留学で一番大事なこと──「準備を始める前」に確認してほしい現実
留学は、夢を叶えるための近道ではありません。むしろ、夢を現実に変えるための「長い道のりの入口」です。
ここで少し厳しいことを言います。でもそれは、誰かを否定するためではなく、途中で心が折れたり、無駄なお金や時間を失ったりしないためです。
最初に結論だけ、3つにまとめます。
- 本人の強い意思と主体性がない留学は、ほぼ確実に破綻します。
- 実力の現在地を冷静に把握しない留学は、理想だけが膨らんで危険です。
- 「先生の言葉」を都合よく解釈した瞬間、留学は誤作動します。
ここから、具体的に書きます。
1. 本人が「本気で行きたい」と切望していること(親の熱量だけでは足りない)
留学で最初に必要なのは、才能でも、お金でもありません。本人の意思です。
「親が熱心で、子どもは何となく」という形は、見た目は整っていても中身が空洞です。
特に危ないのは次の状態です。
- 親が計画を進め、子どもは言われたことだけをこなしている
- 手続きや連絡を、全部「誰か」に任せて安心してしまう
- 失敗したときに「先生が悪い」「サポートが悪い」と外側に原因を置く癖がある
留学は、現地で困ったときに最後に自分を助けるのは自分です。
だからこそ、最初から「自分で動けるか」を問われます。
最低限、本人が自分でやるべきことはこれです。
- 大学(または学校)の公式サイトを読む(入試、要項、締切、必要書類)
- 教授や科の情報を調べる(経歴、方針、公開されている活動)
- 可能なら演奏や指導傾向を把握し、自分との相性を考える
「調べる力」は、語学より先に必要な能力です。なぜなら、留学は情報戦だからです。
2. ある程度の実力があること(そして“現在地”を知ること)
夢を見るのは大切です。ただ、舞い上がるだけでは危険です。
留学は「憧れの世界へ行く」ではなく、「競争の中に入る」ことでもあります。
ここで必要なのは、自己評価ではなく、現実の把握です。
- 自分は今、どのレベルの層にいるのか
- 受験に必要な水準と、現状の差はどれくらいあるのか
- その差を埋めるために、何をどれくらいの期間やるのか
これが曖昧なまま進むと、準備が「気分」になります。
そして気分でやる準備は、結果につながりません。
厳しい言い方をします。
留学に行くこと自体は目標ではありません。行った先で勝負できることが目標です。
3. 外国の先生の言葉を「都合よく解釈しない」こと
ここは誤解がとても多いところです。
例えば、講習会などで、現地の先生にこう言われたとします。
「海外の大学を受けてみたら?」
これを、次のように受け取ってしまう人がいます。
- 「先生が私を全面的に推してくれる」
- 「責任を持って世話してくれる」
- 「合格に近いという意味だ」
でも、冷静に考えてください。
その一言は、多くの場合、“可能性を示した”だけです。
推薦でも、保証でも、保護でもありません。日本と外国ではかなりの温度差がここにあります。
外国では、言葉が丁寧でも意味がドライなことがあります。
だからこそ大切なのは、次の姿勢です。
- 期待で補完しない(言われていないことを足さない)
- 具体を確認する(条件、手順、現実的な見通し)
- 「言われた=約束」と思わない
この誤解があると、留学は一気に危うくなります。
期待が膨らみ、現実とぶつかった瞬間に失望が大きくなるからです。
4. 金銭的に現実的であること(綺麗事をやめる)
留学は、理想だけでは続きません。お金の問題は必ず出ます。
ここを曖昧にして進む人ほど、途中で苦しくなります。
確認してほしいのは、夢ではなく数字です。
- 住居費・生活費・授業料・保険・交通費
- すぐに合格できない場合のレッスン料金
- 予想外の出費(引越し、書類、急な帰国、医療など)
「何とかなる」は、だいたい何ともなりません。「日本の音楽大学より学費が安いから留学しよう!」の時代はもう終わりました。
現実的な予算がある人ほど、逆に精神的に安定して準備できます。
5. 語学を学ぶ意欲があること(“できるようになる”前に“やる気”が要る)
語学は、留学を「楽にする」道具ではありません。
語学は、留学を「成立させる」ための土台です。
語学が苦手でも構いません。問題はそこではなくて、次です。
- 分からないまま放置しない姿勢があるか
- 毎日積み上げる覚悟があるか
- 恥をかいてでも伝える意欲があるか
語学は、才能より習慣です。
そして習慣は、本人の意思からしか生まれません。
6. これらが揃って初めて「入試準備の第一歩」が始まる
ここまで書いた条件が揃って、ようやくスタート地点です。
順番が逆だと、苦労が増えます。
最後に、短いチェックリストを置きます。すべてに「はい」と言えるなら、準備を始めていい。
- 留学したいのは、親ではなく自分だ
- 人任せにせず、自分で調べ、自分で動く
- 実力の現在地を、冷静に把握している
- 先生の言葉を、勝手に期待で膨らませない
- お金の見通しを数字で持っている
- 語学を学ぶ意欲がある
厳しく感じたかもしれません。でも、これを満たしていないまま進む方が、もっと厳しい現実に出会います。
留学は、覚悟がある人にとっては大きな飛躍になります。だからこそ、まずは「土台」を固めてください。
