初心者の子供に与える 心をつかむピアノ曲のご紹介 ギロックから

ピアノとヴァイオリン

さて、いつもこの件でご質問があるので、昔も書いたのですが、またこのお題です。
ズバリ、「子供の心を掴むピアノ曲は?」

私のピアノのレッスンでは、スケールのような基礎と、エチュード、そして「曲」、そして読譜みなどのソルフェージュを勉強するのですが、その「曲」のおはなしです。ピアノの曲はレベルが低ければ低いほど、チョイスが少なくて困るものです。大抵のピアノの教本に乗っている曲はつまらないので(本当にそう思う)子供の心をつかめないのも無理がありません。

今日もTwitterで「子供の頃にアニソンを弾いていたら、ピアノを好きになったのに!」という書き込みを発見しました。アニソンでもなんでも、心を掴むことが大切で、いわゆる、「クラシックのスタンダード教本」にこだわることは、私はあまりない、と思っています。要は、ピアノの大切な基礎を習うことができれば、ツールはなんでもまあ、OKなのです。

さて、日本だったら生徒さんはみんな真面目なので、つまらない曲(すみません)でも、「嫌だ」と言わずにやってくれますが、外国ではそういきません。つまらないとすぐにやる気がなくなる、目が泳ぐ、もしくは「いやだーーー」とはっきり言う、それがこっちの子供です。

そこで私がよく選ぶ2曲を書いてみます。これはあくまで私のやり方なので、「えー、うっそー」と思う方はスルーしてください。教え方にはいろいろあると思うので。

ギロック Prowling Pussy Cat(うろつくネコちゃん)

日本のアマゾンで見つけることはできませんでした。日本版はないのかな。。。。私はピアノを弾いたことの無い子供にでも、数回基本的なテクニックを教えた後(指の第二関節が凹んじゃダメとか、絶対にやってはいけない事をきっちり説明した後)すぐに使います。子供にもよりますが、曲を3部に分けて、かなり細かく指導します。同時に指のかたち、音の出し方(例えば鍵盤をきちんと下まで弾くとか)この曲で初めから最後まで同じテンポで弾く、と言う事を覚えてもらいます。出来ないところでゆっくりになっちゃうとか、そう言うのは絶対にアウトです。出来るテンポでやります。

毎回のレッスンで弾けるようになるたび、大抵の子供はかなり感激してくれます。ペダルも使うのでバカ受けです。

ギロック フランス人形

この曲は有名です。YouTubeでも沢山出てきます。「こう言う曲があるんだけれど、やってみる?」といって弾いて見せると、100%の子供の目はハートになって食いついてきます。大人も同様。子供の前で弾いて見せる時に絶対に早いテンポでは弾きません。ゆっくり、しかし美しく、感動してくれるようにきちんとペダルも入れて弾きます。

初めの左手の2つの音を手首が柔軟に動いて美しいスラーが出来る様に、何回も私が弾いて、生徒が弾いて、を根性で繰り返します。その時に手首がどのように移動しているか、しっかり覚えさせます。指使いも守ります。そして「エレガントに弾くのよ、エレファントに弾いちゃダメなのよ」と言うとかなりウケます。(これはブロン先生からのパクり)左手が出来たら次は右手。美しいスラーがかかって、手首が柔軟にかっこよくエレガントに動くように指導します。絶対に妥協せずにやります。出来たら大袈裟に「イエス!素晴らしい!ありえない!天才!!!」とか言うとかなり面白がってくれます。

始めたてのこの時点での目的は、テンポで弾くことではありません。脱力を意識したレガート奏法です。私は曲を長く継続して持ってもらうので、数ヶ月経った時にはテンポで弾けるように自然に導きます。「曲」は進むたびにレパートリーとして子供に蓄積されていきます。ですから数ヶ月習っていればいつでも人前で弾ける曲が数曲あることになります。弾いたらおしまいね、っていう曲はありません。

子供も大人と一緒で綺麗なメロディーが大好きです。オーストリアの子供の教材には「ちょうちょ」だの、「こぎつねこんこん」とかもありますが、どれも大して魅力がないんです。それだったら初めは「スカロボフェア」や「グリーンスリーブス」みたいな哀愁漂うメロディーを数曲弾いて子供に選ばさせ、左手は私が適当に作って弾かせます。テクニックの基礎はスケールやバーナムなどでやるので、曲は少しでも子供が自分から弾きたい(練習したい!)と思えるものが良いと思います。そうしないとまず、子供は自分から練習しません。はじめに自分が好きだと思える曲を選び、自分から練習する癖をつけさせ、完成させて到達感を味合わせれば、あとは続いていきます。

娘が小さい時、ヴァイオリンの教授がよくおっしゃっていましたが、「エチュード」や「スケール」はお野菜とかサラダ。「曲」はお菓子、デザートなのだそうです。もちろんビタミンたっぷりのエチュードは必須ですが、やっぱりデザートが楽しみなのが人間です。出来るだけ魅力のあるデザートを用意してあげたいと思っています。