音楽家を馬鹿にしてはいけない、作曲家にはリスペクトを持ちなさい!と、外国にいると、たまには腹の立つことのある話

ピアノとヴァイオリン

今日の写真は大好きなチョコラティエ、ウィーンのXocorat。一番好きかも〜。ウェブサイトはこちら

さてさて、先日はいかに大人の趣味のピアノマニアが楽しく、そして一生懸命に切磋琢磨しているお話を書きましたが、もちろん例外もあります。今日は、そんなお話です。多分、こういう人は日本にはいない気がします。外国特有かも。

その多くはティーンエイジャーで男子。とても裕福な家庭に育ち、小さい頃からピアノやヴァイオリンを親しみ、その裕福な環境から全ての人から「なんて上手なの?素晴らしいわ!」とお世辞の絶賛を受け、育ってきました。
だから、自分は本当に才能があって、上手だって信じて疑っていないのです。でも専門家が聞いたら、全部デタラメでめちゃクソ、ってやつです。

数年前、私が初めて出会った青年もそうでした。
当時16歳で、もう、あり得ないレベルの富豪。家族全員がピアノやヴァイオリンをたしなみます。趣味で絵画も書いちゃうし、ひととおりのこちらのセレブの文芸は全部クリア、って感じです。すんごい高いアパルトマンには家族の油絵の肖像画とかが平気であるし、ピアノだって、ベーゼンドルファーのグランドピアノがどどど〜〜〜ん!と置いてあります。

彼自身はとても丁寧で礼儀正しく、ユーモアもあって素直な可愛い青年です。すごく良い子。本当にすごく可愛い。
で、肝心のピアノですが、かなりの難しいものを弾けるのですが、みんな、めちゃくそ。よくあるタイプです。リズムもめちゃめちゃだし、音も間違いだらけだし、すごいすごい。でもそんなのはどうでも良いのです。直せばいいのだから。

私が切れたのは、彼が一言目には「ああ、この曲は簡単だから」と言ったり、「え〜、どうせ趣味で習っているんだから、音が違ったりしても良いじゃない〜」とか、挙げ句の果てには「この音はこっちの音の方が綺麗だと思うよ」です。

しばらくは様子をみていたのですが、切れました。しかし、もちろん、静かにです(笑)

「クラシックというものは、他の分野のものと違ってアレンジしたり変えたりしてはいけないの。どうしてだかわかる?それは作曲者に対するリスペクトなの。そしてね、きっと誰もあなたに今まで言わなかったのかもしれないけれど、あなたの演奏は残念ながら沢山間違えがあって、そして直そうとしている努力が全くみられないの。そうするとね、私たち専門の人はなんて思うと思う?ああ、彼はレベルの低いアマチュアピアノ弾きだな、って思うのよ。ごめんなさいね、気を悪くしたら気の毒だと思うけれど、そう思われて嬉しい?お世辞で褒められて、嬉しい?あなたは音楽家になるわけでも、なんでもないから、ピアノに時間がないのはわかるの。でも出来る範囲内で、誠意のある、きちんとした演奏が出来るようになりたくない?私はそれを助けることができるけれど、それがめんどくさくて嫌なら、別に他の先生を探したら良いと思うのよ。」

あ〜あ、この貧乏人のピアノ教師がくそ〜!とか思うのかな、と思ったのですが、即答したのは。
「きちんと勉強したいです」

私は、映画のアマデウスに出てくるサリエリが、皇帝にレッスンするみたいなことは出来ないので、とても嬉しく思いました。
お母様はちょっとムッときていたようだけれど(まあ、そうよね)彼は私のレッスンを喜んでいてくれて「明日も来てよ」とかなり集中的にワークしたのでした。結構上手になったかも。今は留学して外国で働いています。お世辞だけでなく、人前で立派に弾いているようで嬉しいです。自信も沸いたようです(不思議なことに以前はなかったそう)

このように、こっちではこんなふうにリスペクトに欠ける人もいたりします。
私なんてその昔「音楽とか楽器なんかで大学で学位が取れるという事実が信じられない」と言われたことがあります〜(笑、すごくない???)
しかし、きちんと説明して、見せると理解してくれるので、やっぱり人間、知らないことは教えてあげる、ということも必要かもしれませんね。