最近はじめた大人の趣味の生徒さん。まったくの趣味なのですが、定年後に自分の時間がたくさんできて、昔からコンスタントに習いたかったピアノを、と熱望し私のところにやって来ました。ピアノは子供の時、数ヶ月だけ習ったことがあるそうですが、妹がとても上手になってしまって、嫌になってやめてしまったそうです。(これもアルアル!)
大人の生徒さんのアルアルなのですが、この女性も例外なく、本当に真面目です。
日々の練習はもちろんのこと、レッスン中でも的確な時に的確な質問をするし、大切なことは横にご自分で用意したノートにきちんと書き込みます。
レッスン後はご自分で「今日習ったこと」「次回までに気をつけて練習する内容」そして最後は私の指導で「ここが勉強になったわ!」ということまで述べてくださいます。
ああ、この方はリタイア前のお仕事も、かなりきちんと仕上げられた方なんだろうなあというのが、よくわかります。ただただ、尊敬。
さて、ギロックやシューマンの小曲をやって、今はショパンのプレリュードから、簡単なものを1曲始めました。
「この人は本当にほぼ初心者なのだろうか」と思えるほど、読譜はすぐに覚えてしまったし、とにかく真面目で練習時間もたっぷりあるので、今まで順調に進んできました。しかしね、やっぱりピアノってそんなに簡単じゃあないのです。和音が続いて飛ぶ所も出てくると、そう簡単にできるものではありません。だいたい、どんなに真面目で練習する、と言っても「ショパンのプレリュード」の1曲なので、初心者に簡単なわけがありません。
そこで今日のお題を思いついたのですが、「出来ないところは分解して取り出してやっつけよう!」です。
まずは出来ないところを見つける、そしてどうして出来ないかを自分で受け止める、です。
彼女の場合は、「左手の次に飛ぶ和音を見つけられない」でしたので、まず2つの和音を観察することからです。楽譜上で確認。「このメロディーはここに繋がってるね」みたいな感じです。
そこからは2つの和音の移動を覚えることに集中します。
「E・G・Cis」から「Cis・E・Ais」に飛ぶところがスラスラ出来ないのが弾けない所だったのですが、先ずは視覚から確認します。
「はじめの和音はCisが黒鍵じゃない?指は5・3・1で押さえてるね」
「ふむふむ、そうね」
「下から白鍵・白鍵・黒鍵よね」
「うんうん、そうね」
「覚えました?」
「はい、大丈夫!」
「じゃあ、次の和音をみてみると、今度はさっき1の指がおさえてたCisが一番低音に来てるのわかります?」
「あら、そうね」
「Eの音は同じく真ん中、で1の指はAisで黒鍵。どんな絵面?」
「下から黒・白・黒、だわねえ。指は5・3・1で同じね」
ここまで視覚と手の感覚で印象つけたら、あとは移動練習を数回します。鍵盤の上に指を用意して、確認してから、打鍵する、なんてことを数分一緒にやります。
「出来たわ、覚えた!!!すごいわねえ、こうするとガチャガチャ繰り返すよりよっぽど記憶に残るわ」
「きっと帰宅なさったら記憶が薄くなってると思うから、今晩もう一回確認して、明日には定着していると思います〜。」
受験勉強でも「エビングハウスの忘却曲線」が活用されますが、趣味のピアノも同じようなものです。「本気組」なら忘却曲線なんかが追い付かないレベルの練習量をこなすので、あまりピンとこないのですが、趣味の人に、こういうやり方は効率的です。
さて、まとめですが、当たり前でそうあるべきなのに、忍耐がなくて絶対に出来ない、そして多くの人がやらない練習方法のごくごく一部のご紹介でした。
秋になると(こちらの新学期は秋)ピアノを習いたい、という生徒さんがうちに来て、弾いてもらうのですが、かなりのパーセンテージで、出来ない箇所は絶対に弾けなくて何回もつっかえる。おまけに、はじめからでないと弾けない(途中から始められない)ので何回もはじめっから弾く、という同じことを繰り返してしまいます。
こうならない為にも、はじめから「出来ないところは取り出して練習する」習慣をつけると時間も無駄にならないし、ダラダラいっつもはじめから弾き直してまた間違え、何回繰り返しても上手にならない。それでピアノが嫌になる、ということもなくなるので、試してみてください。