さて、私はオーストリアに来て人生の半分を軽く超えています。先日は「ウィーン人にとって不名誉な統計」をご紹介したので、今日はウィーンに移住して良かったことを書いてみたいと思います。
オーストリアに移住して良かった事
元々住みたかった国はドイツ、しかし当時ドイツの滞在許可は厳しくて大学院で2年間、とされていました。
私は(密かに)永住するのが目的だったので、とりあえず当時は滞在許可が今より甘かった(30年以上前)ウィーンに定着、それから引き寄せられるようにウィーン大学入学、通学中にフランス語の講義で知り合った人の紹介で某社へ入社。永久滞在・労働許可書も、サクサクと取得し、あっという間に時間が経って、今となりました。
「子供を育てるのに最強の環境」
これを第一にあげたいと思います。
日本でも最高の教育を受けることは可能です。しかしそれは正直、「経済的にかなり余裕がある」ということが条件になると思います。オーストリアでは幼稚園から小学校・中学校、大学に行きたければ大学の医学部だろうが法学部だろうが、「ほぼ無料」で教育を受けることができます。貧乏人が医者や弁護士になれる可能性があるって、すごくないですか?しかしそれぞれに入学試験があり、現在のところ合格は難関となっています。でもお勉強ができれば、貧乏であっても大丈夫、というのは最強です(実際は、親と同じような職業につく人が多いのが現状です。)
私は子供達が人種差別を受けるのが怖かったので、(当時は極右のハイダー率いる自由党が力を伸ばしている時期だった)公立には入れず、フレンチスクールの「リセ・フランセ・ヴィエンナ」に幼稚園から入れました。ここなら外人だらけなので差別の心配はなし。
インターナショナル・スクールは月額10万円を超えると聞いたので、授業料を会社が出してくれるような環境になかった私には残念ながら問題外でした。リセの授業料は私にとってギリギリ払える範囲でした。
VIS、アメリカンスクール、リセ、どれも私のピアノの生徒が通っていますが、かなり良い学校です。お勧めできます。施設も良く(例外はあるでしょうが)先生のレベルも高いと思います。特にこのコロナ禍、オンライン授業の充実にご両親たちは満足していたようです。
リセ・フランセ・ドゥ・ヴィエンヌのウェブサイトはこちら
ヴィエンナ・インターナショナル・スクールのウェブサイトはこちら
アメリカン・スクールのウェブサイトはこちら
長女はヴァイオリンがあったのでリセには3歳から8歳まで通いました。レッスンやコンクールで授業を抜けてばかり。両立は無理でした。6年間フランス語だけの環境で暮らしていたので、今でも少しは覚えているようです。長男はバカロレアを同校で取得し、ウィーン大学の法学部に進みました。
リセの幼稚部はかなりおすすめで、きちんとプログラムを組んで「お勉強」を教えてくれました。息子がリセに行く前に、ウィーンの私立幼稚園チェーン店のような所(笑)に通っていたのですが、こちらはただの「放し飼い」状態で子供はかなり退屈していたのを覚えています。今は改善されているのでしょうか?
それとリセは食事が最高。子供たちは慣れてしまって不満ばかりいいますが、多分、オーストリアの学校一番の内容だと思います。
リセについての体験談を書くと長くなるので省略しますが、授業はフランス語オンリー、しかしドイツ語の授業も充実していて、当時娘が行っていた公立の学校よりはるかに良い内容でした。私たちは家でフランス語を話しませんが、幼稚園から通ったので自然と覚えてくれました。(といっても、私もかなり勉強したし、フランス人の友人もとても助けてくれました。親は学校の言葉をある程度勉強しないときついです。)
余談ですが、「多国語が話せることについて」
日本だと、バイリンガルやマルチリンガルはかなり素晴らしいものとして評価されますが、大切なのは、スペシャルな分野を持つことであって、会話できる程度の語学力自体はそんなに特別に評価されません。みんな複数語を話すので、普通に扱われます。(文学科とか専門になるとその重みは別問題)
話を公立に戻します。
娘が少しの間通った公立の小学校では、担任の先生に見事に外れました。やる気なし、威張ってばっかり、私にとっては最悪でした。しかし私の友人の多くは、お子さん達を公立にいれてかなり満足しています。うちのチョイスとタイミングが悪かったのだと思います。良い担任の先生に当たると幸運ですし、その逆だとかなり大変なことになります。うちは後者。しかし無料というのは大きなことです。私立だと最低でも月額数万円からかかります。そしてそれがいつも当たるとも限りません。
ご参考:
音楽大学の授業料が日本に比べてかなり安いことは以前こちらでお知らせしました。
「イジメがない」
日本のように一日中学校に縛られているわけではなく(クラブ活動などがない)学校だけが人生でイジメがあって死にたくなる、のような環境にはあまりなりません。PTAもありますが、これは率先してやりたい親御さんがどのクラスにも居るので縛られることもありません。私はリセのPTAで友人が沢山できたので喜んで通っていました。
「街中が芸術に溢れている」
ウィーンは文化・芸術に興味のない人にとっては退屈な街です。ロンドンやパリ、N・Yみたいにショッピング三昧で最新の流行を追うことはここでは不可能です。しかし、美術・音楽・歴史に興味があったら死ぬまで退屈することはありません。世界各国から一流の演奏家が訪れ、オペラ座はいつも違う出し物で満足させてくれます。美術史美術館やベルヴェデーレなどでは、常時レベルの高い講義が行われ、誰でも芸術史や絵画について学ぶことができます。老後を楽しむのには最高の街です。死ぬまでに学びきれないことばかりです。
「治安が良い」
まだ記憶の新しいところですが、2年前の11月にはテロが起きました。しかし世界の大都会に比べるとかなり安全です。ウィーンでももちろん油断してはいけませんが、かなり安全だと言えるでしょう。特に子育てをするには安心できる国です。
あと私にとって得点の高いポイントは、
「ゴキブリがいない!」ことです。汚いレストラン等ではミニサイズのものがいることがありますが、これは滅多にないです。普通の家に出ることはまあ、ないと思います。
そして、これも数年に一度期待を裏切られるのですが、「地震がない」ことも大きいです。私は東京で子供の頃から、「いつ関東大震災が来ても不思議ではない」と怯えながら生活していたので(祖母が体験者!)本当に怖かったです。「寝る前に着るものをきちんと枕元に畳んでいつでも非難できるようにする癖」はいまだに抜けず、オーストリア人からは驚かれます。
長くなったので、オーストリアに移住してイマイチの点はまた後日に書きます。