ムスメが11歳くらいから数年間教えていただいた、ザルツブルクはモーツァルテウムの教授だったイゴア・オジム先生が23日にお亡くなりになられました。
今日は先生の思い出を書いてみたいと思います。
私は娘のおかげで、多くのヴァイオリン教授・指導者のレッスンを体験しました。
その中でも素晴らしい教育者のおひとりだったのがオジム先生です。彼の教え方をみて、沢山ピアノ指導にもヒントを頂きました。
以前にも書いたことがあると思いますが、10年以上前のオジム先生のマスタークラスでの話です。
当時、オジム先生は大人気でマスタークラスといえば多くの希望者が集まりました。忘れもしない、ザルツブルクのアカデミーで、先生は40名以上の受講者を教えることになりました。
そのうちの1人の学生は、お世辞にも上手と言えるレベルではなく、教室に集まった人がみんな「なんでこの人がオーディションに通ったんだろう!」と考えていたと思います。
サラサーテのカルメンを演奏したのですが、まず、音程が悪い。早いパッセージは弾けていないしフラジョレもならない。あーあ、と思ったのですが、演奏が終わるとオジム先生は普通に
「いろいろ意見はありますが、まず、改良できるところから直して行きましょう」とおっしゃって、指導したのは「リズム」「フラジョレ」「姿勢」の3つくらいでした。
あれもこれも出来ていない満載の演奏を聴くと、普通の指導者なら初めのページから細かく指導するかもしれませんし、それでも1時間という限られた時間で出来ることはそんなに多くありません。
1時間でなおせるはずもない音程には全く触れず、この学生でも教えればできそうな「リズムを数えること」からはじめ、フラジョレは右はこう、左はこう、という指導でその場でクリア。あまりに偏った姿勢もかなり良くなりました。
音程のことについては最後に彼にだけ口頭で指導していらっしゃいました。多くの観客の前で、「違う違う!もっと上!」とか「下!!!」と叫んだところで、あんまり役にも立たないものです。
オジム先生のマスタークラスの人気は、その素晴らしい指導法だけでなく、ユーモアでした。
低い、素敵なお声を持っていらして、いろんな例を挙げてはいたずらっ子のように笑ったり、時には驚くような素晴らしい美音で、お手本を演奏なさると観客はうっとりして、拍手喝采となったものです。ですから、オジム先生のマスタークラスはいつも満員でパンパン状態でした。
こうして書いていても懐かしくて涙が出てきます。
マスタークラスではお優しく楽しい先生でしたが、門下生にはめっちゃめちゃ厳しく、レッスンで先生にお時間がある時は、「まだある?」と聞かれ、これもこれもとだして居るうちにレッスン時間が2時間以上になって、気がついたら夜、ウィーン行きの電車がなくなっちゃう、なんてこともありました。
練習しない学生には「君の今の練習量を95%アップしなければ、僕のクラスにはもういられないよ」と厳しい言葉を投げることもありました。

