ピアノでもヴァイオリンでも「親のサポート」について 伸びる子の親(6)「本気組」の場合は?

ピアノとヴァイオリン

*今日の写真は3年ぶりのザルツブルク、ミラベルガルテンをモーツァルテウム音大のテラスから写したものです。なんと2年ぶりのアカデミー、最高です*

「伸びる子の親」については、今まで何度か書いてきたのですが、やや、「普通のお稽古におけるケース」を意識して書いてきました。もちろん先生選びについては、共通点があるのですが、それでは「本気組」の「伸びる子の親」とはどんなものなのでしょうか?

結論「そんなのがあったら私が知りたい」です。すみません〜!

子供がその楽器で自立して、食べていける様になるまでのサポートとなるのですが、本当にこればかりは「運」もあるし、不公平も普通にある。親は本当に、ガチに大変なのです。日本はこれに複雑な人間関係が入ってくるので何倍もハードになる気がします。私は日本で子育てをしていないので知らないのですが、お話を聞く限りはかなり大変そうです。

子供の頃から親は夢を持ち、本気で取り組み、1日に何時間も練習させ、本人をやる気にさせ、本人もなんとなく「やりたい」気になって、生活の中心をその楽器にフォーカスします。小さい頃は親も子も、まだまだ夢の中にいるので、希望でいっぱいです。

しかし、思春期がやってきて、反抗期がやってきた。両親の練習に関する価値観が一致せずに大戦争、なんて普通です。楽器をきっかけに離婚となったケースだってあります。

今まで天真爛漫に演奏し「舞台が一番上手!」なんて親も子も信じていたのに、ティーンエイジャーも後半になると初めて「上がる」という事を感じ、急に舞台で間違えないで弾けなくなる、なんてことも起きるのは当たり前です。でもその時の戸惑いと不安は表現のしようがありません。

急に親に反抗し始め、挙句の果てには「やめたい!」と言い出す。戸惑う親。。。。。

ところで反抗期ですが、これは絶対にあったほうが良い、と個人的には思います。
子供が自分の本心に気がつかないまま、目に見えた成功もなく、中途半端な実力しかなくて30歳を過ぎ、音楽の就職場がない時、大富豪なら別ですが、かなりきつい人生になります。

その反抗期で楽器をやめてしまうケースも多くあります。
私は、子供の頃かなり優秀な演奏をしていて、地元でも有名だった子達があっさりとその楽器をやめ、他の分野で成功をしている例を見ていますが、彼らの殆どが幸せな生活を送っています。彼らはとても満足しているのですが、その理由は「自分で決めたから」です。親に言われてやめたわけではないし、教授がやめろ、というケースもこちらではあまりありません。

で、何が言いたいかというと「洗脳」ではなく子供が自分で「本当にやりたい、これで食べていきたい」と本気で決意することが大切だということです。

「洗脳」なんてしてないわ!と怒る親御さんもいらっしゃるでしょう。「洗脳」よりもっとソフトな表現をすると「積極的に影響を与える」ということです。しかしこれはマストなのです。これがなければ、子供は練習なんて本当にしませんから。

「うちの子は練習が何よりも好きなの」とか「楽器を取り上げたら泣くんです」とか言う親御さん、ゴロゴロいます。「将来は絶対にソリストになるって言ってきかないんです〜」とか、まるで困っているかのように愚痴るケースは普通にあります。でもそれは「楽器をやっている自分をお母さんが愛してくれるから」ということに、子供も親も気がつかない。そうすると、どーん、とどでかい反抗期がきて「こんなはずじゃなかった」「うちの子にかぎって」ということになる。

子供が「やめたい」というのならば、無理強いしないこと。そして行きたい道に進ませてあげること。「諦める」事をまず初めに親が行動することも大切です。

しかし、子供時期を過ぎ、自分で「この道で行く」と決めた場合は、黙ってひたすらサポートする事です。そして、子供が(子供と書いていますが、10代後半と思ってください)やると決めたら、全部自分でやるはずです。

留学したいならば、自分から語学を学ぶ姿勢も見せるでしょうし、コンクールも自分で探して「やりたい」というでしょう。「この教授に習いたい」という具体的なことも「全部自分で」やるはずです。全て親や先生が用意して受身な場合は、逆にやめた方が無難です。

いざ、本人が「自分でやるぞ!」と決意した場合は、さらに大変な人生が親にも待っているのですが、その時は諦めて見守ってあげましょう。