*知人宅で撮らせて頂いたシューベルトの飾り物。ブリキのような材料でできています。素敵*
夏休みが終わって、生徒たちが夏のバカンスから戻ってきています。
それぞれ身体的にも頭脳的にも目に見える進歩を見せてくれていますが、小さな問題も出没。まずは大好きな火曜日の午後のレッスン時間の取り合い、というのもありますが、まあそれは都合をつけてくださる、協力的な親御さんのお陰でなんとか解決できそうです。
数年前のお話です。
ある姉妹、お姉ちゃんの方が先に私にピアノを習っていて、良い感じでレッスンしていました。音楽的だし、やる気もある、とても可愛い素直な女の子。
ある日、お父様が、妹にもピアノを、とおっしゃった時、「姉妹で同じ楽器はあまりよくない結果になるので、他の楽器とか習い事はいかが?」というと「じゃあ、ヴァイオリン」とおっしゃる。私は娘がヴァイオリンをやっていることもあって、親が全く関与しないと弦楽器はかなりハードルが高い、ということを知っているので、お忙しいパパとママのもとで(日本の場合は別。みんな真面目だから笑)ヴァイオリンを買ってもらって、レッスンを受けたとしても、ケアも何もできず、ギコギコ音に親も子供も耐えられず、それで結局出来なくなってやめちゃう、という未来図が簡単に想像できました。
他のピアノの先生は?と提案したのですが、それは嫌だという。妹は激しい人見知りで、絶対に不可能だし、貴女がいいと。
妹ちゃんの初めのレッスンは喜びと興奮で、吐いちゃう(もう、そんなの初めてで本当にびっくりした)とかあったのですが、メキメキとピアノに興味を示し、毎日ガンガン練習しちゃって、あっという間にお姉ちゃんを抜いてしまいました。お姉ちゃんの三年分くらい一気に抜いちゃった。恐るべし、「やる気」という魔物です。
さて、それで何が起きたというと、当然の結果ですが、お姉ちゃんの「やる気・完璧喪失」
練習なんてしないし、レッスン中も、すぐに何かができないとイライラして不機嫌になる。思った通りの結果です。焦るばっかりで、何を言っても聞く耳を持たない。
レッスンのたびに、「ピアノだけが人生じゃないんだよ。やめたいならやめても私もママもパパも怒らないのよ。本当にあなたが自由にチョイスして良いのよ。ピアノをやめても私はあなたのことがずっと好きなのよ」と言って聞くのですが、「やめない」の一点張り。
はっきり言って、私にしてみればこんな状態で続けられるのはいい迷惑なんですが、長年知ってるだけに「はいクビよ!」ってわけにもいかない。困った困った、と思っていました。親御さんに何を言っても、お姉ちゃんはかなりめんどくさい性格だそうで、本当にらちがあきません。
で、結局どうしたか、というと「練習しないなら残念ながら教えられない」と私が悪者になってやめさせたのですが、なんともねえ。。。。
妹ちゃんがピアノを始めていなければ、そしてあんなにやる気玉になって成長しなければ、お姉ちゃんは多分もう少し長くピアノをやっていたかもしれないので、複雑な気持ちです。
やっぱり、兄弟・姉妹で同じ楽器は専門の道に進まない限り(進んだとしても)ちょっと辛いものがあります。だって、一緒に上手、なんてことはなくて、どうしても優劣が見えてしまうからです。それを乗り越えればまた素晴らしいのでしょうが。
ピアノとヴァイオリンとかチェロ、フルートなんかだったらきっと楽しいはずですが、経済的にピアノをシェアしたら得、と思う親御さんが多いのも事実です。経済的に余裕があれば、他の楽器、もしくは水泳、とか他の分野のものも良いと思います。
秋になると、あの姉妹を思い出します。
結果どうなったかというと、お姉ちゃんが下手に邪魔しなくなったので、妹ちゃんはもっと伸び伸び練習できて、やっぱり良い結果になりました。ダラダラ続けるのも良くないという見本です。たかが趣味のピアノ、されど趣味のピアノ、です。