ピアノのレッスンアプリやYouTubeが本格クラシックピアノの演奏家は生み出さないけれど、趣味のピアノには充分かも、の件

ピアノとヴァイオリン

*オーストリアは19日からソフト・ロックダウン解除です。ワクチン接種も増えたし、感染者数も減少しているので今後に期待したいです*

いつか、ある大人の学生が私のところに、彼曰く、「お試しレッスン」に来た話を書きました。ピアノの独学はアリかナシか→こちらをどうぞ

彼は、それはもう自信に満ち溢れた様子で、めちゃめちゃにリストやショパンのエチュードを私に聴かせてくれたのですが、彼にはピアノ教師は存在せず、YouTubeで見よう見まねで自己流で楽しく練習していました。

先日、日本のピアノの先生とお話ししていて、似た話題が上がりました。

今はなんとかいう素晴らしいピアノアプリがあって、それは、あの彼がYouTubeでピアノを覚えたように、タブレットにピアノの鍵盤と音符が色つきで現れ、どこの音をどの指で押したらどの音が出るかを教えてくれるそうです。それをみて、指定の鍵盤をどの指で押しているかを真似っこして学ぶそうです。これがうまくいけば、例えば「楽譜」なんかもいらないのではないか?そう生徒に聞かれたら、反論が難しい、とその先生はおっしゃっていました。

私はその先生がなぜ反論できないのかはちょっと理解に苦しんだのですが、私の答えは簡単で、「クラシックのピアノをきちんとに勉強しようと思ったら、そーんなんでは絶対無理、ありえません!楽譜も必要!」だと思いました。

なぜでしょうか?

YouTubeではどの指でどの音を押すかは見えますが、それではタイプライター(死語)を習うのと同じ事です。楽譜アプリで、楽譜に書き込んで、クリックすれば書き込んだ音符の羅列をPCが再生してくれますね。それと全く一緒です。それは機械の出す内容のない音楽です。

画面の上にはどの指がどの鍵盤を押しているかを見て、それを模倣する。

この画面から、レガート奏法や細かい微妙なタッチを学ぶことができるでしょうか?
手首の使い方、肩からの重心や身体の使い方、ダイナミクスにしても音が大きければフォルテ、小さければピアノ、と5種類くらいしかないと思ったら大間違いです。微妙な音の色彩を作り上げていくのがクラシックのピアノの世界。美しい倍音の音色の作り出し方を、それらから学べるとは到底思えません。

私はYouTubeやピアノ学習アプリのようなものを用いた学び方を否定しようとは思いません。趣味で楽しむには手っ取り早くて楽しいと思います。レッスン料を払う必要も、時間をかけてレッスンに通う必要もないから合理的です。利用したい人はどんどん試してみても良いと思います。

私が何が言いたいかというと。

本格的にきちんとクラシックのピアノを学びたい人達は、きちんとした先生にスタンダードな方法で学ぶことが大切だということ。

どんなに技術が進歩して、素晴らしいシステムができたとしても、クラシックのピアノというものは、実際に教える能力のある教師から習うようには習えない、ということです。

が、しかしですよ。
ピアノ教師が本当の意味で美しい音を生み出すテクニックを教える力がないとしたら、それはアプリと同じ、もしくはそれ以下になってしまうかもしれません。

ピアノの先生たちもうかうかしてはいられないかもしれません。趣味のピアノレベルだったら、システムの方が教える力がつく日が、いずれ訪れるかもしれません。。。。。。