ウィーンでピアノ練習できる?音出しOK物件の探し方と確認ポイント
音楽留学で大きなハードルのひとつが、アパート探しです。普通の留学であれば比較的簡単に見つかりますが、音大生には「音出し」という問題がつきもの。今日はその点についてまとめてみました。(以前にも数回、アパートいついては書いていますが、情報が古くなっているとも思うので・・・)
まず、物理的に大きなグランドピアノを入れる場合、Altebau(古い建物)でないとほとんど不可能です。ウィーンには大きく Altebau と Neubau があり、Neubauは日本の一般的なマンションに近い構造。Neubauでの音出しは、趣味程度ならともかく本格的な練習では苦情が来やすいのが現実です。
一方、Altebauは建物自体が大きく、天井が3メートル以上ある部屋も多く、広々とした印象。グランドピアノを設置するにも十分なスペースがあり、音響も良い場合が多いのが特徴です。
とはいえ、海外から来てすぐに不動産会社に頼んで簡単に見つかる、というものではありません。ウィーンの不動産会社は日本のように手厚く付き添ってくれるわけではなく、手続きは自分で進めるのが前提です。さらに、ネット上の仲介には詐欺もあり注意が必要。昨年も送金直前で気づいて被害を免れた例がありました。
ではどうすれば良いかというと、音大生が多く住んでいるアパートを探すのが現実的です。もしくは長期で貸し出しているホテルのようなアパートです。防音が万全でなく少しうるさいことはあっても、住民層が明確で安心感があります。留学前から先輩や知人に連絡をとり、早めに情報を集めておくことが大切です。
声楽やヴァイオリンなど、ピアノほど大きな楽器でなくても音を出したい場合は同様です。MDW(ウィーン国立音楽大学)やMUK(ウィーン私立音楽大学)の学生であれば、学内の練習室を使えるため、自宅で音が出せなくても練習機会は確保できます。ウィーン市内にはピアノをリースできるスタジオもいくつかあります。
ウィーンでの物件探しは日本とは大きく異なります。音大の合格通知を受け取ったら、できるだけ早く探し始めることをおすすめします。合格証がなければ滞在許可がおりず、正式なアパート契約を結べません。タイミングを計って動きましょう。さらに、ウィーンには学生寮も多く、合格していれば申込が可能。ただし常に満室に近い状態なので、こちらも早めの準備が肝心です。
ウィーンの賃貸の基本(家賃・敷金・仲介の仕組み)
1. 家賃の内訳
- Hauptmietzins(基本家賃)
- Betriebskosten(共益費):共用部維持費など
- 必要に応じてAufwendungen(維持・改良費等)
- Umsatzsteuer(消費税)
※ 契約書では上記が項目別に示されるのが一般的。暖房・電気・ガスは別契約となることが多い。
2. Altbau/Neubauと賃料の考え方
- Altbau(概ね1945年以前築などMRG適用):
 Richtwertmiete(基準値賃料)をベースに、設備・状態・立地の加減算(Zuschläge/Abschläge、Lagezuschlag)で賃料が決まる。目安の「上限が効きやすい」ため、相場が極端に跳ね上がりにくい。
- Neubau(MRGの賃料規制が全面適用されない場合あり):
 自由賃料(相場次第)となるケースがある。音出し可のNeubauは稀で、家賃は立地と需要で大きく変動。
3. 敷金(Kaution)
- 相場はBruttomiete(総家賃)×2〜3か月分。
- 退去時、損傷・未払いがなければ返金。
4. 仲介手数料(Maklerprovision)
- 2023年7月1日以降の住宅賃貸は原則Bestellerprinzip:
- 貸主側が仲介業者を手配した場合、借主は手数料を支払わない。
- 借主が自ら仲介業者に専属依頼した特例では発生しうるため、募集経路と契約主体を確認。
5. 初期費用の目安
- Kaution(敷金):2〜3か月分
- Erste Miete(初月家賃):1か月分
- Vertragsgebühr/Verwaltungs費:物件により発生(有無・額は要確認)
- Maklerprovision(仲介手数料):原則不要(例外あり)
→ 合計はケースによるが、概ね家賃の3〜4か月分相当を用意しておくと安全。
探し方のコツ(音大生向け)
- 音大生が多く住む物件・寮の情報を、先輩や在学生ネットワークから収集。
- 学内練習室(MDW/MUK)を活用し、自宅の音出しに頼り切らない運用を設計。
- 詐欺対策:内見前の送金は避ける/物件住所・所有者・Makler番号を照合/不自然な値引き・短期即決を疑う。
- 合格通知取得→滞在許可→本契約の時系列を理解し、合格直後に本格探索開始。
- グランド前提なら、搬入テストと防音観点の内見を重視。
ウィーンでの生活は慣れるまで大変ですが、環境さえ整えば、これほど音楽に恵まれた都市はありません。良い物件との出会いもまた、ご縁のひとつ。焦らず、確実に準備を進めてください。
 
  
  
  
  