留学の心得:音楽留学におけるアパート探しのポイント

音楽留学のために

もう10月も半ばに近づき、留学生の皆さんは既に大学登録を済ませ、クラスによってはレッスンも始まり、新しいスタートを切られていることでしょう。少しタイムリーではないかもしれませんが、今日は留学に伴うアパートや寮について書きたいを思います。これからの生活基盤を築くために、住まい選びは非常に重要なステップです。久しぶりにちょっと長めにまとめてみました。

まず、アパート探しは『出発前から早めに開始する』ことが重要です。余裕を持って探し始めましょう。
また、入学手続きが完了していない段階では、滞在許可証がないため、大手の不動産業者から通常のアパートを借りることが難しい場合があります。そのため、まずは滞在許可証までの期間を考慮してくれるような「学生寮」に入ることが勧められます。もしくは「個人」から借りる方法もあります。

寮の利点は、場所にもよりますが

学生寮に入る利点は以下の6つです。

1.手続きが簡単:寮は一般的に入居手続きが簡単で、滞在許可証がなくても入れることが多く、入学手続き前後に柔軟に対応してくれます。
2.費用が比較的安価:一般的にアパートに比べて家賃が安く、光熱費やインターネット料金なども含まれている場合が多いため、生活費を抑えやすいです。
3.生活のサポートが整っている:寮には管理人がいることが多く、生活上のトラブルや手続きなどの相談がしやすい環境です。特に初めての海外生活では心強いサポートとなります。
4.家具や設備が整っている:寮は基本的に家具や必要な生活設備が整っているため、引っ越しの際に家具を揃える手間が省け、すぐに生活を始めることができます。
6.立地の利便性:寮は多くの場合、大学や公共交通機関へのアクセスが良い場所に位置しており、通学や日常生活の利便性が高いことが特徴です。

ウィーンに寮はたくさんありますが、2つ挙げてみます。

Studentenheimplatz ウェブサイトはこちら
home4students ウェブサイトはこちら

さて、では個人で借りる場合はの長所を短所を挙げてみます。

長所
1.家賃交渉の柔軟性:個人間の契約では、オーナーとの直接交渉が可能なため、場合によっては家賃や初期費用について柔軟に交渉できることがあります。特に帰国する知り合いの紹介などであれば、条件が良くなることもあります。
2.契約条件の融通:不動産業者を通すよりも、契約条件において柔軟性がある場合が多く、入居時期や家賃支払い方法を相談することが可能でしょう。
3.人間関係が築きやすい:個人オーナーとの関係が良好であれば、信頼関係を築くことができ、トラブル時にも柔軟に対応してもらえる可能性が高くなります。特に長期滞在する場合、良好な関係が安心感を生むことがあります。

欠点
1.契約手続きが複雑:個人間の契約は不動産業者を通さないため、契約内容や手続きが複雑になりがちで、法的に不備があることもあります。また、言語や文化の違いがある場合は、理解しにくい点も出てきます。また、きちんとした書面を作らず、口約束の場合はトラブルが起きた場合に面倒です。
2.サポートは運:個人オーナーはその人の性格によって、住居トラブルや設備の修理対応が遅れたり、対応が不十分だったりする場合があります。トラブル時の対応がオーナー次第となります。
3.保証や保険の問題:保証金や保険についての取り決めが明確でない場合があり、トラブル時に保証を受 けるのが難しいことがあります。

こちらはオーナーさんとの運が良ければハッピーとなりますが、逆なら困ります。特に貸し手が「正式でない形」で賃貸することを希望する場合(ざっくり賃貸収入を税務署に知られたくない場合)大切な住民登録を拒否される場合がありますので要注意です。これがないと滞在許可証を申請できませんし、携帯も契約できません。というか、違法です。

詐欺に注意!
海外居住経験がなく、こちらの土地勘のない人がネットで物件を探すということはとても難しいことを挙げておきます。
先に挙げたように、滞在許可証がない人間が借りれる物件は殆どない、ということのほかに詐欺に引っかかるケースがあるからです。長く欧州に住み、経験があればそのサイトを見ただけで、「怪しい」とわかるのですが、日本人にはまずわからないでしょう。以前に挙げた詐欺の例は本当に恐ろしいです。

また、アパートを探す際には、既に留学している人から情報をもらい、帰国する人のアパートを引き継ぐことができれば理想的です。特に音出しかの物件が必要な音楽大学留学生にとって、こうした情報は、手続きがスムーズに進む場合が多いです。このようなつながりを活用して、効率的に物件を見つけることができるかもしれません。

寮は通常ピアノの持ち込みができませんが、音出しが許される部屋が地下などにある場合も稀にあります。これを毎日利用している学生さんもいます。

また、学生証を取得すれば音楽大学でピアノ練習室を借りることができます。これは勿論無料です。難点は自分の好きな時に好きなだけ練習できるのは難しい、ということでしょうか。

ピアノ・ルームのリース
入学手続きが完了する前であっても、安価なピアノ・ルームをリースして練習することも可能です。
これは私の生徒さんもよく利用するスタジオですが、非常に安価です。インターネットでの予約も簡単ですし、お勧めです。ただ、入試前や夏期講習会開催中は混むので、これも事前の予約が安心です。

このように、工夫次第で練習環境を整えることができますが、練習量をさらに増やしたい場合や、長時間の演奏が必要な場合は、やはり音出しに問題のないアパートを選ぶことが重要です。このような物件は通常すぐには見つからず、時間をかけて探す必要があるため、早めにリサーチを始めることをお勧めします。

**結論**
音楽留学におけるアパート探しは、出発前から早めに準備を進め、まずは学生寮など滞在許可証がなくても入れる場所を確保することが理想です。また、ピアノの練習環境を確保するために、学生証を取得した後は音楽大学やスタジオを活用しながら、最終的には音出しの問題がないアパートをじっくり探すことが求められます。既に留学している学生からの情報を活用し、帰国する人のアパートを引き継ぐことで、スムーズな留学生活をスタートさせることができるでしょう。

おまけ
ムスメはマドリードでも音大に通っていますが、ずっと学生寮です。彼女にとって一番なのは「安全性」と「多くの練習時間の確保」です。もちろん賃貸料の安さもプライオリティが高いのですが、譲れないのは先のふたつです。自分が何を優先するか、それを考えれば何を選ぶかが自ずと決まってくると思います。

音大に進む学生さんの素晴らしい出発となりますように!