ピアノでもヴァイオリンでも、レッスン中に「教えたい事」がきちんと生徒に「伝わっているか」問題

ピアノとヴァイオリン

「うちの子は、何度先生に同じ事を言われても出来ないんです!」とか「100回言ってもやらないんです!」なんて親御さんの嘆きを色々なところで耳にします。若い頃は「ふーん」なんて感じで、指導される側(生徒)に問題があるんじゃないか、みたいに聞き流していた文言ですが、最近思うことはちょっと違います。

「それって、指導者が求めていることが、生徒にきちんと伝わってないんじゃないか?」です。

私はもう、こんな歳(笑)になるまで、ムスメがヴァイオリンをやってる関係で多くの指導者を見てきました。それこそ、音大生が教える姿も見てきたし、巨匠クラスは言うまでもありません。で、やっぱり大切なのは「指導力」だ、と言うことです。

数十年前、あるヴァイオリン科の音大生が、子供にレッスンをしていました。その音大生はしきりに、

「〇〇ちゃん、左手は脱力して!力を入れないで、お猿さんみたいにぶーらぶーら、お指がぶる下がった状態でお指を下ろして!」と指導していました。

とにかくこれを1と2の指だけで繰り返す。習っている子供も「???」状態だったと思いますが、見ている私も「こりゃあだめだろう」と思いました。だって、子供に「脱力・脱力、お猿さん」なんて言ったって、疋田天功(?)じゃあるまいし、全部脱力したら、ヴァイオリンは床に落ちるだろうが。。。。。

もちろん、1時間費やしても、子供に進歩は全く見られませんでした。双方ぐったり。
これをやられたら、親御さんが全くの音楽素人の場合、指導がイマイチなのにも気が付かず、ずっと悩んで気の毒なことだろうなあと思いました。

「指導者の求めていることが、生徒に伝わらない」
そしてその原因のひとつとして、あり得ることなのですが「教える側自体が(この場合はヴァイオリンの学生)「脱力」というもの自体を完全に自分のものにして、実践できていない=だから伝えることができない、とうこともあります。難しいです。本人自体が完璧に理解していないことに、気がついていない。モノって自分で出来ないことはなかなか人に教えられないのものなのです。

一方、経験の多い、成功した子供を多く輩出している教授の指導法は、非常に伝わりやすいです。
アプローチのバリエーションが多く、特に言語化した説得力がなくても、例えば、「そこで左手の小指をこっち側に向けてみなさい!」だけの指導でも、その箇所のテクニックがサラッと弾けるようになったりするのです。

何度言っても生徒に伝わらない場合は、指導者は表現を変えてアプローチしてみる事が大切だし、立ち止まって、自分の言っていることが具体的かどうかを見返してみるのも良いかもしれません。当たり前ですが、抽象的な表現、例えば「もっと音楽的に」などは子供には伝わりにくいです。

教わる側の親御さんで、「いつも同じことを言われてもできない」でドツボにはまっている場合は、そのドツボ期間を何ヶ月も続けず、セカンド・オピニオンを求めることも健康的だと思います。