生徒とハノンの話が出た時の話。
私が「例えばね、今日は3番にしよう、とか選ぶの。でね、いくつか調を選ぶの。今日はA-DurとEs-Durと短調はf-mollとc-mollにしよう、とかね。で、ハノンの版によってはリズム練習のパターンが何個か載ってるから、そこから6つくらい選んで弾くの。もちろん移調して。そして3オクターヴでなくても、調によっては2オクターヴにするとかね。それで毎日練習すると、本当に譜読みも早くなるし、ピアノの体が一部になるよ。」
と言った時、ゲンナリするか、それとも「いいこと聞いた!私もやってみたら、上手くなれるかも!」
ここがもう、わかれめなような気がします。なんのって、ピアノが上達するか、しないかです。
強制しないのに、次の週には勝手にハノンを買って、嬉しそうに持ってきちゃう生徒さんはやっぱり上達します。
人間、嫌々やったものって結局は身につかないのです。
娘の友人のピアニストは、どんなに疲れていても嬉々として10時間以上さらうそうです。
それが時差の激しい国から国へ飛び回る合間であっても、です。それは狂ってるほど好きだからでしょう。
だーれも、「あなたはピアニスト(ヴァイオリニスト)にならなければなりません!」なんて無理強いしていません。間違って、そういう親御さんの元に生まれたとしても、それがバレンボイムのようなレベルでない限り、言うことを聞いたって、ろくな結果になりません。だって、その親がきちんと最後までサポートできる、なんて想像できないからです。
だから「一回始めたことはすぐにやめてはいけない」とか「勉強と両立できないからやめるなんていう生徒は根性がない」なんて考えは、私はちょっと理解できない派です。別に嫌ならやめればいいじゃん、嫌だっていう生徒を引き留めてお金をもらって教えるなんて、そっちの方が私にとっては地獄です。
去る者は追わず、来るものは(出来る限りだけど)拒まず、が私の主義です。
だって、プロになるのだって、音楽って本当に大変なんですよ。
「音大に行きたい」という生徒さんに、私はかなり説明をしてストップをかける方です。日本のこちらでは色々と違いますが、こちらでは、親御さんが財産持ちだったり、権力者で力ずくで何でも思い通りに出来るなら別ですが(それもどうかと思うけど)ただ弾けるレベルでは生活していけません。
だから、何が言いたいかというと、別に好きでもないのに趣味のピアノやヴァイオリンを続ける意味なんて、本当にお金と時間の無駄な気がしてしまいます。
しかしながら、「好き」と思える人は凄く幸せな一生が待っています。
プロだろうが趣味だろうが、関係ありません。どれだけ弾けるか、も関係ないのです。無理やり人に聴かせるわけでもないし、その人が練習するのが好きで、自分の進歩を幸せに思えるならば、もう、最高です。そんなもんです。