教師にとって「伸びる子」の特徴 その1

ヴァイオリンを演奏する女性。音楽教育のイメージ。 音楽留学と演奏生活

教師にとって「伸びる子」の特徴 その1

まず結論から申し上げます。
もちろん「まともな指導者についている」という前提ではありますが――

「教師に言われたことを、本当に、きちんとやってくる人」
それが、伸びる子の最も大きな特徴です。

これは語学でも、ピアノでも、ヴァイオリンでも、きっと他の分野でも共通して言えることだと思います。
大切なのは「基礎」です。

では、その基礎とは何か。
実は、とても簡単なレベルのことなのです。

ある程度器用な人ほど「こんなの簡単、もうできた」と思いがちですが、実際にはできていないことも多く、やっかいなのは本人がそれに気づかないことです。

ここで、ひとつ例を挙げましょう。
昔のことです。
私の元に、ピアノを習い始めてまだ1年も経っていないイスラエル出身の女の子がいました。

彼女の母親が「ユダヤの大きなパーティーで娘にピアノを弾かせたい」とおっしゃいました。
10歳は過ぎていたものの、ピアノは初心者。
しかもご両親もピアノについての知識はありません。
そんな状態で立派な曲が弾けるわけがないのですが、非常に熱心な“教育ママ”であるお母様は、私が提案する曲に「つまらない曲でイヤ」と次々ダメ出し。

私が「半年間で無理なく仕上がり、人前でも恥ずかしくない曲」として選んだのが、クーナウのソナチネでした。

その子は、当時ウィーンのフレンチスクールで成績トップの優等生。
性格も明るく聡明で、教授たちや友達からも愛される、本当に素晴らしいお嬢さんでした。

私が彼女に出した条件は、

  • 毎週必ずレッスンに来ること
  • 私と一緒に練習し、指示したことを次の週までに完璧にやってくること

当然、学校の勉強が優先なので、ピアノを毎日何時間も練習する時間はありません。
それでも彼女は、レッスン時間にしっかり集中し、すべてをきちんと理解して、わからないところは必ず質問して解決していきました。
次のレッスンには、前回指示されたことがすべて完璧にできている。

ただし、彼女は決して「言われた以上のこと」はやってきません。
あくまでも「復習のみ」です。

本番1ヶ月前には曲は完璧に仕上がり、レッスンはすでに舞台本番のように、礼の仕方までも美しく演出しました。
そして迎えたユダヤの大パーティー――演奏は大成功に終わり、お母様は涙を流して感謝してくださいました。
私もとても嬉しかったのを覚えています。

――一方で、同じように非常に優秀で真面目な生徒さんがいました。
けれど、その方は少し残念な結果になりました。

そのお話は、次回に続きます。