ウィーンで迎える新年──38年目の元旦に思うこと

ピアノとヴァイオリン

ウィーンの元旦、今年のリズムの最初の一音

新しい年の朝、ウィーンの空気は少しだけ軽く感じます。昨夜の花火の名残がどこかに漂っているような気もするのに、街はもう普段の顔を取り戻し始めていて、そういう切り替えの早さもこの街らしいなと思います。1月1日は祝日ですが、2日からは平日です。

1月1日は、特別なことをしなくてもいい日です。のんびりと過ごします。むしろ「大きな目標」を声高に掲げるより、今年をどう過ごしたいかを静かに整える日にしたいです。

さて、わたくしごとになりますが、今年でオーストリア在住38年になりました。ウィーン大学に留学し、その傍らで金融機関に勤め、ピアノを教え、長男と長女が生まれました。さらに数年前からは、長女がヴァイオリンを続けてきたおかげで、私の世界もまた別の方向に広がりました。忙しくて大変なことも多いのですが、ありがたいことに、毎日はどこか楽しく、刺激があります。

人生は本当にハプニングの連続で、次に何が起こるかは分かりません。子どもの頃から海外暮らしに憧れはあったものの、まさかウィーンに永住することになるとは思ってもみませんでした。でも「こうなりたい」と願い続けていると、現実になることもあるのですね。考え方や価値観も、日本にいた頃とはずいぶん変わったと感じます。

日本にいた頃の私は、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートをテレビの前で正座して楽しみ、オペレッタ『こうもり』にも憧れで胸がいっぱいになっていました。外国で奏でられる音楽は“本物”で、東洋人は見た目も中身も到底追いつけない——そんなふうに、どこかで信じ込んでいた部分もあったと思います。

けれどこちらで暮らすようになってからは、同じスクリーンの中に、娘の友人や、同門の“パパたち”を見つけて「あっ、弾いてる〜!」と思って盛り上がる(?)側になりました。放映の途中で流れるバレエを純粋に楽しんだり、演奏以外の背景にも目がいったり。人は環境で本当に変わるものだな、としみじみ思います。

だからこそ、新年にあたり、ここに来てくださる方へひとつだけ言えることがあります。焦らなくて大丈夫。願いがあるなら、いつか形になる可能性は十分にあります。ただ、ぼんやりしたままにしないほうが良いと思います。もし「いつか海外で学びたい」「子どもに可能性があるなら挑戦させたい」と思うなら、今すぐ大きな決断をする必要はなくても、少なくとも“情報の整理”は始められます。準備は、始めた日からしか進まないからです。小さな一歩でも、動き始めると景色が変わります。

2026年が、読んでくださる皆さまにとって、実りのある一年になりますように。大きな変化がある人も、いつも通りの日常が続く人も、どちらの一年にも、ちゃんと意味があります。今日の一日が、今年のリズムの最初の一音になるような、そんな元旦になりますように。