練習の時に気をつけること
ある音大生がぽつりと、
「学校で練習していると、本当に手が痛くなるんですよね」
と言いました。
理由を聞くと、
「誰かに聞かれている気がして、つい“バリバリ弾いているところ”を見せたくなるんです。だから疲れるんです」
とのこと。
ああ、これはよくあることだなと、自分の経験からも思いました。
練習は「上達のため」であって「見せるため」ではない
練習というのは、本来「上達するため」にするものであって、
「人に聞かせるため」にするものではありません。
よくSNSで「◯◯を練習中」というライブ配信を見かけますが、あれは正確には“練習”ではありません。
たいていは「いやあ、練習のわりには弾けてるでしょう?」という雰囲気で、実際には“演奏披露”の場になっています。
ミスをしたくないから「練習中」という言い訳をつけて予防線を張っているのだろうな、と感じます。
(もちろん、全員がそうだとは言いませんが。)
結局のところ、「自分の演奏を聴いてほしい」という気持ちが根底にあるのです。
「誰かに聞かれている前提」の練習は危険
この音大生のように「誰かに聞かれている前提」で練習するのは、実はとても危険なことです。
そんな練習を続けていたら、上達はしません。
むしろ腕を壊してしまう可能性があります。
人の練習を聴くとわかること
以前、ある韓国人の女子がコンクールでこう話していました。
「私はいつもホテルで、他の参加者がどう練習しているかをドアの前で覗き聴きするの。
そうすると、誰がライバルで、誰が大したことないかがわかるのよ」
驚きましたが、確かに一理あります。
人の練習を聞いていると、その人が何を目的に練習しているのか、どこに集中しているのかが、案外わかるものです。(ちなみに、この韓国女子は1位をゲットしました)
「かっこよさ」より「内容のある練習」を
素人が聞いて「わあ、バリバリ弾いててかっこいい!」と思うのと、
巨匠クラスのプロが聞いて「この人、きちんとさらっているな」と感じるのとでは、まったく意味が違います。
練習は「他人本意」ではなく「自分本意」に
当たり前のことですが、
練習とは「他人にかっこいいと思われるため」にするものではありません。
自分が前に進むためにするものです。
他人の目を意識してしまうと、本質を見失いかねません。
そんな危うさを感じたので、今日はこのことを書いてみました。
少しでも参考になれば幸いです。

