語学にしても、なんの分野の勉強にしても、自分で学び覚えただけではなく、それを人に教えると、その知識はかなり頭の中に定着し、自分のものになる、というのを経験した人は結構いらっしゃると思います。
例えば私が、ざら〜っとオーストリアの名所の説明をどこかで読んで覚え、それを娘に教えると、さらに自分の頭の中にその知識が定着して、忘れにくくなる、みたいな感じです。
さて、これを応用したものが、「自分で自分にレッスンをする」です。
しかしながらこれは上級者のみにより有効です。なぜなら、初心者はその経験時間の少なさから、「本当に正しいものは何か?」をあまり体験していないので「勘違い」や「間違ったこと」を信じてやってしまうからです。音大生レベル以下の人は、まず人から学ぶことを優先した方が良いでしょう。
話を戻します。
うちの娘がよくやるのが、この、「自分で自分にレッスンをする」です。
やり方は至って簡単で、自分の演奏をマメに録画や録音し、冷静にジャッジして訂正していく方法です。これはかなりオススメです。「なんて私って上手いんだろう、自分で聞いていて涙が出るわ」なんて幸せな人も、ここオーストリアには結構いるのですが、そんな場合でも、できるだけ冷静に観察して判断します。直すべきところは、絶対にあります。直す所がない人なんていないし、それを見つけることができなければ、残念ながらそれは、その人自身の知識・経験が乏しいのです。
「教授法トレーニング」のヒントはありとあらゆるところに転がっています。
人の演奏を聴く機会がある時、例に挙げれば門下のクラスコンサートなどに行った時です。「ああ、この人の演奏は残念!音程も悪いし、センスもない!」なんて、悪いところを指摘するのは、クラシック愛好家の素人批評家でもできますが「この人の、どこを、どういう練習をして直したら、この人の演奏のクオリティは上がるだろう?」と具体的に考えながら真剣に集中して聴くのです。それができるからプロなのです。
日頃自分が教授などに指摘されている所、マスタークラスで誰かが指摘されていた事、それら全ては頭の中の引き出しに入っているはずなので、それを駆使し、改善法を編みだします。「○○教授だったら、ここはこう言うだろうな」なんてことは誰の頭にも入っているものだと思います。
迷ったら、自分の教授に意見を聞くことももちろん大切です。
娘の教授が良くおっしゃいますが、「自分で出来るべきことは山ほどある」です。
自分の演奏を自分で教授し、さらに上達してみましょう。