日本にはある「音大附属校」、オーストリアには存在しない理由
本当に定期的にいただく質問なので、今回あらためてまとめてみます。
日本とオーストリアの教育制度の違い
日本には、東京藝術大学をはじめとする多くの音楽大学に「附属中学・高校」が存在します。普通科の授業と音楽の専門教育を両立できるこれらの学校は、音大進学を見据えたシステムとして定着しています。
しかし、オーストリアにはこのような「音楽大学附属の中学・高校」という制度は存在しません。ここを勘違いして留学を計画すると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。
ウィーン国立音楽大学の「才能教育クラス」
ウィーン国立音楽大学には、16歳以下の若者を対象とした「才能教育クラス(Begabtenförderung)」があります。
このクラスでは、週1回の個人レッスンに加え、簡単なソルフェージュやアンサンブルが受けられますが、いわゆる学校教育ではありません。
また、このクラスだけでは滞在許可が下りないため、通常の学校にも通う必要があります。
その後に進む「予備科(Vorbereitungslehrgang)」
16歳以上になると、「予備科」への進学が可能です。予備科ではより高度なレベルが求められ、バチェラー(正規課程)を目指す生徒たちの準備段階となっています。
ただし、こちらも中学・高校ではありません。
滞在許可が下りるかどうかはケースバイケースで、実際に却下された例もあるため、確実を期すなら弁護士のサポートが必要です。
付属校がないオーストリア、普通の授業はどうする?
音楽を学びながら一般教育を受けるには、通常のギムナジウム(中高)に通うことになります。中でも有名なのが「ムジーク・ギムナジウム・ウィーン」です。
ここではソルフェージュなどの授業が取り入れられている一方、大学進学資格であるマトゥーラを取得するための一般教科もしっかり学ばねばならず、決して簡単な学校ではありません。
入学枠も限られているため、1年以上前からの準備が必要になることも珍しくありません。
バチェラー以下の子供の滞在について
バチェラー以下の年齢での音楽留学を検討する場合、滞在許可取得には素人ではなく弁護士のサポートを強くおすすめします。
本人ひとりでは滞在できないため、付き添う保護者のビザも必要になります。これらの申請は非常に複雑かつ慎重を要し、費用も安くはありません。
まとめ
日本のように「音大附属の学校に入り、そのまま進学する」という制度は、オーストリアにはありません。
バチェラー以前の年代での音楽留学には、教育制度・ビザ制度・言語・学業・生活のすべてにおいて十分な調査と計画が必要です。
思いつきや勢いだけでは成立しない、それが現実です。