オーストリアで音楽留学中にアルバイトをするということと奨学金の可能性について

音楽留学のために

日本の音大生のイメージは、私が日本にいた昭和の時代は女の子ならお嬢様、男の子ならばおぼっちゃま、の時代でした。裕福で優雅なイメージです。

しかし欧州に住んでいると、音大のイメージは日本のそれと全く違う事がよくわかります。

ロシアやウクライナ、東欧諸国、その他多くの国から来た学生たち。親からの仕送りが全くないケースはぜんぜん珍しくありません。

彼らは生計を立てるために「アルバイト」をしています。
オーストリアは外国からの学生には、労働に関する厳しい規定があります。その学生を雇用する企業はきちんと労働許可を申請して、規定の金額以内の労働を提供します。これを怠ると、不正労働になっちゃって、知らない間に大きなトラブルに巻き込まれることもあるので、学生は各自、きちんとそこを確認して、労働を始めましょう。

私はウィーン大学在学中に、某大企業に「アルバイト」のつもりで働き始めたのですが、しっかり正規雇用されていて(当たり前)本当に驚いた覚えがあります(すごい無知)弁護士のしっかりついた企業だったので、そこで永久ビザも労働ビザもいただきましたが、現在はそこまでやってくれる企業は、ほぼ無い、と思って良いと思います。

話がずれましたが、弦楽器の学生であれば観光客相手のちいさなオケで演奏したり、高額のギャラの出るコンサートに出演できることもあります。レストランで働く人もいるようです。

アルバイトの弊害について。。。
長時間の練習が必要とされるような楽器を専攻している場合、アルバイトは当然ながらネックになります。

私が知るある学生は、入学前の長い間、観光客相手のちいさなオケで演奏するアルバイトをしていました。彼が自国でかなり弾ける子だったと聞いていたので、彼の入試を聞いて私は少しショックを受けました。

入試なのに緊張感ゼロ。人前でシュトラウスを演奏することに慣れきってしまって、目は宙を浮き、まるでウィンナワルツを弾くようにシベリウスのヴァイオリンコンチェルトを演奏していました。幸いにも彼を気に入った先生がいて合格することができましたが、自国で子供の頃はかなり上手だった人だったのに。長時間のアルバイトは練習時間を奪い、変な癖をつけてしまう可能性があります。

それでもお金に困る人へのアドヴァイス
日本の音楽留学の学生さん(特にヴァイオリン、ピアノ)は、ご両親の収入が中流以上という場合が多いです。楽器を購入し、幼い頃から毎週レッスンに通う。副科のピアノとソルフェージュ、地方から東京までレッスンに通う人もいます。時には新幹線で、時には飛行機に乗ってレッスンに通う。日本ではたとえ国立といえども音楽大学、附属校の授業料は数十万円以上。

しかし、特に他の楽器では、日本人の音大生の中でも裕福どころか、ギリギリで生活し、健気に、でもバイトはせずに本当に切り詰めて生活している学生さんもいました。そんな日本人の留学生さんに、私がアドヴァイスできることは、

「音大の担当教授に頼んで奨学金を紹介してもらい、優先的にまわしてもらう」ことです。ウィーン国立音楽大学のウェブサイトに奨学金の掲載があるのでチェックしてみて下さい。

各音大には多くの奨学金が提供されていますが、残念ながらそれらをもらえる人は実力とはあまり関係なく(Auswahlがあったとしても!)教授の独自の判断がモノをいったりしてしまいます。それでもめげずに探す!諦めてはいけません。チャンスはけっこう転がっているものです。

一般公募はされず、されたとしてもオーディションなどもなし、経済証明書もなし、で落とされる事をうちも経験しました。
上記のリストに乗っているにもかかわらず、誰も知らない間に、〇〇教授の誰々さんに行っちゃった、みたいな感じです。オーストリアは悲しいかな、こういうところがあります。ダメもとで頼んでみましょう。頼むのはタダです。実際に高額の奨学金をもらっている学生さんたちを私は知っています。これは不正でもなんでもなく「こういうもの」なのです。

*しかし、仕送りがあって、生活に困らないような学生さんは遠慮しましょう。本当に貧しい学生からチャンスを奪わないように……

まあ、それでもなによりもベストな方法は日本で奨学金をもらってくることです。多くの留学生がロームなどの高額な奨学金を受けていますが、ウィーンでは充分にお釣りがきます。ロータリークラブや各種、留学用の奨学金は結構あるようです。アルバイトよりも返済不要な奨学金(オーストリアの場合は返済の必要な奨学金は奨学金ではありません。クレジット、もしくは借金、となります。外人はそんな簡単に借金できない)を得られるように、頑張ってみましょう。