「はじめっから本物のピアノはいらないですよね、電子で良いですよね」と言っていたお母さんが、ピアノを用意してくれるおはなし

ピアノ塾

さて、たくさん読んで頂いたこのお話の続きです。
私のところにピアノを習いたいと言ってきた小学生のお母さん、電話では「はじめっから子供に本物のピアノは要らないですよね!数ヶ月は電子ピアノで大丈夫ですよね!子供の欲しがるものをすぐに買うのはダメですよねっ!」と言っていたお母さんが、子供を連れてやってきました。

その子は歳のわりには身体が大きく、ハキハキとしてすごく可愛い、私の大好きな感じの子供です。かなりアクティヴ(よく言えば)な子で、活発な感じです。

ピアノを数回習ったことがあるようですが、何も身についていないようでした。「ド」の場所はわかるけれど、それだけ。教本も「ド」を左右1の指で弾かせるようなもので、先日書いた5指固定を身につけるようなもの。大切な基本はなにひとつ知らない状態ですが、それは全然OKです。

まず、どの子にでもやらせるように、右の2・3の指で黒鍵のCis Disを同時に弾かせるやつをやってみます。これ、ピアノを持っていない子供はすぐにできるのです。しかし、下手に安物の電子ピアノがうちにあると、不思議と、こんなことが何故か出来ないのです。なぜでしょう?安い電子ピアノはキーボードが下に落ちるまでの時間が短いため、ちょっと押したら、ビーっと音が出てしまうからです。アコースティックのピアノではそんなふうには音は出ません。だからその子は本当に良い手と指を持っているのに、そんな簡単なことに戸惑ってしまうわけなのです。

それでも数回繰り返しやってみると、できるようになりました。

かなりわんぱくな子で、きっと前の先生が若い経験のない人だったら、手こずっただろうなあと思いました。すぐに変なおふざけをしようとしたり、おちゃらけてみたりする。4回くらいやったレッスンで、何一つ覚えていないというのがわかる気がします。
しかし、以前書いたように、私にとってはあまり問題でないので、お互い、楽しくレッスンを終えました。

最後に、お母さんに、なぜ、将来のある子供が、初めからアコースティックのピアノで練習することが大切かということについて話しました。

「子供に欲しいものをすぐに与えるのはよくない」という考えについては、「ろくにピアノを習っていない6歳が、はじめっからピアノを切望するなんてありえない。」と私の考えを言いました。子供にとってはゲームや他の物の方が好きに決まっています。ピアノを用意する事を渋るのは、「親の都合」です。

ピアノを用意するのは大変です。まずは経済的なこと(このご家庭は全く問題なし)、そして置き場所を考えたり、店に行ったり、契約したり、配達時間、色々時間をとってやらなければなりません。挙げ句の果てに、子供が真剣にやるかどうかわからない、と思ったら、うちにある電子で良いや、と思う気持ちもわからないでもありません。

でも、そこで親がきちんと考えることができるかどうか、これで子供のピアノ人生が決まるです。私の生徒で、はじめからきちんとピアノを用意してくれた家庭の子供たちは、例外なく上手になっています。これはもう、本当に本当です。

生きる音の美しさを学ぶことの大切さ、喜び、これがたとえ趣味であったとしても一生続くかもしれないのです。経済的にOKで、時間が取れるのならば、やってあげて欲しいと本当に思います。私、ちゃんと教えてあげるんだから。

お母さん、帰るときには「すぐに用意します」とおっしゃっていました。
やれやれ。これからは新しい僕ちゃんとのお付き合いが始まります。楽しみです。