音楽大学卒業したらみんなどうするの?日本の場合とオーストリアの違いと現実

ピアノとヴァイオリン

オーストリアの音楽大学は乱暴に分けると、器楽演奏に重点を置くコンチェルト科(器楽科)と教育科に分かれます。他にもたくさんあるのですが、ここでは取り上げません。

ウィーン国立音楽大学のウェブサイトには、下で挙げるような日本の音大のウェブサイトのように学校名や企業名を包括した「当大学の卒業後の進路!!!」みたいなページはないのですが、みんな、どうしているのでしょうか?ざ〜っくり述べてみます。

ソリスト志望、という人たちはもちろん上位数名でいますが、こればっかりは、実力以外に必要な多くのものが関係してきます。それは各自頑張っていただくとして、かんたんに書くと、弦楽器・管楽器の人たちはオーケストラの入団試験を受けてオケ入団を希望する、というのがあります。ピアノの人は室内楽を学んで伴奏の仕事の道を目指したりします。

教育科を卒業すると、街の公立の音楽学校で教えることができます。コンチェルト科の学生の方が基本的に演奏力は高いのですが(誤解を受けないように書き加えますが、専門性が各分野違います)お給料を見ると教育科出身の人の方が良い場合もあって、不満が出たりする、なんて話もたまに聞きます。しかしこれはオーストリア国やウィーン市が、単に子供にプロフェッショナルな楽器教育を望んでいるのではなく、違う表現で言えば、多くの層に音楽を楽しんで学ばせたいという意向があると思います。

さて、以下、興味があったので音楽大学の卒業後の進路をまとめてみました。ざっとみて、皆さん、なにをお感じになられますか?

東京藝術大学

桐朋音楽大学

国立音楽大学

武蔵野音楽大学

東京音楽大学

他にも素晴らしい音楽大学はたくさんありますが、長くなるのでこれだけにします。
これを見ると、音楽大学を卒業しているにもかかわらず、一流企業に就職している人がいる、という事実に少し驚きます。例えば音楽大学のピアノ科を卒業しているのに、一般企業の事務や専門職につく、などです。これはこちら、オーストリアではかなり稀な出来事です。

例えば日本の有名金融機関で、語学大学卒業の人がかなりいいポジションで働き、高給を得たりしてします。これは日本の企業が、新入社員を初めから教育し、育てていくというシステムがあるからだと思います。誰でも違う方向にいちから学ぶことができるチャンスがある、これは素晴らしいことだと思います。

しかし、オーストリアで(多分欧州で)音楽大学で例えばピアノで良い成績をおさめた学生が、一流企業に就職して、キャリアを積んで年収数千万の収入を得る、なんてあまり聞いたことがありません。それはどの企業でも求められるのは即戦力で、それにはウィーン大学の経済学部や法学部などを卒業した人を採用した方が簡単だからです。

ということは、オーストリアで音楽大学に進学する、ということは基本的、就職選択の幅が狭くなる、ということです。この道しかない、くらいの気持ちで望まないと将来は甘くありません。日本と違い「まあ、音楽大学でピアノを勉強なさって、素敵!お嬢様!」なんてだれも思ってくれません。「仕事、どうするの?」みたいに心配されることの方が多いです。

こう書くと、楽器で成功しなかったら(どこのオケにも入れない、教師の席もないetcetc)お先真っ暗、もう、本当にどうしようと不安になってしまうかもしれませんが、そうでもありません。まったく違う道に進む人は実際にいます。

ある人は楽器のコネばかりが優先される世界に嫌気がさして、さっさと卒業し、そのあと医学部に入り直してきちんと卒業して、ヴァイオリンを弾けるお医者さまになって活躍しているし、ある人は同級生と事業を立ち上げ、飲食というまったく違う分野で成功しています。
別に音大を卒業したからと言って、オーストリアであっても他の道に行けないことはないのです。

要は、自分で見切りをつけ、新しい道を見つけたらそちらに集中して頑張る、そのパワーが大切なのかもしれません。

もちろんせっかく選んだ道なので、自分の分野で思う通りにキャリアを積めれば幸せですが、そう甘くもないのがこの世の中。固定観念に縛られることなく、自分の本当にやりたいことは何か、そのつど考えてやれば、未来は開けていくはずです!
頑張れ音大生!!!