このようなご相談をお受けしたので、経験談を書いてみたいと思います。
で、私はこれから「私の体験」を書いていくのですが、ご存知の通り、私の住んでいるのはウィーンであり外国、日本ではないし、生徒も99%が日本人ではありません。よって、お役に立たないかもしれませんということは、ご承知ください(スミマセン)「へー、そうなんだ」と読み飛ばしていただいて全然OKです。
さて、「いつもは楽しくレッスンしてたのに、急にやる気がなくなっちゃった」とか、「急にレッスン中に泣き出しちゃった」という例です。
それは数年前、幼稚園年長組の男の子にある日突然起きました。
レッスンが始まる前に付き添いのママに、例によってゴチョゴチョ耳打ち(いつもやっていた)。ママは、目をぐるり回して上を見上げ、大きなため息を一発。「は〜っ!!!」そして私に、
「彼は今日、ピアノが好きじゃないんですって」
おいおい、と思ったのですが、まあそれでもごまかしごまかし、45分のレッスンをクリアしました。なんか嫌な予感がする私。
その後2週間の休暇に入り、休暇後にうちにきました。この日同伴したのはお父さん。
以前のイヤな予感は、的中しました。
「はい、じゃ、これ弾いてみようか」と即すると、手を膝の上に乗せて下を向く。そして首を振る。
以前はニコニコして、楽しくやっていたのに、もう別人です。相手は子供なので、「今日はちょっと疲れちゃったのかな?」とかなんとか言って、それでも45分を一緒に過ごしたのですが、これもう限界です。
ママに電話をして様子を聞いてみました。
案の定、お友達と喧嘩したり、パパがお迎えに来たり(別居している)子供なりの心の悩み、というかモヤモヤが絶大なようでした。(家庭内のゴチャゴチャ)
日常のイヤな事から逃避する為にピアノが役に立てば良いのですが、親御さんがレッスン中に側にいたり、そしてまた年齢が若いこともあって、それも難しい。私は親御さんに、しばらくレッスンをお休みすることを提案しました。私の努力以外のところに原因がある場合、ちょっと難しい。私の仕事はピアノ教師であって、それ以外のケアはご家庭でやってほしいし、その時間は出来れば他の子にあげたい、というのが本音です。
お母さんが、ピアノのレッスンのお休みを提案すると、今度は逆ギレして、「絶対にやめたくない」と主張してギャン泣き。すっごく繊細な少年ですが、その倍、頑固なのです。そこで私が提案したことは、
「ピアノを弾いたり、協力して習う姿勢を見せないのであれば、マダム(私のこと)の所へは行ってはいけません。彼女は幼稚園の先生やベビーシッターではないのです。」ということをはっきりと言い聞かせ、それでも来たいというのならどうぞ。しかし、以前のようなことになるのなら、精神的に落ち着くまでお休みにしてください、です。
。。。。。。。。。。。。。。とこれを書いたのは今年の3月だったのですね。
その後、その子はどうなったでしょうか?
「やる気がないのならば、来ちゃだめ!」と私に出禁を食らってしまって悔しいお母さんは、なんと息子の代わりに私にピアノを習いに来ていたのですが、(そんなにピアノが好きならば貴女が習いなさい、と言われ、売り言葉に買い言葉、『もちろん習うわ!!!』と言って数ヶ月私に習っていた)
夏が明け、9月の始業式にまたお母さんが「聞いてちょうだい!うちの息子はまたやる気を出したのよ!9月からピアノ再開よ!」と鼻息荒く私に連絡してきたのですが、まあまあその少年、数ヶ月経った後はもう、あれはなんだったの、と言うようにまたピアノに興味を持ち出し、今は順調に私のところにレッスンに通っています。やっぱり身体や頭が成長する、という段階も大切なのかもしれません。やれやれ、です。お母さんの粘り勝ちです。当のお母さんといえば、「ピアノはやっぱり私には難しいわ〜」とかなんとか言ってギブアップ。息子が再開したことが嬉しくてたまらない、という感じでハッピーエンドでした!(今のところはね)