ピアノやヴァイオリン、その楽器を専門に学ばなかった親御さんは、勝手に練習法などを編み出して子供にやらせては絶対にいけない!というお話

Doravengerov ピアノとヴァイオリン

*ヴェンゲーロフの話が以下に出たので、数年前の彼のコンサートの時の写真を想い出に貼ります。娘とドーラとマキシムさん。右は素晴らしいピアニストのジュリアーノ、ウィーン楽友協会の楽屋にて、コンサートの後*

そのものズバリです。ヴァイオリンやピアノを弾けない、もしくはアマチュアレベルの親御さん、もっと言って、音楽大学に入学し、卒業しなかった親御さん、余計なことをしてはいけません。子供可愛さの親心でやってしまうのはわかります。しかし、あなたのやっている、変な自己流の指導は、ほぼ100%は役に立たないところか、お子さんの成長を、バッチリ邪魔しています。保証します。やめましょう。

お子さんが、絶対に音楽大学に進まない、趣味で共に楽しむ、と断言できるのであればどうぞ、引き続き楽しんでください。しかし、少しでもお子さんをその道に進ませようと、思っているのであれば、すぐに変な子供への指導は止めるべきです。

なーんで私がそんなことを書くかというと、それは私がそれをやってしまっていたからです。

娘がまだ6歳くらいの時、素晴らしいロシア人の教授と共に歩み始めると、親も欲が出てきます。毎回のレッスンが楽しい。子供がどんどん上手くなる。「もっと上手に」「もっと早く進めるように」「もっと成果が出るように」。。。。親って馬鹿なんです。もう、周りが見えなくなります。毎日ヴァイオリンのことばかり考えます。それがまた、楽しい。弾いてるのは子供なんだけどね。親は皆、同じです。

ある日私は、同門の上手な男の子の左手を見て、うちの子と全然違う、と思いました。「全然違う」=「うちの子の左手は良くない」そう思ったわけです。で、その子の真似をすべく、研究。他の演奏家の録画も隈なくチェック。その結果、ネックを抑える親指の位置を、「ここにしてみたら?」と下の方で支えさせたのです。で、次のレッスンで私が教授に、「この方がいいと思って、どう思います?」と言ったら、秒で「馬鹿者〜!」と教授から雷が落ちました。以下、教授曰く。

「あのね、人間はひとりひとり手の形も身体も違うのよ。あの子は上手く見えるけれど、典型的なアジア人の弾き方なのよ。全然私の、典型的なロシアンではないの。マキシム(ヴェンゲーロフ)とかの左手、見てみなさいよ、あんな左手で弾かないわよ!」「おおおお、確かに」、と思いました。でも当時の日本人の演奏家はそんな左手で弾いている人が、かなり多かった気がします。だから真似させちゃった。

「あんたが、私が教えたことをマーシャと家で一緒に、徹底して教え込むのは大賛成よ。でも、自分で変な考えを編み出さないでちょうだい!絶対だめ!!!!下手になるわよ!」

ヴァイオリンど素人の私がしでかした失態、大反省でございました。

確かに、私がピアノを教えていても、子供の頃にちょっとくらいピアノを習った程度の親御さんが、子供に変なことを教えて(例えば、フレーズが終わると、「ド」の所に1の指が戻るという、変な技)どびっくりすることがあったのですが、なんと私が同じことをやっていました。

冷静に見ると、ヴァイオリンの弾けない親が、すごい変なことを指導しているのをたくさん目にします。

例えば、ある親御さんは、子供に演奏中ににっこりと笑顔を保つことを強要していたのですが、想像してください。悲しいフレーズのところでも、演奏している子供の顔がいつも微笑んでいるという状態を。せっかくお顔が可愛いのに、始終口があいて、人工的に微笑みながら演奏している。すっごく変でありえないのですが、親は良いと思っている。

「うちの子は、心から楽しんで演奏するの!それほどヴァイオリンを愛しているのよ!」を間違ってアピールしている例です。結果は真逆。かなり変。

もしくは、素人の親が、「うちの子、もう少し動いた方がかっこいいわ!」と思いこみ、子供に自己流で変な動きを教え込み、その結果、舞台の子供のヴァイオリン演奏が、本当にお腹をぐるぐる回す腹踊りのようになっている。かなり変なのに親も誰も気がつかない。だって、素人なんだから。

しかしその時に、「それはおかしい!」と怒ってくれる指導者に師事している場合は、私のように怒られるのでラッキーです。しかし違うと。。。。。想像できますよね。それが子供の身に着いてしまい、何年もそれをやり続け、数年後に誰かに指摘されたときは、年を取っちゃってるので、もう直せない、となっている。恐ろしいことです。

世の中の一生懸命な親御さんたち、私みたいな馬鹿はあまりいらっしゃらないと思いますが、どうぞ、気をつけてください。その道のプロでない限り、先生に指導されたことだけ、やりましょう。私の失敗経験からの警告です。