ピアノもヴァイオリンも、みんな大好き、脱力のおはなし。さあ、どう教える?どう習う?

ピアノとヴァイオリン

「脱力」「脱力奏法」これも日本で非常に愛される表現です。
ある程度の脱力は、どんな楽器の演奏家にも必要で、それがなければ30分以上のコンチェルトやひと晩2時間のリサイタルを「痛み」なしにこなす事は不可能だと思います。

さて、それでは脱力奏法を身につけるにはどうしたら良いのでしょう?
ピアノも、特にヴァイオリンで、それを独学で身につけるのは無理だと私は考えています。脱力をきちんと表現して教えられない先生だって、存在するのです。弾けていても、伝えられない先生もいますし、ご自分で弾けないし、伝えられない先生もいます。だから、門下の生徒がみんな上手に演奏できている門下に行く、というのが近道なのは以前お伝えした通りです。

私の経験では、教師が弾いて、子供に真似をさせる方法がいちばん早いです。短いフレーズを、大袈裟に表現して真似させる。手首の使い方や腕の状態、肩などを意識させると、飲み込みの良い子はその場でできたりします。曲全体ではなく、独自のフレーズを使って、覚えさせることがコツです。何度もその場で試すこと。「やってきてね」はNG。子供によっては、後ろから肩甲骨をコツン、と叩いて「じゃ、ここから弾く感じでポンポンやってみて」というと出来たりします。とにかく試す。

子供時代にきちんとそれができていないと、3分もかからない曲でも、最後まで弾くまでに腕や手が痛くなっちゃって弾けなくなる、という人になってしまいます。だから、子供の時に身体で覚えてしまうことは本当に大切なのです。

ヴァイオリンの場合は「力が入る」とそれはまあ、素直に音や身体の痛みに現れます。身体も壊すし、うまくならないし、本当に良くありません。私はヴァイオリニストではないので、詳しいことは述べられませんが、まずは顎当て、肩当て、子供であれば楽器の大きさ、弓の長さなどが身体に合っていない場合がほとんどで、そのチェックは本当に大切です。お子さんの演奏に力が入っているな、自身の演奏が自由にできないな、と思ったらそこを疑ってみるのが早道です。

楽器はOK、身体にピッタリ、となったらそこから脱力についてのワークをすることができます。
私は、の経過を観察することによってのみ、その脱力云々に対して見てきましたが、ひとりひとり手の形も指の長さも違うので、一筋縄ではいきません。よく「お猿さんのように、お指をぶる下げて〜」なんて若い学生さんが子供に指導しているのをみたことがありますが、そんなんじゃ通じません(少なくともうちの娘には無理だった)だって、ヴァイオリンって脱力したら持てないですからね、マジシャンでない限り。きちんと説明できる指導者は必須です。きちんと指導されれば、問題なく伸びます。これも子供時代の指導が大切です。

稀ですが、脱力が出来すぎちゃってるという人もいます。羨ましいようですが、こちらは本当に厄介だそうです。だって、音が出ないんだもの。これこそ、あまりみたことがないと思うので、指導するのは大変かもしれません。

たかが脱力、されど脱力。学ぶ人は経験のあるきちんとした指導者のもとで、ご参考になるかどうかわかりませんが、指導者は自分の真似をさせ、その場で成功体験をさせる、という事をやってみてください。