ウィーンにて働くという事 日本でいう「アルバイト」はあるのか?

ピアノとヴァイオリン

今日は日本の「アルバイト」とオーストリアの働き方の違いについて触れてみたいと思います。

日本で「アルバイト」というと学生や主婦が利用する短期間の非正規雇用で時給制が一般的だと思います。一定の時間や収入を超えない限り、社会保険加入義務もないし、柔軟でちょっと気楽な雰囲気があります。

しかしながら、オーストリアの「アルバイト」はちょっと違います。違う、というか日本でいう「アルバイト」なんてないのです。Arbeiter(ざっくり肉体労働者)とAngestellte(ざっくりデスクワーク)の違いはありますが、みんな日本でいう「正社員」みたいな感じです。雇用期間が決まっているか、決まっていないか、等はあります。

オーストリアでは全ての労働者がどんな雇用形態であっても、社会保険(健康保険や年金保険)への加入が義務つけられています。そして、労働者は契約を通じて強力な権利保護を受け、病気や失業時にも社会保険で手厚く支援されるわけです。

面接でサラリーを聞いて「きゃ〜嬉しい!」なんて喜んでいたのに、思ったより保険料を引かれ、手取りの額面を見てがっかり、なんてこちらではよくあることです。(私・・・)その代わり、『贅沢を言わなければ』どこでもなんでも治療してくれるので、ありがたいことは多いです。お金がなくて大きな手術が受けられない、なんてことはないのです。

さてさて、このオーストリアの雇用形態を守らないのは「違法」です。
それはドイツ語で「Schwarze Arbeit」と呼ばれ、日本語で「不法労働」や「違法就労」を意味します。
ざっくり言えば、税金や社会保険の支払いをせずに行われる労働のことで、例えばレストランなどで働いている人が税務署に報告せずに給料を受け取る場合などが該当します。

今爆発的に摘発されているのは、みんなが大好きなケバプ店です。
莫大な追加税・保険料金が発生しているそうです。はじめは衛生局が監査に入ったようですが、次から次へ、出てくる出てくる・・・・その多くが不法雇用だそうです。

バレた場合のペナルティは笑えません。違法就労が発覚した場合、罰金が科されることがありますが、場合によっては労働許可が取り消されることもあります。留学してきたのにこんなことに引っ掛かったら大変なことです。何しにきたんだかわかりません。手取りがちょっと増えるから、なんて軽い気持ちで受けない事をお勧めします。大人なんですから、どうぞ自己責任で・・・・

さて、「アルバイト」についてあまり触れたくなかったのは、私は個人的に音楽留学生の人にアルバイトを勧めたくないからです。ご相談を受けて、アルバイトをしなければここに居られないような状態であれば、私は留学を勧めていません。特別な事情があったり、特に練習の必要ない分野でしたら別ですが、日本で奨学金を探してみてください。

話はまたまたそれますが、日本と違ってヴァイオリンやピアノを習いたい、なんて子供はウィーンにゴロゴロいません。それを当てにしては絶対にいけませんし、まあ、お手伝いさんやベビーシッター同様、少額なら目をつぶっていただける(知らないよ)と思う気持ちもあるかもしれませんが、これも厳しく言えば不法労働になってしまいます。大体的にやったら大変なことになります。

オーストリアでは(きっと他の欧州の国もそうだと思うけれど)働く、ということは正当でなければいけないのです。たかが仕事、されど仕事、「手軽なアルバイト」はないと思った方が良いでしょう。

*なお、この件、ウィーンにおける労働等に関してご質問にはお答えしていません。ご了承ください。
知りたい事のあるある場合は、オーストリア労働組合会議所Arbeitsmarktservice (AMS)労働市場サービス直接お問い合わせください。