両方の先生了解の上、習う場合」

両方の先生が納得して、了解してくださる場合も良いと思います。
ただ、ここで気をつけなければいけないのは、一方の先生が、一方の先生に頼ってしまって、最終的にどっちの先生も責任のようなものを感じてくれなくなる場合です。特に受験の際は、親御さんのきちんとしたフォローが必要となります。そして「どうせあっちで可愛がってもらってるんだろう」と一方の教授が、その学生に興味を示さなくなり、援助が減る、というのはあったりします。

こう考えると、やっぱり複数の先生に習うことはよくないのでしょうか?しかし、以下の場合は別です。

どうしても習いたい先生が、海外や遠い都市に住んでいて、たまにレッスンに通いたい。マスタークラスに参加したい。この場合は、参加する前に、自分のメインの先生に正直に話しておくことが重要です。その際、メインの教授がどう思い、今後の態度が変わるかもしれない、ということも大いにあり得るので、あくまで自己責任で行うべきです。考えるべきは、「自分が教授の立場だったら、どう感じるか」です。

お稽古レベルではなく、音大生以上の場合、自分が習っている先生よりも、魅力ある先生を見つけた場合はまず、両方に習うという選択よりも、替わる決心をお勧めします。

なぜなら、音楽的に目指すところは一緒でも、アプローチが違う、ということは演奏する側にとってかなりのストレスになるからです。

そして特に音大と関係のない道を歩んできた親御さんにありがちな行動があります。
無邪気な「欲張り現象」です。こっちの関係も欲しい、これも捨てるのが惜しい。しかしこの世界は非常に狭いです。誰がどこのレッスンを受けたか、面白いように伝わります。嘘は最悪です。二股かけられた先生はそれはもう侮辱された気分になるので、憎まれて当然でしょう。

これもありがちな「教授が誰のレッスンを受けてもいいっておっしゃったの」
よく考えてみましょう。本心かどうか。私が当事者だったら、「うちに興味がないのかな」とまず思います。全てはその場の、ドイツ語でいう「お腹で感じる感覚」です。
あまり敏感になるのもなんですが、鈍感よりは良い気がします。

こう書いてみると、つくづく大変だなあと思うのですが、全ては結局人間関係なのです。
自分が相手の立場だったらどう思うか、そのリスクを冒しても、やりたいことなのか、よく考える機会になると思います。