はじめてのピアノのレッスン、例)6歳くん、1回目と2回目のレッスンのようす

ピアノとヴァイオリン

前回、「初めてのピアノのレッスン、どうやって教えるか」を書いたのですが、昔の記録があったのでここに載せてみたいと思います。色々な指導法があります。私の方法はその一部ですし、生徒によってはアプローチを変えることもあります。

さて、当時6歳の最高に可愛い男の子は、私の生徒の弟くん。ピアノや綺麗なメロディが大好きで、昔からお姉ちゃんのレッスンをジーっと見ていたりしました。ホームコンサートではピアノに合わせ、観客席から朗々と一緒に歌っていました(笑)
ある日、お姉ちゃんのレッスンでお母さんが、「今日から弟もやりたいって言うんだけれど、良いかしら?」とおっしゃるので何も用意していなかったのですが、ファーストレッスンを行うことに。

座ってみると足はまだ地につかず。でもやっぱり西欧人で男の子なので手は大きくてしっかりしています。
いつものように指番号を覚えてもらって、鍵盤の上に手を置いてもらう。無駄な力も入らないし、結構きれいで良い感じです。満足。

集中して音を聴かせる第一歩として、いつものやつ、黒鍵三つを2・3・4の指で同時に静かに弾かせます。(これが余裕で掴めるって、やっぱりこちらの子の手は大きい!!!)
「ちょっと、怪しげな素敵な音じゃない?」とか言って、「本当だ!なんかハリーポッターみたい!!」なんて反応してくれたらもう、こっちのものです。ダンパーペダルを踏んでみたりもします。

「ピアノは綺麗な音を出すのがお仕事なんだよ」「大きい音と汚い音は違うよ」と初めから教えます。ここをきちんと押さえると、ピアノをぶっ叩いで遊ぶようなことはまずしないので、子供を教えるには、本当にはじめが肝心です。

リズムに合わせて私が、1・2・2と弾いた後に彼に真似をさせて弾いてもらう、的な事を何パターンか繰り返します。きちんとリズム感もあるし集中力もある。これがOKならばギロックの「fog at sea(邦題:海の霧)」に突入出来ます。

さて、ここまで書いてお気づきになられた方は多いと思いますが、私がこの6歳くんにやったレッスンは、アコースティックピアノでのみ可能です。なぜなら、他の物であったら、どんなふうに鍵盤を押さえても、同じ音が出てしまうからです(ヤマハのハイブリットは別、このレベルならOKです)

6歳くんが家に帰って、私とやったことを家で再現しようと思っても、電子だと出来ないのです。「ブー」しか出ません。タッチも違う。これは悲しいです。これが私が子供にはアコースティックを!とここに書いた理由です。だから、私の子供の生徒さんに限っては、普通のピアノが必要なのです。

さて、曲に入ります。この曲は「ギロック先生、貴方はブラボー!」と叫びたくなるほど、初心者用によく作られています。初心者には黒鍵を弾かせておけばまず、間違いは起きません。物理的に黒鍵を押さえていると、変な手の形にはなりにくいのです。(もちろん正しい指導の上での話)

初めの小節は左手の4・3・2・の黒鍵から始まります。初めは楽譜は無視。弾いて見せて真似をさせます。
左手の4・3・2を同時に、とても注意深く同時に鳴らさせます。ぶっ叩いてはいけません。あくまで、静かに、しかし深く、3音同時に、正確に…
そして「素晴らしく美しい、ミステリアスな響きじゃない?綺麗よねえ。」と言って洗脳させます。(笑)

そして次に大切なことは「『数える』という大切なお仕事を教える」です。
リズムは初めが肝心です。これを逃すと、一生めちゃくそに弾かれる運命になります。正しいテンポに乗って弾ける、という仕事には、はじめの指導が非常に大切になります。

1・2・3とゆっくりめに数えます。(この曲、3拍子ですから)
ゆっくり数え、音を用心深く聴かせます。そして音は鍵盤の指の鍵盤近くにあるのではなく、グランドピアノの蓋から反射して、部屋の隅の空間に届いている事を意識させます。指を指して、「ねえ、あそこらへんに音があるの、見えない?」とか言う。あたかも音が見えているように感じさせることが大切です。そうすると、「僕、見える気がするよ」とか言ってくれちゃう。たいていの子供はこれで引き込まれてくれます。子供をクラシックのピアノの素晴らしい音の可能性に導くことは、教師の大切なしごとのひとつです。

子供は興味を持つと、自分からどんどんとこちらにやってきてくれます。
楽譜を教えていないのに、「今、ここだね!おんなじだね、ここも3つ数えたね!」と言って楽譜を指差すのでブラボー、私の望んだ通り、となります。楽譜にも興味を持ってくることになります。

興味の塊の状態を感じたら、先に進みます。全く初めですが、補助台を使って、ペダルも踏ませます。この怪しげな神秘的な響き、これに興奮しない子供はいません。

そこで有名な彼の言葉「僕、たった2回目のレッスンで1ページ暗譜で弾けるよ。すごくない?」となるのです。(読譜を習っていないので暗譜もなにもないんですが…笑)そして、次に大切なポイントです。

子供が、「もっとやりたい!」と思っているところで止める!これがポイントです。
「この次は次のレッスンでやろうね、今日はここまで!」とストップをかけます。

昔私は、欲を出して、もっと、もっと、とやっていたのですが、そうすると子供の興味が薄れていくのがわかりました。やりすぎると、今度はピアノが辛くなってくる。本気組の子供は○ぬまでやらせますが(嘘です)、頭っから趣味の場合は、腹八分目あたりで、スッと止めるのが理想です。長く長く、ピアノを好きでいて欲しいからです。欲張らない。

そして、最後は「今日習ったことは何?」と聞き、全て繰り返して口頭で言わせて、弾かせてみる。「じゃあ、パパに後で聞かせてあげてね」と言っておしまい。

子供が興味を持つと、「毎日練習してね」なんて言わなくても、楽しいので毎日普通に弾くようになります。私の最高の喜びは、親御さんの「ピアノの練習が朝からうるさくてたまらないの」という苦情を聞くことです。

さて、ここまでの話、独学は難しいです。そしてピアノを専門にやらなかった人が、このように指導するのも難しいです。このやりとりのあいだ中、私は指の形、姿勢、全て観察してここでは書き切れないほど注意を払い、必要であれば、直しています。生徒さんサイドは、まずは正しい指導者を見つけることが大切、そして親御さんはまず、良い先生を見つけることが大切になってきます。

先生の見つけ方については、またいつかまとめたいと思います。
色々な指導法がありますが、私はこんな感じです。他にも多くの指導法がありますが、ご参考になれば幸いです。