ピアノのレッスの人間関係、ほとんどのトラブルは、口に出して言わないことから始まると思うおはなし

ピアノとヴァイオリン

本当にねえ、これに尽きると思うのです。
「そんなこと、常識だと思うから言わなかった。」「知らない方が悪い」「紹介で私のところに来たのだから、知っていて当たり前」
これらで若い頃の私は、何度失敗したことでしょう。

なのでどんなに、「常識だよね」とか「人の紹介で来たのだから、わかっているでしょう」と思っても、私は以下の事を絶対に実行するようにしています。

まず、生徒さんやその親御さんの紹介で、うちにピアノを習いたいな、と思ってくださる人から連絡が来たときには最低限、大切なポイントを確認します。まず何より大切なのは、料金に関してです。

お金に関して、日本人は上品で奥ゆかしいので、できれば話したくない、という人が多いかもしれません。しかしこれは絶対にアウトだなのです。家にまで来ちゃって、お試しレッスンをして、もう生徒とも知り合った状態なのに、レッスン料金を聞いて「高いから難しいです」と言われたり、挙句の果てには値切られたりということが起こりかねません。これは私は1回だけありました。その後は反省し、きちんと事前に説明するようにしています。

私はウィーンにいるのでこの例ではないのですが、日本ではレッスン料以外にも「発表会」などにかかる料金、弦楽器などは伴奏者のためにも料金が発生することを告げれば、より親切かもしれません。私のように音大卒業の人間には当たり前の超常識でも、一般の人には全く意味不明、ということも結構あるのものです。

そしてこれは教師側・生徒側の両方に言えることなのですが、電話でも、会ってみても、「無理かも」と思ったら、子弟関係にならない、すなわち「断る」勇気を持つことです。その気持ちが「気のせい」という場合もあるかもしれませんが、かなりの確率で当たる予感がします。

私の場合はほとんどが紹介でいらっしゃるので、同じような価値観を持った人達が自然と集まり、とても幸せなのですが、ひょんなことでとんでもない人が来たことも過去にはありました。かなり昔の話です。多分、どこかのピアノ商店(という?)から私を紹介されてきた、もうリタイアした女性でした。その女性は、もちろん趣味なのですが、自分の演奏にかなり自信を持っていて、めちゃめちゃにショパンの何かの曲を弾き、あまりにもめちゃめちゃなので、音間違いを指摘したところ(そんなにしてないけど)逆ギレ。

「私はもう何十年もピアノを弾いていて、みなさんも上手だって言ってくださるの。そんな子供みたいに細かく指導されたら嫌です!!!」

その人の外見に引っかかるところがあったのもあり、私は「絶対無理!」と思ったのですが、なんかこの人怖い。(外国にいるとやっぱりこういう感覚になるのかも)家を知られているし、子供もいる(まだ小さかったからね)何かされたら笑えないし、どうしよう!と、とっさに浮かんだのが以下のセリフです。

「わかったわ、私たちの前にはだかる『問題』が。私が思うに、貴女はもう素晴らしいピアニストなのよ。よって指導は要りません。いつか機会があったら、一緒にデュオなどして楽しめるといいけれど、私は今、自分の演奏のために全く時間がないの。いつか私に時間ができたら一緒に演奏しましょうね。それまでのお別れということで、さようなら!!!!」

彼女の顔はパッと明るくなり、嬉しそうに出ていってくれたのですが、もちろんお互い、2度と連絡を取り合いませんでした。数少ない貴重体験のひとつです。

もし私が、お金欲しさに彼女を生徒にして続けていたらどうなっていたでしょう?考えただけでも発狂します。当時の私の判断には救われる気がします。咄嗟の誤った判断で何年も悩む、というケースもあると思います。無理かも、と思ったら思い切って発言する勇気を持ちましょう!それは結局、お互いのためなのです。