娘は頼まれ、時間の許す時だけヴァイオリンを教えています。
きのう、近所に住む6歳の女の子のレッスンから、プンプンして帰ってきました。
彼女いわく、
「まだだよ。ちょっと聞いてよ!」
その子は今、1/8の分数ヴァイオリンを使っています。私も当時チェックしましたが、彼女の身長、腕の長さから言ってこのサイズでバッチリです。弓も同様。
しかし、お母さんが、
「お誕生日にもっと大きいヴァイオリンをプレゼントしたいの!」と言って聞かないらしい。どうやら、同じクラスの子が1/8よりおおきいヴァイオリンで弾いているのをみて、「負けてる!」と感じたようすだそうです。
私が、「じゃあ、フルサイズのストラドでもガルネリでも買わせたら?投資になるよ〜」と言ったら本気で娘にキレられたので、真面目に聞くことにしました。
お嬢ちゃん本人は、「このヴァイオリンで満足」と言っているのですが、娘がどんなに説明してもお母さんが聞かない。おおきいヴァイオリンを弾かせたい気持ちで大興奮だそうです。
もちろんお母さんはヴァイオリンどころか音楽のど素人で何もわからない人です。
ヴァイオリンというものは、特にフォームを組み立てる子供時代にはできるだけ小さいものでテクニックを固める、というのがロシアン・シュレー(多分他でも)の鉄則です。
サイズが大きすぎると手や腕を痛めるし、何より、ボウイングを学ぶことができません。
ボウイングは、弓を上下するだけのものではないのです。この右のテクニックは馬鹿でかい弓では習得することはできません。
娘の場合、当時のオジム先生が最後の最後までフルサイズを引き止めました。これが正しい。プロの指導です。
ワケもわからず、コンクールだから無理やりサイズアップ(音が大きいという単純な理由)という先生もいるようですが、子供をめちゃくめちゃ上手に育てるプロ教師たちは、そんなことは絶対にしません。
今回の例も、せっかくフォームも決まってきて良い感じなのに親が全てをぶち壊す良い例です。特に、教師がうちの娘のように学生で若いと、親は時に抑圧的な態度にでます。
本当にもう、これはアルアルすぎる話です。
そして、困ったことのひとつに、欧州のちょっと裕福な親は、クリスマスやお誕生日に、なんの思慮もなく「高価な楽器」を子供にプレゼントしようとする、現象があります。
リコーダーやウクレレくらいだったら罪は軽いですが、これが電子ピアノやヴァイオリンになるとちょっと笑えません。
私に言わせれば、ここ、ウィーンでは可能なのだから(日本は無理)弦楽器の分数時代はリースで済ませる、わざわざ買わないで〜〜〜!!!、なんですが、ここ数年間で
「子供のお誕生日にヴァイオリン(チェロ)をプレゼントしたいんだけれど、どれを買ったらいいか、アドバイスしてくれる?」というご相談を何件受けたことか。。。。。。
さて、どうするか。
結論は、いくら説明しいても親がこれならばもう、仕方がありません。
ワンサイズアップの1/4でも買わせて、どうせ大きすぎるので(絶対ダメなやつ)今の楽器で練習させる、半年もして身体が成長したらアップする、という無駄な回り道をやるしかないでしょう。
教師をするということはこういう経験を重ねていくのが当たり前なので仕方ありません。。。。。。
娘にも良い勉強だと思うことにしましょう。