昨日の親子レッスンに引き続き、今日は「きょうだい同じ楽器のレッスン」について書いてみたいと思います。
統計を取ったわけでもないですし、日本と外国では色々な条件も習慣も違う、よって一概にはいえないと思うのですが、以下、私の経験からの私見です。
親御さんがピアノやヴァイオリンの専門家で、技術面も精神面もケアできる場合は、うまく行っている場合があると思います。うまく行っている=心を必要以上に病む事なく、双方、もしくは全員、立派に専門家になっている(という意味)
もしくは親御さんが専門家でなくても、上手にケアすれば、専門家になったり、または子供達が楽しく、ピアノやヴァイオリンを趣味として生涯の友としているケースは沢山あると思います。
しかしながら、私の見る限りではかなり難しいです。
なぜなら、上の子供にしてみると、大抵は「遅く始めた下の子より下手ではいたくない」という気持ちがあるからです。しかしながら、遅く始めた妹や弟の方が、要領もいいし、上の子が習っているのを見ているので、上達が早い、ということはよくあります。
親御さんにしてみると、どうせ家にピアノがあるし、新しい楽器を購入する必要がない、先生のこともよく知っているから簡単だし、お教室によっては「きょうだい割引があってお得」「お姉ちゃんと一緒に行けるから、特別に送迎しなくて良いから楽」なんて考えるのは普通です。
でも、上記の理由で、きょうだいが同じ楽器を習う事を、私はかなり懐疑的な目で見ています。下の子が上手くなって追い越しちゃう件です。
親御さんが「下の子にも教えてくれる?」とお願いされた場合、レッスンは受けますが、うまくいく場合はかなり少ないです。どちらかが上手になって、抜かれた方は、止めます。やめてくれればまだ、その子は精神的に解放されるのでOKなのですが、ひとつ、かわいそうなケースがありました。
ある日、妹もピアノを始めたのですが、彼女はピアノ以上に興味を示し、毎日ガンガン練習し、数ヶ月でお姉ちゃんの何倍も上手になって、弾きまくるようになってしまったのです。そうしたら、お姉ちゃんの方はもう面白くない。練習をピタッとやめてしまいました。お姉ちゃんの方は、レッスン中も全く集中力なしで、やる気もゼロ。
「あなたと妹は違うのよ。あなたのペースで楽しくピアノをやりましょう。」というと、と嬉しそうに微笑むのですが、ティーンエイジャーに突入した彼女は、毎日携帯とゲームにばかり夢中で、ピアノへの興味はさらに全くなくなってしまったのです。
親御さんにいうと「姉に難しい曲を与えてはどうかしら?」という素人特有のご提案ですが、練習しない、興味がない子には無理なので、これはもう「一時的にピアノをお休みするのはいかが?」という提案をしました。これで自然消滅になることを願いました。しかしこれがまた意外な展開に。
「家のルールで私と妹はなんでも平等なはずよ。どうして私だけがピアノをお休みするの?ピアノが好きなの、先生も好きなの。やめたくないの!!!」と言って泣く。これはもう、荒療治で「私はとっても忙しいの。とっても残念だけれど、レッスン中にも集中できない、練習しない子を教える時間はないのよ。これはあなたの選択だよ。」ということで、最終的には私の方から切るかたちになりました。これにかかった時間、数ヶ月です!親御さんとの共同作業で、なんとかお姉ちゃんのピアノをストップしたのです。だって、私がレッスンをしても生産性はゼロ、彼女の心がより傷つき、親御さんも無駄金を払う、私もそんなレッスンはしないよ、ということです。ということはやはり、続けるべきではないのです。
しかしながら、「あーあ、妹がピアノを始めなかったら、お姉ちゃんはピアノをやめなかったかもなあ、」と本当に思います。音楽的で、初めは集中力もあって、ある程度上手になっていたのに…。あの時、妹にはヴァイオリンを勧めればよかったのですが、ご両親を見ると、とてもヴァイオリンのケアは無理だなと思ったので(ヴァイオリンははじめは親が一緒にやらないとまず、お金の無駄)ピアノを教えたのですが、なんとも苦い経験です。
そのお姉ちゃんは大きくなって、すっかり吹っ切れて、私に会うと明るくハグしてくれるのですが(今はコロナだからないけど)今でもなんかこう、可哀想な気持ちになります。
以来、専門家にしたい親御さんから相談を受ける場合は特に「きょうだい、違うの楽器の方が、お金も手間もかかりますが、子供の心には負担をかけない可能性があります」とお話ししています。それに室内楽ができるので、絶対に将来楽しいです。趣味でも同じ考えです。
ご家庭を見て、「ヴァイオリン、やってみたら?」と娘に渡すことも増えました。はじめは、たかが「子供の習い事」なのですが、やはり、心のケアは結構大変だと思います。幸せになるためにピアノやヴァイオリンを始めるのに、それがストレスになったり、不幸の原因になるのはやはり悲しいです。下のお子さんのお稽古は違う楽器を考えてみることを、私はお勧めします。