先日の続きです。そこでは「一般的なバイオリンの先生の探し方」のテーマで書いたのですが、今回は「やるなら初めから専門的に」という風に、特化して書いてみます。あくまで私個人の体験と考えです。
納得のいく先生を自分の力で探すこと
うちの体験談を例に挙げます。お役に立てると幸いです。
以前書いた、「先生を変えるとき」の体験談と重複してしまいますが、私の体験談から間違えを探してください。私は初めの先生を選ぶときに、何を間違えたのでしょうか?
答えを先に言うと、先生探しを「人に丸投げして頼った事」です。
自分の目と耳と足で確かめず、「ピアノならわかるけど、ヴァイオリンは専門外だからわからないや、私よりわかる人に探して貰おうっ!」と、人様に頼った事です。
これにより、数ヶ月にわたる、週に2回のレッスンの往復時間、毎日2時間の練習時間、そして月に数万円のお金、を捨てる結果となったのです。自分のせいですね。
以下、体験談です。
娘がヴァイオリンを始めたのは5歳の時でした。
幼稚園から帰ってきたら、「ヴィオロン(ヴァイオリンの事)をやりたい」と自分から言いだしたからです。
特に専門にやらせる気はなかったので、「万が一、娘が専門でやりたいと言った時にきちんとその道で行けるように基礎をしっかりと教えられる先生」とある方にお願いして紹介して頂いた先生でした。「趣味で」、とは言うものの、私も音楽畑のヒト+日本人なので毎日、きちんと1日2回に分けて、合計2時間練習しました。週に2回、長い時間をかけてプライベートレッスンにも通いました。
そして8ヶ月くらい経った時、ふと、「おかしいな」と思いました。私は当時ヴァイオリンの事が何もわからなかったのですが、なんだかわからないけど「うちの子は下手だ」と思いました。(この気持ち、ヴァイオリン素人の親御さんならわかってくださると思います。よくわからないけど、パッとしない。なんか下手に見える。これらの理由は先生を変わってから具体的に全てわかるようになりました。)
オーストリア人の子供と違い、1時間のレッスンをきちんとした集中力で難なく受け、毎日、2時間きちんとさらって、週に2回レッスンに行って、下手ってありますか?
そんな時、レッスンの時に先生がオーストリア国内コンクールのチラシを見ながら、「ああ、ここの上位に来る子達はもう、全然世界が違うのよ。うちは無理。」みたいな事を言ったのです。その時私は気がつきました。ああ、きっとこの先生がうちにあっていないんだ、と。
だって、例えば私が自分で作った料理を売るとします。
その時に、「ああ、他の料理は世界が違うのよ、私のはまずいからダメ」って売り方をしますか?
それから私の先生探しが始まりました。
まず目をつけたのが、国内コンクール、プリマ・ラ・ムジカです。
コンクールの詳細はこちら。
ヴァイオリン部門で、年齢別にリストをアップし、入賞者の教師名を調べました。当時のウィーン国立音楽大学で大学の楽器を貸与している学生の教授名も調べました。当時のネットは今ほど充実していなかったので(20年前)かなりの時間を費やして、調べ上げた結果辿り着いたのが、当時、相当数の素晴らしい子供達を出していた教授です。
彼女は当時ウィーン国立音楽大学とウィーン私立音楽大学の両方で予備科(19歳までの子供)を教えていました。歴代数年間の全国大会1位は全て彼女の門下でした。
彼女のクラスコンサートを聞いた私はかなりのショックを受けました。
特に同年代のこの子達の全員の練習時間がうちの子よりも練習量が多い訳がない。「指導法」だと思いました。誰の紹介もありませんが、コンサートの休憩中にオーディションをお願いして、無事、教えていただくことになりました。
先生を変わった結果、6ヶ月でコンクールで1位
彼女と彼女のご主人はウクライナ出身で、指導法は典型的な「ロシアンシューレ」です。
ロシアメソッドについてはピアノでも昨今多く語られていますが、ヴァイオリンにおけるそれはもう、素晴らしいものです。ヴェンゲーロフやレーピンを育てたブロン先生など多くの優秀な指導者がロシアンシューレです。ちなみに、娘の現在の教授はブロン先生です。いつか詳細を書く機会があればと思いますが、そのロシアンシューレで初めから全てやり直しました。
ヴァイオリンも弓も全てサイズダウン。とにかく弓の持ち方はめちゃめちゃだったため、初めの1ヶ月は先生が娘の手を持ちっぱなしでボウイングを開放弦からやり直しです。週に数回のレッスンと、クラスコンサート。毎回のレッスンに進歩がみられました。
そして数ヶ月後、そのプリマ・ラ・ムジカのグループB(当時の9歳以下?部門)で1位を頂きました。
これは10歳の時の写真ですが、全国1位をいただきました。全部、「本当に全部」先生のご指導のおかげです。
私は気が付きました。
親のサポートや子供の努力(毎日の練習)なんて、当たり前のことなのです。アウトプットが目に見えるのは「正しい指導力」があってこそだと。
子供のうちの(特に初期)教師はその子のヴァイオリン運命を激しく変えます。前の先生の名誉のために書くと、その人は悪い先生でもなんでもなく、「どこにでもいる、普通の」先生なのです。彼女に習っていても多分、ギリギリどっかの音楽大学に入れたでしょう。しかし断言して、あのままであったら「今の娘」はどこにもいません。
間違えのない教師を見つけるには、自分の力で納得がいくまで調べることです。
そして、「統計」は嘘をつきません。どれだけの実績をその先生が出しているか、は結構大切なものなのです。
しかし、今の時代は複雑になって、実力がないのに政治力だけで生徒に賞を取らせる、という人もいますが、そういう人もきちんと調べ上げれば絶対に見えてきます。
落とし穴は「性格がいい、親身になってくれる、うちの子を気にかけてくれる」です。趣味ならばそれでも良いですが、専門に行かせようと思ったら、大切なのは「実績」であって、うまくならなきゃなんの意味も無いのです。実力があれば実績は伴ってきます。何もないところから、何かが出てくるのはかなり稀です。私だったら、自分の子供を使って、その冒険はしないでしょう。
先生選びは結婚相手を探すようなものです。
後悔のないように、できるだけ調べ、良い先生にめぐりあえますように!!!