はじめてのピアノのレッスン どうやっておしえるか、わたしの場合

ピアノのお部屋

はじめてのピアノのレッスンの流れ

はじめての生徒がうちに来た時、初めのレッスンの流れを質問されることが多いので、20歳の自分に助言するつもりでまとめてみました。今の私のレッスンの元になっているのは、多くの優秀な子供達を育て上げた教授達のレッスンを目の当たりにした長年の体験です。楽器こそは違いますが、ロシア・ウクライナ・ユダヤ系のヴァイオリンの天才教授たちの教授法は、すべての楽器に通用するものだと思います。
新しい先生のご参考にでもなれば、と思います。

ごあいさつとスモールトーク

イメージ。可愛い6歳の女の子が、今日の顔合わせを楽しみにお母さんとやってきてくれました。子供は今日のこのはじめのレッスンをとても楽しみにしていたはず。と同時に「どんな先生かしら?」と不安の気持ちもとても大きいです。

  • できるだけ笑顔で、そして
  • オドオドしないこと。
  • 不必要にエラソーにしないこと。
    初めから舐めてかかってくる子供はいません。
  • ゆっくりと話すこと。

「お名前は?歳は?ピアノはどうして始めたかったの?」等々、むずかしくない話題でコミュニケーションをとります。

ピアノに向かう

そして、ピアノに向かいます。グランドピアノの蓋を開けて、大まかにどうして音が出るかを説明します。みんな目を輝かせてのぞきこみます。ペダルの効用も弾いてみせます。

ピアノの座り方と姿勢

ピアノの前に座る時の注意事項を教えます。

  1. 足が地面についていること、(補助台をつける)
  2. 猫背にならないこと、

他にもたくさんありますが、絶対に譲れない2つをまず教えます。椅子の高さは親御さんにしっかりと伝え、家できちんとしていただくようにします。上記のふたつは初日も、そして毎回のレッスンでも何度も注意します。生徒の姿勢がだれるとレッスン自体も崩れてきます。これはピアノもヴァイオリンも同じ。

ピアノの指番号

次は指番号を教えます。

  • 親指から1、2、3、4、5だよ、と教えます。
  • 両手を広げさせ、「はい、1の指はどれ?」
    と言って、パタパタさせます。
  • これをできるまで繰り返す。
    遊びのようで子供は喜んでやってくれます。

ピアノにタッチ

その次はいよいよ鍵盤にタッチします。

座らせます。さっきの姿勢の注意事項を確認します。
「何を気をつけなければいけないんだったっけ?」
出来ていなかったら、

「あら大変!!!何かが間違ってる!!どこが悪いと思う?」
と大袈裟に言って、訂正させます。

「あ〜足が地面についていなかった!」
と気がついたら、

「素晴らしい!!!ブラボー!!!」
と言って大げさに褒める。

アホくさく見えますが、これは大切なプロセスです。

驚かせる、発見させる、褒めて喜ばせる
こうすると頭の中に鮮明に記憶として残ります。

いよいよ鍵盤にタッチします。

私はまず、黒鍵3つに(ファ♯・ソ♯・ラ♯、以下、めんどくさいのでドイツ語で書きます)に 右手の2、3、4の指を置かせます。

そして、私がやることを生徒に真似っこさせるのです。

  • 私が右手でFis Gis Aisを同時に弾き、ターターター、などのリズムで弾く。それを生徒が真似をする。これは大抵できます。タタッタッターなどのリズムでもやってみる。
  • 次はFis Gisだけでリズムを変えたり、教師の即興で、簡単なものから、徐々に複雑なものにしていきます。
  • 和音で脱力しておさえられるようであれば、単音で、Fis Ais Ais なども試していきます。
  • 時折、「難しい?」と聞いてみて(答えはわかりきっている)「簡単だよ!」という答えが返ってきたら、
    「やっぱり頭の良い子ね!」と大げさに感心しているフリをする。これは必須です。馬鹿らしいと思っても絶対にやります。

その際、音の出し方、正しい手の形、を観察します。
(私はロシアンシューレを基盤にしているので、まあるい卵が壊れないような、というアプローチはしません。もちろんこれも時と場合によってちがいます。ここに書いてあることが鉄板すべて、ではないことは予めお伝えしておきますが、長くなるので、省略します)打鍵させたら、音を注意深く聴かせます。乱暴に叩いたら、汚い音が出てるから嫌でしょう?みたいな感じで伝えます。自然な力の入らない指の形で、綺麗な響きが出たら、これまた絶賛します。

この黒鍵のメソッドは、教材などは使わず、すべてわたしのアドリブでやるのですが、最近見つけたこの欧州の教材の冒頭には、私のやり方と全く同じようなやり方が楽譜で書かれています。日本のアマゾンにもあるのでびっくり。興味のある方はご覧ください。

ダレてきたら?

子供が慣れてきて、集中力がなくなったり、なれなれしくなって赤ちゃんぽくなってきたら即座に、

  • 「姿勢どう?ちゃんとできてるかな?!!」
    とビシッと空気を変えます。

これはとても大切です。この行為を挟んでいかないと、ピアノの先生ではなく、ただの優しいお姉さんやおばちゃんになってしまうので要注意です。

ピアノの音名を覚える

この日のうちにドレミの音名も教えます。
メソッドはありきたり、

  • 黒鍵2つグループと3つグループを
    1と5の指で挟ませる遊びを全オクターヴやり
    2つグループの1の指が「ド」って定番のやつです。

オーストリアはドイツ語圏なので音階はCDEFGなのですが、
これで歌うのは不可能なのでうちは両方覚えます。

子供の能力に応じて、無理のない範囲で覚えさせます。

  • 『「ド」はどれ?「これよりしたの「ミ」はどこ?」』
    など、速さを競うゲームもやってその場で頭に仕込みます。

初めはドレミだけで充分、
次回がファ・ソ・ラで2週間、週に2回来る子ならあっという間に制覇です。

初心者に使用する曲

さて、ここからが問題です。
使う「曲」です。つまらない作品だと子供はすぐに嫌になるので私はギロックをいきなり使います。
これも日本にあった!

今まで、何回か私のブログでも書きましたが、私は「海の霧」という曲を、楽譜をはなれて、弾き真似で教えます。経験からいくと、99%の子供はこれでピアノにくぎつけになり、「ピアノ、絶対習いたい!」となります。年齢にもよりますが、大抵はその場で1ページは弾けるようになります。ペダルをつけて、この怪しげな雰囲気の音の響きを体感すると、まず、ピアノの虜になってくれます(私の場合、生徒は全部外人なので、日本人のお子さんがどう反応するかはわからないですが)そばで聞いている親御さんも、かなり感激してくれます。
「今日初めてピアノに触ったのに、なんか綺麗な曲が弾けた!」的な感じ。

そして自然に普通の癖のない手の形になるのが、この曲の長所です。決して五指固定になるような教材を私は選びません。長くなるので省略しますが、「ド」は1の指、「レ」は2の指、みたいに初めに癖をつけると、まず、手首がガチンガチンになります。

これにテクニック的な教本を加えていきます。バーナムや自分でアレンジしたものです。短い練習でテクニックがつくように工夫します。
日本の先生もよく知っていらっしゃるバーナムの、わたしはミニブックだけをつかいます。

ソルフェージュも歌うことも並行して教えていきます。

ピアノはじめての宿題

毎日ピアノを弾きましょうね、とお約束ごとのように伝えますが、言っても面白くなかったら子供は弾かないので、私は毎回のレッスンに気合を入れます。楽しいと思ったら、誰でも自分から弾きます。

  • 初日の宿題は「今日習ったことをお母さんかお父さんに教える」です。

上記の全てを、ほとんどの人(年齢を問わず)ができるわけではありません。個人差はありありです。できるところまでで充分です。
うちは可愛いシールも教材グッツも一切使いませんが、レッスンに来るたびに少しづつ、(自宅で練習する時間に比例して、ですが)進歩させ、レパートリーが増えていって、楽しいピアノ人生の始まりとなります。

そうなるようにお手伝い出来れば幸いだと思っています。ご参考になれば、と思います。