大人から始めるピアノ(1)ピアノ初心者の譜読みコツについて

ピアノとヴァイオリン

これは大人から始めたピアノに限った話ではなく、どんなレベルの人においても言えることなのですが、今回は特に初心者、大人の人向けに書いてみようと思います。

さて、ピアノ初心者の譜読みのコツは?

以下、私の指導法です。ケースバイケースでこれが全てではありませんが、以下のようなことを教えているし、一緒に実践しています。ご参考になれば幸いです。

まあ、どこに書いてあることも同じですが、「左右別々に・ゆっくりさらう」ということです。(もしあなたが、両手いっぺんにスラスラ弾けるのであれば、以下を読む必要はないかもです)

まずは、調とリズムを確認です。
「ハイ、シャープがひとつついてる、ということはG-Dur(ト長調)かe-moll(ホ短調)だな」
てな具合です。乱暴にいうと、楽しげな曲なら長調、悲しいなら短調です。

そして、1オクターブでも充分なので、その調のスケールを弾いてみましょう。1オクターブだったら簡単。ピアノを生まれて初めて触る人でも、習えばすぐに弾けるものです。御自分の先生に聞いてみてください。なぜこれが有効かというと、G-Durだったら、「あ、いっつもファにシャープがつくね」と思えることです。そして欲をいえば、3和音を弾いてみてください。ハ長調だったら、「ドミソ・ミソド・ソドミ」です。これを左右やるだけで、感じがつかめるものなのです。騙されたと思ってどうぞ。

つぎはリズム。4分の4だから1小節に四分音符が4つ、3分の3だったら、3つ(かなりざっくり)という具合です。

私は大抵の場合、左手から始めることをすすめています。
なぜなら、左手の方がヘ音記号で馴染みがないし、なによりも、ピアノ曲の左手といえば、たいがいの場合、お料理で言えばお皿です。そのお皿がしっかりしていなければ、お料理だって映えないし、何よりもきちんと豪華なお料理が乗らないからです。

で、左手を制覇する。
簡単な曲だったら、「ドソミソ・ドソミソ」みたいな和音の分散だったりします。これは、先に書いた和音をちょろっと弾いてみるだけで、感覚がつかめているはずです。

早く綺麗なメロディをやりたくて、右手からとっかかる初心者は多いと思います。でもそうすると、リズムもいい加減いになったり、左手をやる気持ちが失せるんです。

できるだけ、止まらずに弾けそうなテンポで始めます。

このリズムを無視して、弾けるところは速く、弾けないところはゆっくり、という悪い癖を決してつけてはいけません。どんなものでも、余裕のあるテンポで始めることがポイントです。

そして弾けないところが出てきたら、そのまま先に行かずにそこでストップして取り出し、そこだけ取り出して部分練習をします。

「早くこのカッコイイ曲をバリバリ弾きたい〜〜〜!」という欲求をひたすら抑え、そして観察しなければいけないことは、自分がどこで「つっかえる」かを冷静に判断し、認めることです。
「自分はここが弾けない!」という事実を受け入れること。いいや、ほっとこう〜、と思ったら生涯アマチュアのピアノ弾きになってしまいます。大人から始めたピアノで、生涯音大に行くことも、チャイコフスキーコンクールで1位になることはないですが、それでもプロフェッショナルなピアノ弾きになりましょう。

さて、話はずれましたが、弾けないところには絶対に理由があります。それを観察して自分で見つけるのです。先生に聞くのももちろんですが、まずは自分で観も察してみましょう。あなたの身体はあなたしか持っていないので、変なことをしていてそれが障害になっているのであれば、それを見つけることもアナタが得意かもしれません。

そして大人のピアノと子供のピアノの違うところは、大人の人は自分で考えて判断する力をきちんと持っているところです。子供は勢いと、その運動神経で、なんの苦労もなく弾けることが多いですが、大人のピアノは頭を使いましょう。それは長所なのです。

さて、譜読みに戻りますが、はじめは数段でストップします。音楽的なフレーズの切れ目でストップするのも良いでしょう。スラスラ弾けても分けて最終的には練習するほうが効率的です。

こんな感じで左手が上手くいったら、右手に取り掛かります。欲を言えば、片手づつの練習で、なんとなく暗譜で弾けるくらいまでさらい込むのが理想です。

両手で合わせる時も、冷静に自分でどこが弾きにくいか、どこで間違えるかを見つけて、そこだけ集中的にゆっくりのテンポからさらい倒します。

ビギナーから脱出して、自分にとって難しい曲などを発表会などで弾く予定があるのならば、先日書いたように、曲中の最も難しいと思われる場所から手をつけます。なぜなら、これは多くの教授が言うことですが「長時間弾いたものが断然うまい」からなのです。
苦手そうな場所があったら、そこから手をつけましょう。

決して数ページある曲の初めっから終わりまで、つっかえながら通しで弾くような練習をしてはいけません。これは時間の無駄で、とても遠回りな練習方法だからです。しかしこれをやっている人が大半だと思います。

ここまで読んでいただけるとわかると思うのですが、必要なのはひたすら忍耐なのですね。早く両手で弾きたい、弾けるところはカッコよくテンポで弾きたい、という欲望を抑え、ゆっくり丁寧にさらい込むことが、結局は早道なのです。

しかし、大人でピアノを始めた人たちのなかで、これらのお仕事を(練習)を「楽しい!」と思える人もいます。コツコツやっていると、その成功体験が現れてくるものなのです。
そうなったらもう、こっちのものです。幾つの年齢から始めても、ピアノが生涯の友となるのです。

楽しくテンポで弾ける日はいつか、絶対にやってきます。
譜読みができればそのあとは音楽的なものを作る作業に専念できます。その日を楽しみに、楽しみながら頑張りましょう!