以前、ある大学生の生徒さん(ピアノは趣味)がいらした時に「どうしてもこのショパンのスケルツォが弾けるようにならないの」と残念そうに私に言いました。「大好きでブランク中(ピアノを先生に習っていなかった期間)挑戦してたんですけどね、弾けないの。才能がないのかしら?」
趣味にしては立派に弾ける人だったので、ちょっと弾いてみてもらうと、これはもう歴然。「これだったら、テンポの上がる箇所は絶対に無理だろうなあ」と思いました。なぜかというと、彼の手自体が、その曲をテンポで弾ける「ピアノの手」に仕上がっていなかったからです。
具体的にどう?と思われると思うので、ざっくりと言えば「そこまでキチンとした練習法で練習してきてなかったから、そのレベルに達していない」ということです。
そして提案。
「今までキチンとした、効率の良い練習法を習ったことがなかったので、できなくて当たり前。そしてそれは『才能』なんかと全然関係なくて、ただの、物理的なお話なので落ち込まないこと。まず、違う曲をやって、しばらくしたらまた挑戦してみましょう!」
で、苦手な早いパッセージの攻略法として、曲の他、趣味でも楽しく学べる量の毎日のスケールとアルペジオを取り入れて、数ヶ月後です。「ちょっと試してみる?」と言って、例のショパンをやってみると、なんかいい感じです。毎日のコツコツ練習、スケールとアルペジオのおかげで、部分練習も手の中にきちんとおさまってきている。
もちろん、趣味レベルです。いうまでもなく、国際コンクールに通過するようなものではありませんが、きちんと、立派に、誠意のある素敵な音楽的なショパンに仕上がりました。テンポだって悪くありません。
だから、どうしても出来ない、壁にぶち当たりっぱなしの曲がある時は、勇気を持って一旦あきらめ、正しい練習法を学べるところへ行ったりして環境を変えたり、時間をおいて他のアプローチから入るとうまくいくかも、というお話です。