ある若いピアニストの怒りと「初回ピアノ無料おためしレッスン」お金のトラブルを避けるために

ピアノとヴァイオリン

昔書いたものですが、9月になるとアルアルの話なのでちょっと書き換えてみました。

欧州の某音大で、世界でも有名な教授のもとで学び、きちんと学位を取得して卒業した、私よりずっと若いピアニストが、かなり怒って私にスカイプしてきました。

「ちょっと聞いてよ!キレたわ!!!」
「何?面白い話だったらブログに書くよ〜」
と言ったら、
「問題なし!!」

話題提供をありがとう!

彼女は卒業後、個人でピアノ教師をはじめました。もちろん収入のため。念のために書きますが「日本人ではありません!」

怒りの元はある親子のお話です。話を聞いてみると、別に普通に起きそうな話なんですが。。。。

「○○さんの紹介でメッセージを書いています。6歳の娘が、うちのおもちゃのピアノで遊んでいて、どうやらピアノに興味があるみたいです。
一回、お試しレッスンをしていただけませんか?」というメールを受け、後日アポを設定し、訪れてきたそうです。

彼女はいつものようにきちんと子供向けのファーストレッスンをして、子供も楽しそうに応じて、興味がありそうな雰囲気だったそうです。

そしてレッスンが終わってお母さんが、

「さあ、レッスンは気に入った?ピアノをってみる?」、というと子供が元気よく、

「いやよ!!!」と言ったそうです。

彼女は目が点になったそうです。

続けて母親が、「そうね、彼女には難しすぎると思うわ。もっと大きくなってからの方がいいかもしれません」と言って帰っていったそうです。

「考えられる?この子供の無神経さと親の反応。しかも『今日のレッスン料はいくらですか?』って聞きもしないで、帰ったのよ!!!」

スカイプの向こうでキレる彼女。

あ〜〜〜〜、これはウィーンでのアルアルなので、ここに付け加えて書きたいと思います。

ウィーンでは(多分オーストリア全体?ドイツも?知らないけど)『Schnupperstunde』というものがあって、『お試し無料レッスン』
というものを提供する習慣があります。

よって、初回のレッスン代は『払わなくて良い』という無言の了解がなんとなく出来上がっていて、特に趣味レベルの親御さんはこれを頭から信じているのです。

私は余程の友人や知人の紹介でない限り、ドイツ語でいう、この『お試し無料レッスン』はしない主義です。
なぜなら、私は初回から、本当にレッスンをして相手に具体的な知識を与える自負があるからです。それに新学期に山ほどこんな一回目無料生徒が来たら、本来の生徒の時間がなくなって、本末転倒。9月破産になってしまいます。そこまでして一見の生徒さんをほしいと思っていないのです。

でも誤解があるといやなので、うちに来る前に「はじめのレッスン料は無料ではない」事、そして具体的にレッスン料金もはじめから伝えます。お金のトラブルは嫌なものです。まったくの「他人」が来る場合、何が起きても不思議ではありません。

さて、話を戻します。
彼女は教師歴が私ほど長くないので、

「あなたお金の件ははじめからはっきりと言わないとトラブルになるわよ。ここじゃあ、多くの普通の親御さん、Schnupperstundeが当たり前だと思ってるから。」といったのですが、

大学でバリバリと勉強し、コンクールも良いところまで行って、実力のある若いピアニストには屈辱的な1日だったようです。なんかわかるけどね。

そして子供なんだから(しかも欧州の子供)「いやだ!」と不躾に断っても、そんなのはあり得ることよ!となだめたのですが、

「礼儀のないような子供なんか教えたくないわ!だいたいね、私は趣味の子なんて教えたくないのよ!」とエスカレートは止まりません。

しかし、厳しいことを言えば、そんなに「趣味の子供なんか教えたくない」のであったら、がんばって「音大教授になりなさい」と言いました。コネを作って、音大のヒアリングを受けて、教育科や副科ピアノの講師とか、まだ若いのなら何とかなるかもよ、と。

でもこれ、結構現実的な話なのです。
若い人にとって、特にかなりのキャリアを積んだ人にとって、「普通の人にピアノを教える事の難しさ」を受け入れることは、難しいことなのです。

「ピアノの先生」を主な収入源にして生計を立てていこうと思ったら、楽しい話じゃないかもしれません。このウィーンで「生計を立てるため」には、何人生徒が必要ですか?日本みたいに生徒がゴロゴロいるわけじゃないし、相手側のクラシックに対する価値観の膨大な差と、自分の価値観が相手に伝わらないジレンマ。本当に、それがやりたいかどうかよく考えたほうが良いです。

結構きついと思います。世の中、自分に合わない人は山ほどいるし、お金のためにと思って、たくさん生徒を集めようとしたら「自分と合わない人が来る確率」だって俄然、増えます。「教える」というお仕事はそんな簡単なものではないということです。それだけで生計を立てようと思ったら、かなりハードだということと、まずはお金のトラブルは回避するべく、前倒しになんでも説明する、というのが良いでしょう。