私の思う答えを言いますと、「勉強を続けること」です。実際には「練習をし続けて、レッスンやマスタークラスに通ったり聴講したりして、自分の実力を上げること」「そしてそれを第三者に正しく伝える能力を身につけること」です。これ以外にはありません。
例えば、日本は数年前から副業・自立ブームです。副業で月に20万円稼げたら、さあ自立、サラリーマンなんてやめて独立しよう、自由にもっと稼ごう、楽しめてラクに稼げる仕事を見つけよう、海外移住しよう、大学なんて意味がないのでやめよう、要は実力!進むべし、etcetc
魅力的な文言が溢れています。
これらをピアノ系に置き換えてみると、こんなの本当にあるかどうか知りませんが、想像して書いてみると、「ピアノ生徒爆増集客方法」や「数ヶ月で生徒数は1000人越え」「オーナー化をめざして稼ごう!」みたいな感じですか。
こんな変な文言ではないですが、似たようなものを、すごいなあ、と感心しながら眺めています。ウィーンでは日本のように、誰でもピアノやヴァイオリンを習う、という習慣がないので、生徒100人なんていう事態、かなり非現実的で想像もできません。
さて、そこで私はいつも疑問に思っていました。
ピアノの先生の、もっと稼げるための、本当の意味でのキャリアアップって、なんでしょう?
「ピアノ集客ビジネス」を学ぶために高いセミナーに通う事でしょうか?たぶんそれも大きな成功につながる可能性があるかもしれません。生徒をお客様として理解し、需要に応える提供をする。それももちろん、真面目に大切なことかもしれません。
でも私は思うのです。
ピアノの先生の、本当のキャリアアップにつながること、それは、まずは先生自身が更にピアノを学び続けることではないでしょうか?上達を目指して切磋琢磨すること、自身がピアノを学ぶことをやめないことです。世界中にピアノの素晴らしい教授は沢山います。自分よりものを知っているピアノの先生は沢山いるのです。
いくつになっても、なんか上手くならないなという「先生」も多いはず。それは正しい指導者に、その歳になっても出会っていない、ということかもしれません。さらに、かなり弾けるレベルの教師でも、大学教授であっても学ぶことに終わりはないはずです。
私は娘の関係で多くのマスタークラスに行きますが、いつも聴講生として現役の音大生ではない数人の「ピアノの先生」が参加しているのを見ます。音大の講師の人もいれば、実際に受講するシニアに近い先生もいらっしゃいます。学んで、そして自分の学生や生徒にそれを伝えます。
どんな年齢になっても、演奏技術はそれなりに上がるものです。上手くなれば嬉しいし、それを生徒に与えることができれば、それは幸せなはず。そして生徒の実力が上がれば、評判も上がって、そしてお金もそれからついてくるのです。
どうやって顧客(生徒)をゲットするか、その「テクニック」も必要な事はわかります。かっこいい宣伝文句やコミュケーション力をつけるためにセミナーに行くのも良いでしょう。しかし、口ばっかり上手くて、実際に弾いてみせることが出来ない場合は、やっぱり積極力に欠けます。
でも、実際にピアノを教えるのが上手で、生徒が満足すれば、口コミで生徒は広がっていくものです。生徒のレベルが上がって、コンクールに入賞すれば、コンクールの結果発表の次の日には、門下志願の電話がかかって止まない、というのは冗談ではなく、本当に私がたくさん目にしてきたことです。
極端な例だと思われるかも知れませんが、レッスン料を300ユーロ以上取る教授がいます。それでも門を叩く生徒がいる、ということは、金持ちが居るんだなあということ以外(まあ、そうなんですが)に、その教授が「教えるのがうまい」そして「上手な学生を出している」という現実があるからなのです。
初心に立ち止まって、どうしたら生徒が増えるか、どうしたらお金になるのか、根っこの部分は何かを考えると、私の出した結果は、「幾つになっても練習を続け、学ぶ努力を惜しまない」ということです。そうすると、きっと結果はお金になって返って来る気がします。