グランドピアノとアップライトピアノ その違いとは?
簡単です。
見た目からわかるように、アップライトピアノは縦型でグランドピアノは大きい! (もちろんそれだけではないです!)
ピアノを弾いたことのない人でも、学校の音楽室でグランドピアノに触ったことがあるかもしれません。単純に中身の構造が違うのです。詳しくはこの、世界のYAMAHAさんのウェブサイトをお読みください。
グランドピアノはハンマーが自分の重さで戻り、アップライトはハンマーをスプリングで戻すそうです。だから、トリラーなど、グランドピアノの方がずっと弾きやすいのですね。私はアップライトで長時間練習すると手が痛くなるので苦手です。
私が子供の頃、どうしてもグランドピアノが欲しいなあと思ったのはまず、そんな構造のことはさておいて(誰も説明してくれなかった!!!)先生のお宅でいきなりどでかいグランドピアノを弾くと、なんか重く感じるし、なによりも、その大きさだけに圧倒されて「緊張して」固くなっちゃって、弾けなくなっちゃう、ということでした。ソフトペダルとやらも、ガクンとかいうし、悲しくなるのです。だから中学・高校時代は、学校にある音楽室で、昼休みはお友達とずっと弾いていたものです。
さてさて、しかし、ほんらいの、グランドピアノの醍醐味はなんでしょうか?
日本の皆さんには、特にアルアルのお答えだと思いますが、グランドピアノだと、迫力のある、大きな音が出る!と思っていらっしゃいませんか?まあ、それも事実なのですが、それだけが目的ではないのです。きちんと調律された(これは何を置いても大切な事で、ちゃんと整備されていなければシュタインウェイだろうがベーゼンドルファーだろうがアウト)グランドピアノは、気が遠くなるような、美しく光輝くピアニッシモを奏でる事が出来るのです。グレゴリー・ソコロフの美音を感じてみてください。
もちろん、猫が鍵盤の上を歩いても、美しい音が出るわけではなく、その為にピアニストはテクニックを日頃、切磋琢磨、学ばねばならないのですが、その為には、このきちんと調律されたグランドピアノが必要になってくる、というわけです。
私が日本から初めてここにきた時、こちらの部屋でグランドピアノを弾いた時のショックを忘れることはできません。
なんでだと思いますか?自分の音がバカデカく、ギンギンとうるさくて、耳が痛くなるほどのショックを受けたのです。理由は簡単。日本の狭い防音の部屋で、グランドピアノを弾くことに慣れていた私は、音の美しさなんて何処へやら、いくら弾いても弾いてる感触がなくて、日本ではただただ、ガンガン弾いていたのでした。それがこっちにきたら、天井は4メートルくらいあるわ、気候は乾燥してるわ、建物の構造も石だし、響く響く、もうギンギンです。
日本は正反対で湿気ていて、音は家屋に吸収されてしまうのです。日本のホールは世界一というほど素晴らしいのに、私の住んでいた当時の昭和の日本の家屋は、ピアノに全く適さないものだったのです。でもそんなこと、若い私が知る由もなく、深くショックを受けたわけです。ヨーロッパに来て、多くの巨匠のレッスンを聴講したり、実際に体験しなかったら、本当の意味でのピアノの美しさに出会わなかったような気がします。
今の日本の家屋はまあ、そんなこともないのでしょうが、何を言いたいのかというと、グランドピアノの醍醐味は、きっと日本にいても、包み込むような壮大なフォルテッシモや、ピアニッシモの美しさと繊細さが自由に表現できる可能性があるということ、そして何よりもペダルが最高にその役割を果たせる、という事です。
ペダルについては、右のダンパーペダルも、左のソフトペダルも、非常に奥の深いものです。芸術的な表現には欠かせないものですが、これをアップライトでは残念ながら学びにくい。ソフトペダルに関しては、アップライトではフェルトのキレがただ降りてくるだけなので、全然違います。だからまあ、クラシックのピアノをかなりきちんと学ぼうと思ったら、グランドは必須になってきてしまうのです。
何が言いたかったというと、グランドピアノは大きい音を出すための道具ではない、ということです。美しさを表現するための道具だと理解して、グランドピアノを楽しみ、より深く、プロフェッショナルに勉強していきましょう。