さて、9月も半ばに近づいてきました。
昨年11月に私のところに連絡をくださり、ご縁があって留学することになった、まだ未成年のきょうだいのお話です。
まるで何かに導かれているように、トントンとことが運びました。
ウィーンの現地中学校・高校に合格し、5月のmdw(ウィーン国立音楽大学)の入試も無事に終わり、滞在許可証も優秀な美人弁護士のもとで無事にゲット。
いくつものハードルをスイスイと通過して、今日に至ります。
日本語に加え英語も母国語といえども、ドイツ語はまだできません。
ですから一番心配していたのが、現地校でのスタートでした。
ところが、初日からそれぞれあっという間にお友達を作り、早くも人気者。数人が寄ってきて、恥ずかしそうに声をかけてくれます。英語で校内を案内してくれる子もいました。
娘のヴァイオリンのレッスンも、学校が始まって間もないというのに連日のように受けています。
嬉しそうに学校からうちのスタジオへやって来て、その日にあったことをいろいろ報告してくれます。
レッスンも「新しいことを学ぶのが嬉しい!」という気持ちでいっぱいなのが伝わってきます。
娘のレッスンは、ブロン先生などの影響もあって非常に細かいのですが、
「こんなにきちんと学べるのは嬉しい」
とティーンエイジャーが言うのも、なかなかすごいことだと思います。
だから、すぐに良くなる。
何かができるようになると、本当に嬉しそうに笑うのです。
では、どうしてこのようにうまくいくのでしょうか?
もちろん、彼らが生まれつき持っている明るくポジティブな性格もあると思います。
でも、去年からご一緒して、その経緯をずっと見てきた私が感じるのは、やはり親御さんの育て方です。
「他人と比べない」
「おおらか」
「楽器だけに執着しない」
「興味のあることをやらせる」
数え上げるとキリがありません。
そして、もうひとつ大きいのがやはり「語学力」です。
ドイツ語ができなくても、英語が母国語レベルであれば、今のヨーロッパでは中学生くらいから十分に意思疎通ができます。
周りのクラスの子たちも、
「英語、かっこいい!」
と、あちらからやって来て、英語で学校を案内してくれたりします。
反対に、本人が英語もドイツ語もできない。
そして付き添いの親も語学ができない。
この状態で現地の普通校に入ると、残念ながら非常に苦労するケースを私は何度も見てきました。
毎日泣いている子、ストレスから円形脱毛症を繰り返す子、ひどい場合にはいじめにあってしまうケースもあります。
ドイツ語に本当の意味で慣れるまでには、少なくとも2年くらいはかかると思います。
中には大人になるまで現地に馴染めず、子どもの頃の経験がトラウマになっている人もいます。
そういうケースを見てきたので、私は子どもの留学に対して、何でもかんでも肯定的というわけではありません。
「世界レベルで演奏できるような自分の子供なら、多少のことを犠牲にしてでも留学を」
と親御さんは思うかもしれません。
でも、本当に世界レベルであれば、そもそも「留学しなければならない」ということでもないのです。
……少し話がずれました。
何が言いたいのかというと、留学にはやはり家庭での教育、そして現実的な意味での「語学」がとても大切だということです。
そしてもうひとつ。
「留学すること」そのものを最終目的にしない親御さんの態度、そして見守る姿勢なのだと思います。
彼らは料理もできます。
掃除もできます。
親御さんが無理やり教え込んだわけではありません。
彼ら自身が、それを楽しんでやっているのです。
留学というと、学校や先生、コンクール、レッスンのことばかりに目が行きがちです。
でも実際に外国で暮らし始めると、それ以前のところにあるもの——自分で生活する力、人と関わる力、新しい環境を面白がれる力——が、思っている以上に大きいのだと感じます。
まだ始まったばかりのウィーン生活。
この先、もちろん楽しいことばかりではないでしょう。
困ることも、失敗することも、ホームシックになる日もあるかもしれません。
でも、それも全部ひっくるめて留学なのだと思います。
今はただ、学校から楽しそうにレッスンに来て、楽器を手にして、また新しいことを覚えて嬉しそうに笑っている二人を見ながら、
「良いスタートが切れて、本当によかったな」
と思っています。
そして私は、現地でのサポート役、そしてピアノ教師として、これからも二人が自分たちの力でウィーンでの生活を作っていくのを見ていたいと思っています。
