ピアノレッスン トラウマ 『親指まむし指宣告』幼い頃の地獄の思い出

ピアノとヴァイオリン

先日の「手の中に卵メソッド」はTwitterでもたくさんの反響をいただきました。1番の弊害は、それにこだわることによって、力が入り、手、腕に支障をきたす、ということでしたが、今日のテーマは「まむし指」についてです。

この、まむし指についてはどんな物か、ググっていただければ出てきますので、そちらを見てください。

これも私の幼い頃のピアノレッスンでのトラウマです。

小学生中盤くらいでしょうか?母が新しい先生を見つけてきて、その先生のところに行った時のことです。

「重大な問題があります。お子さんの右手の親指は『まむし』ですね。」

私も母も目が点。「はて、なんですかそれ?」

その先生は深刻な顔しておっしゃいました。

「これはピアノ弾くのに最も適さない、最悪の手です。このような右手では音楽大学に行くなんてとんでもないことです。今日から命がけで直してください。さもなければ音大進学は諦めてください。」

私は子供心に、大きなショックを受けました。なんて言ったらいいんでしょう、末期癌を宣告されたような気分です。「治るかどうかわからない、もし治らなかったら、ピアノというもの自体をあきらめなければいけません」と宣言されたようなものです。

ピアノど素人の母と、子供の私も、いったい何が何だか分からず、しかしながら、とても悪いことが私の手に起きていることだけがわかりました。私は涙を浮かべ、母は「どうしたらよろしいんでしょ先生、どうぞ助けてください!」ともう、昭和の映画みたいな茶番劇です。

すると先生、ひとこと。
「糸巻きですね」
「はあ?」ともう、疑問符が頭を駆けめぐる私達。

「まむし指の人は、一日中、『糸巻き』をしっかり右手に持って指の関節を出して出すように努力するのです」

「そうなんだ!糸巻きね!!!」ともう、そこは真面目な日本人です。本当に糸巻きを持ち続け、常時、親指の関節が出るように力を込め、なんとか関節が意識せずにも出るようになり、まむし指地獄からは脱出したのです。それとともに、このトラウマについては忘れかけていました。しかし、しかし、ある日これが重大な間違いであったことに気がついたのです。

数年前、ウィーンでピアノを教える私のもとに、小学校高学年の男の子がやってきました。ピアノ初心者でしたが、これぞ懐かしき『親指のまむし指』の持ち主でした。

さすがに、趣味の男の子に「毎日糸巻きを持って、死ぬほど努力しろ」なんてアホなことを言うわけもなく、ただただ、「力を抜いてただ、こう、弾いてみて」と教えると、フツーーーーに関節が出て、ピアノを弾くと共に治りました。あっという間でした。

正直、「あの時の先生、なんなのよ!」です。私はタイムマシンに乗って当時の自分を抱きしめたいです。そしてあの先生をぶん◯りたい。

今、感じることですが、まむし矯正するにあたって、非常に親指に力を入れていました。力を込めて糸巻きを握りしめ、練習中も力を入れて無理やり親指の骨を外側に出していました。これが無理やり治す弊害です。今でもまむし指でなかった左手の方が開くし、脱力の感覚を掴むのは非常に簡単でした。

書き加えますが、私は自分が親指のマムシ指の持ち主だったというだけであって、「まむし指のプロ」ではありません。

よって、どうしたら治るとか、何が悪いだの、そういうことについて研究する気もする機会も気持ちありません。よっていろいろなご意見もあると思いますが、これは私の一例だと思って読んでくだされば大丈夫です。

ただ、卵にしてもマムシにしても、つくづく思う事は、何が大事って指導法だなと思うのです。

私が受けたような、ひどいこと言う先生は、今の日本にはいないことを願いますが、万が一、そのような酷いこと言われた場合は、この記事を思い出してみてください。

無駄な力を入れ続け、なにかを矯正することはやめましょう。「卵」も「マムシ」もたいしたことありません。もし弊害があるのであれば、ゆっくり直せば良いのです。まずは、よいアドバイザーや教師を探してください。