ピアノ・ヴァイオリンのレッスンで「集中力のない子供」「ふざける子供」への対処法

ピアノとヴァイオリン

どうして今日はこのお題にしたかというと、オーストリアはまだクリスマス休みの真っ最中、すっかりバカンスに浸ったちびっ子が、休暇からピアノのレッスンに戻ってくると、こういう現象が起きやすくなるので書いてみようと思いました。

残念というか、当然というか、やってきます。この「集中力のない」「レッスン中にふざける」現象が。

この手の子供は2番目に教師泣かせのグループの子供達だと思います。教師泣かせのナンバーワンは「まったくピアノに興味のない子」だと思うのですが、今日はこのナンバー2について書いてみたいと思います。ナンバーワンの「ピアノに全く興味のない子供」への対処法は、後日かきます。

今でこそ慣れましたが、若い頃は「なにこれ、怪獣?」と真面目に悩んだものです。特にここは外国。日本と違ってちびっ子たちは自由奔放、普通の子供であれば言いたいことははっきり言うし、やりたいこともやります。今では何もいわない子供よりずっと扱いが楽ですが、当時は頭が爆発しそうでした。

初めは興味を示していても、すぐに目はグランドピアノの中の方に向かい、私の話はすでに聞いていない。グランドピアノの構造が珍しいのでしょう、ハンマーが上に上がる様子にすっかり心を奪われて、そっちばかりみてしまう。

「今、ド〜レッ、ド〜、のスラーの練習をしてる途中なのに、なぜっ!?」と慌てたものです。そこで焦って子供の心を取り返そうとしても、時、すでに遅し。計画通りにレッスンが進まないことに、イライラしたものでした。

日本の子供であれば、たとえ飽きたとしても、お行儀が良いので、格好だけは聞いているふりをしている。でも、こちらの子供は違います。思った事がそのまま真っ直ぐ行動に直結するので、こちらは口を開けたまま、疲れ果てる、ということもよくありました。

今はもう、すっかりこんなのに慣れ、まったく平気で対処できますが、本音を言えば、体力は相変わらず使うし、無駄な神経も時間も使うので、嬉しいものではありません。

お母さんは横で心配そうな顔をしてるし、でもまあ、子供なんてこんなものです。生徒がいたら、5人にひとりは今でもこんな感じであたりまえ。

今では、ピアノに関係のある、別なことに興味がいってしまった場合は、すぐに、そして気が付かれないように、さりげなく切り替えるようにしています。

もし、ピアノの中身の構造ばっかり見ている場合は、そちらの教育に切り替える。

「どうしてソフトペダルを踏むと音がちいさく柔らかくなると思う?自分で考えてごらん?ピアノの中をもっと良く見てごらん?、何が起きた?見たでしょ?鍵盤が動いて、ハンマーが全部の弦を叩かないからだよ、だから音が小さくなるんだよ」というと、

「ほおおおおお〜〜〜」っとなって、そこは集中しているのでしっかり覚える、みたいな感じです。

そして帰る時に、「どうして左のペダルを押すと、音が小さく優しくなるんだっけ?」と聞くと、「鍵盤が動いて、ハンマーが全部の弦を叩かないからだよ」と答えられる。少なくとも何か別なものを学べるわけです。

読譜を一緒にやっていても、ふと気がつくと、ちびっこの目が宙を浮いている。そんな時はすぐに、しかし「さりげなく」切り替え、違うことをします。

スケールを12・12・12や、123・123・123・の運指法で弾かせたりする、これは結構効果的です。

体力の有り余っているちびっ子には、私が独自に編み出した(笑)リトミックをやらせます。そしてやらせるだけでなく、そのリトミックの結果をピアノで弾かせます。これは結構好評で、親御さんも覚えてしまって一緒にやるケースもあります。

タイミングよく切りかえることがコツです。
さりげなくやらないと「飽きた態度を示したら、面白いことがやってくる」と相手に思われ、面倒になるからです。子供はとても頭が良いです。

子供の気がそれても、負けずに追いかけて、何かを教える。まあ、ゲームみたいなものです。

しっかり怒るのは、小さい子にありがちな(おっきい子でもやる場合がある)わざとふざけて弾いてみたりして、私の反応を見る場合。

ふざけたことを2回やると私は、
「最後だよ。もう一回やったらピアノはおしまい。うちにもう来なくていいよ」というので、絶対に2度としません。怒鳴るわけでも、泣かせるわけでもないです。ただ、静かにそう伝えるのです。

子供は馬鹿ではないので、「ここまでだ」と思う限界点をよく見ています。それからは普通に真面目にレッスンします。それでピアノのレッスンが嫌になって来なくなった子はいないし、そんなに大したことではありません。

ただ、若い先生でこれができない人は結構います。子供に、「ダメだよ」という忠告の機会を逃してしまうと、永遠に子供がふざけまわって、先生としての威厳は無くなってしまい、そうすると後から取り戻すことは大変難しくなってしまうのです。はじめが肝心です。

長年見ていると、はじめはどんなに小動物のようにチョロチョロしていても、ある日突然すごい集中力と興味が出て伸びる、というケースはかなり多いです。

の生徒さんは受験前のティーンエイジャーや学生さんを教えていますが、ちびっ子女子もひとりだけいます。週に2回、全く同じように指導して上手く行っているようです。ヴァイオリンもピアノも基本一緒です。

普通の健康な子供であれば、指導の筋が通っている場合、大抵はうまく行くので、ポイントをついて注意してレッスンしていけば努力は報われます。頑張っていきましょう!