留学で一番大事なこと──「準備を始める前」に確認してほしい現実

音楽留学と演奏生活

留学で一番大事なこと──「準備を始める前」に確認してほしい現実

留学は、夢を叶えるための近道ではありません。むしろ、夢を現実に変えるための「長い道のりの入口」です。
ここで少し厳しいことを言います。でもそれは、誰かを否定するためではなく、途中で心が折れたり、無駄なお金や時間を失ったりしないためです。

最初に結論だけ、3つにまとめます。

  1. 本人の強い意思と主体性がない留学は、ほぼ確実に破綻します。
  2. 実力の現在地を冷静に把握しない留学は、理想だけが膨らんで危険です。
  3. 「先生の言葉」を都合よく解釈した瞬間、留学は誤作動します。

ここから、具体的に書きます。

1. 本人が「本気で行きたい」と切望していること(親の熱量だけでは足りない)

留学で最初に必要なのは、才能でも、お金でもありません。本人の意思です。
「親が熱心で、子どもは何となく」という形は、見た目は整っていても中身が空洞です。

特に危ないのは次の状態です。

  1. 親が計画を進め、子どもは言われたことだけをこなしている
  2. 手続きや連絡を、全部「誰か」に任せて安心してしまう
  3. 失敗したときに「先生が悪い」「サポートが悪い」と外側に原因を置く癖がある

留学は、現地で困ったときに最後に自分を助けるのは自分です。
だからこそ、最初から「自分で動けるか」を問われます。

最低限、本人が自分でやるべきことはこれです。

  1. 大学(または学校)の公式サイトを読む(入試、要項、締切、必要書類)
  2. 教授や科の情報を調べる(経歴、方針、公開されている活動)
  3. 可能なら演奏や指導傾向を把握し、自分との相性を考える

「調べる力」は、語学より先に必要な能力です。なぜなら、留学は情報戦だからです。

2. ある程度の実力があること(そして“現在地”を知ること)

夢を見るのは大切です。ただ、舞い上がるだけでは危険です。
留学は「憧れの世界へ行く」ではなく、「競争の中に入る」ことでもあります。

ここで必要なのは、自己評価ではなく、現実の把握です。

  1. 自分は今、どのレベルの層にいるのか
  2. 受験に必要な水準と、現状の差はどれくらいあるのか
  3. その差を埋めるために、何をどれくらいの期間やるのか

これが曖昧なまま進むと、準備が「気分」になります。
そして気分でやる準備は、結果につながりません。

厳しい言い方をします。
留学に行くこと自体は目標ではありません。行った先で勝負できることが目標です。

3. 外国の先生の言葉を「都合よく解釈しない」こと

ここは誤解がとても多いところです。

例えば、講習会などで、現地の先生にこう言われたとします。
「海外の大学を受けてみたら?」

これを、次のように受け取ってしまう人がいます。

  • 「先生が私を全面的に推してくれる」
  • 「責任を持って世話してくれる」
  • 「合格に近いという意味だ」

でも、冷静に考えてください。
その一言は、多くの場合、“可能性を示した”だけです。
推薦でも、保証でも、保護でもありません。日本と外国ではかなりの温度差がここにあります。

外国では、言葉が丁寧でも意味がドライなことがあります。
だからこそ大切なのは、次の姿勢です。

  1. 期待で補完しない(言われていないことを足さない)
  2. 具体を確認する(条件、手順、現実的な見通し)
  3. 「言われた=約束」と思わない

この誤解があると、留学は一気に危うくなります。
期待が膨らみ、現実とぶつかった瞬間に失望が大きくなるからです。

4. 金銭的に現実的であること(綺麗事をやめる)

留学は、理想だけでは続きません。お金の問題は必ず出ます。
ここを曖昧にして進む人ほど、途中で苦しくなります。

確認してほしいのは、夢ではなく数字です。

  1. 住居費・生活費・授業料・保険・交通費
  2. すぐに合格できない場合のレッスン料金
  3. 予想外の出費(引越し、書類、急な帰国、医療など)

「何とかなる」は、だいたい何ともなりません。「日本の音楽大学より学費が安いから留学しよう!」の時代はもう終わりました。
現実的な予算がある人ほど、逆に精神的に安定して準備できます。

5. 語学を学ぶ意欲があること(“できるようになる”前に“やる気”が要る)

語学は、留学を「楽にする」道具ではありません。
語学は、留学を「成立させる」ための土台です。

語学が苦手でも構いません。問題はそこではなくて、次です。

  1. 分からないまま放置しない姿勢があるか
  2. 毎日積み上げる覚悟があるか
  3. 恥をかいてでも伝える意欲があるか

語学は、才能より習慣です。
そして習慣は、本人の意思からしか生まれません。

6. これらが揃って初めて「入試準備の第一歩」が始まる

ここまで書いた条件が揃って、ようやくスタート地点です。
順番が逆だと、苦労が増えます。

最後に、短いチェックリストを置きます。すべてに「はい」と言えるなら、準備を始めていい。

  1. 留学したいのは、親ではなく自分だ
  2. 人任せにせず、自分で調べ、自分で動く
  3. 実力の現在地を、冷静に把握している
  4. 先生の言葉を、勝手に期待で膨らませない
  5. お金の見通しを数字で持っている
  6. 語学を学ぶ意欲がある

厳しく感じたかもしれません。でも、これを満たしていないまま進む方が、もっと厳しい現実に出会います。
留学は、覚悟がある人にとっては大きな飛躍になります。だからこそ、まずは「土台」を固めてください。