「クラシック音楽が『わかる』」ってどゆこと?クラシック・コンプレックスについて私見

ウィーン生活

私がこちらにきて本当に疑問に思ったことが、この、日本人のクラシックに対するコンプレックスです。

まず、海外に仕事などで出てきて「クラシック音楽というものがわからなければいけない」と思い込んでいる人のなんと多いことか。そして、こちらの人間とビジネス等で会話する際、ウィーンフィルの最近の演奏について、何かもっともらしい意見を言えないと恥ずかしい、と思いこんでいる日本人のなんと多いことか、ということです。もしくは、「語れたらカッコイイ」と勘違いしている人です。

なんで?と思います。私は幼少からピアノを学んで、音楽大学も卒業して、今でもクラシック音楽と深く関わってはいるものの、自分の興味のない、または多く関わっていない分野のクラシック音楽については、本当に分かりません。

例を挙げれば「オーケストラ」について。
ぼんやりと、好きなオケはあります。でもそれは深く聴き込んだから、というよりもどんな人間たちが集まっているか(個人的に知っているとか)どの流派の弦楽器が集まっているか、などでぼんやりと好みがあるだけです。

私が実際に深く興味を持っているのは、ソロのピアノやヴァイオリン、その辺りの分野です。シンフォニーをオケ別に意識して聴き比べたこともないし、そこまで興味を持ったことは実際ありません。だから、知らない。偉そうな意見も言えません。しかしそれを特に「恥ずかしい」とは思わない。だって、そこまで興味がないんだもの。何が悪い。

「クラシックはどんなに頑張っても、よくわからないんです。だから恥ずかしくて」なんていう人にあうと、なんで恥ずかしがるのだろう、と真剣に悩みます。私から見れば、好きそうでもないのに、楽譜も読めないのに、「最近のウィンフィルは上達しましたねえ」なんていう人の方が数倍恥ずかしいと思います。ウィーンフィルの上達を語るとは何を勘違いしているやら、と驚きの目で見てしまいます。知らない世界を、熟知しているフリして語ることは滑稽です。エリート=クラシックを偉そうに語れる、または批評できる、そう信じていそうな人達を結構な数、見てきました。

興味深いところは、クラシック・コンプレックスを持っているのは日本人だけではないか、と思えるところです。

どんなエリート・ビジネスマンと話しても、こちらの人間は「ああ、クラシック音楽には興味がないんだ。ロックが好きだな」などフツーに述べます。「クラシック音楽がわからないから恥ずかしい」なんて言葉を聞いたことがありません。(まあ、実際はエリート層はクラシック音楽が生活に定着している人が多いのだけれど。。)

私はバレエについて何も分かりません。テクニックについても、何が正当なのか、何がタブーなのかとかその世界について全く無知です。でも美しい音楽と、バレリーナさんのもう、あの夢のようなスタイルと動きを見ると感動して涙が出てきます。「あ〜〜〜もう、最高!」
そんなもんでいいのじゃないでしょうか?恥ずかしがる必要なんて、本当に全くないと思います。