ヴァイオリンという「なんとお値段の高い楽器」の話 

Lisamaria1ヴァイオリン塾

©️Andrej Grilc, Lisa-Maria Violine, 娘のリザ・マリア。楽器は某財団に貸与されていたピエトロ・ガルネリウス

1. オーストリアでの(多分欧州どこでも)分数ヴァイオリンのお話

オーストリアでは普通、分数ヴァイオリンを工房からリースすることができます。
私の知る限り、分数ヴァイオリンを購入する人はほとんどいません。ウィーンには安い値段でリースしてくれる工房が沢山あるからです。ヴァイオリンを習うと、大抵先生がお世話をしてくれます。これはありがたいことです。
弓とケースもついて、モノにもよりますがオールドのちょっと良さそうなモノでも月額数千円くらいからリースできます。

2. サイズアップについて フルサイズへの移行は急がなくて良い

これも私が知る限りですが、多くのレベルの高い先生達はサイズアップを急ぎません。その理由は、

1. 分数ヴァイオリンでしか学べないテクニックがある

某教授に学んだ言葉です。大人がいきなりフルサイズのヴァイオリンではじめて、決してプロ級に上手くならないのもこれが原因の一つです。余裕のある大きさのヴァイオリンと短めの弓でしっかりとボウイングをマスターすることが大切です。

2. 分数ヴァイオリンで出来た事はフルサイズでさらに簡単に出来る

分数ヴァイオリンでスタカート、リコシェ、またはボウチェンジのテクニックなど短い軽い弓では難儀です。
それをマスターしてフルサイズに行けばテクニックは更に進化します。

3. フルサイズを選ぶ時間が長くなる

フルサイズを購入するのは、八百屋さんで大根を買うような、気軽なものではありません。どんなに安いものでも数十万円からしますし、音大に行くのであれば300万円くらいの楽器に50万円の弓、など必要になるでしょう。(日本であれば多分それ以上!)
じっくり時間をかけて選びたいものです。
サイズアップを急がせるのは音大生よりもテクニック的に技術ができている様な子供がオーケストラを伴奏に演奏する様な必要性がある場合です。コンクールを前にして、大きなサイズのヴァイオリンの方が音が大きいからと進める人もいますが、技術のできた子供はたとえ1/2であっても余り上手でない大人のフルサイズ演奏よりよっぽど大きく、美しく鳴らす事が出来ます。
当時娘が教えて頂いていたモーツァルテウム音大のオジム先生もそのお考えだったので、私としては「まだ探さなくていいや」と思ってのんびりしていたのですが、その時は突然やってきました。
「そろそろマリア、フルサイズでいいんじゃないの?」ええええええーーーーー?みたいな感じです。当時の4分の3の楽器がとても良いオールドだったので別れ難いのと、実際お金がなかったので、全く探していなかった私達は困りました!以下はうちの経験話です。

3. 候補のヴァイオリンが現れたら、絶対に専門家(先生)に弾いてもらうこと

当時、ヴェルニコフ先生に候補のフルサイズのヴァイオリンや弓を持っていって見ていただきました。これが本当に助かりました。私はヴァイオリン素人だし、娘だって当時はたかが子供です。何がよくって悪いかなんてわかりません。工房の人の言うことを信じるだけ。
そのたびに、彼が、「この楽器は紛い物」とか「この値段だったら絶対に買わないほうがいい」等、沢山アドバイスしてくださいました。本当に私たちにはどんなことをしてもわからないことばかりです。彼のアドバイスがなかったら、借金をして価値のない楽器を買った可能性があります。恐ろしい。
教訓、絶対に自分達だけで楽器を買ってしまってはいけません。
経験のある、出来れば音大の教授クラスの方に人に助けてもらいましょう!
その夏、彼のイタリアの講習会に参加した時、ファビオ・ピアジェンティーニというヴァイオリン製作者が『出来立てだよ〜』とヴァイオリンをマスタークラスに持ってきたのです。
まさに、数ヶ月前に出来たヴァイオリン でした。先生曰く、『これなら、値段の4倍の音がするから、決めてしまえ!』とおっしゃって即決。
彼の信用でお金も払わず、(イタリアで現金がおろせなかった)ウィーンまで持ち帰り、ウィーンで振り込みました。(ありがとうございます。。。。お世話になりました。)
このヴァイオリンは後にウィーンの中央銀行御用達のヴァイオリン工房(国有のストラド・ガルネリなどを扱っている)で駒を替え、調整され、さらにパワーアップして進化したのですが、そうでなくてもファビオの評判が良く値上がりしたと上の先生から聞きました。
「今なら1000ユーロ、高く売れるぞ。。。。」だそうです。
付け加えると、決して目が飛び出るような値段ではありません。
ファビオは有名な子供のヴァイオリン・コンクールであるいる・ピッコロ・ヴィオリーの・マジコ・コンクール
(Il Piccolo Violino Magico)でも入賞者に楽器を提供しています。
今、娘は今、オーストリア中銀からお借りしているガ楽器を弾いていますが、今でもファビオの楽器をたまに弾きます。ボリュームのある良い音のヴァイオリンです。

努力すると楽器はやってくる?

正直な話、私が日本にいたならば、子供にヴァイオリンを習わせることはなかったと思います。
日本でヴァイオリンをやらせるのは、とにかく途方もなくお金がかかりすぎるからです。きっとオーストリアでも同じなのかなと不安があったのですが、子供の時のロシア人のポラチェック先生が、
「大丈夫だよ、真面目にやっていたら、良い楽器は自分の方からマリアのところにやってくるんだよ」とおっしゃってくださっていました。当時は、「そんなこと、あるかしらね」と思っていたのですが、振り返ってみると、ありがたいことに本当にそうなっています。多くの教授の先生方が助けてくださったおかげですが、そういうこともあります。