ピアノが上達する、ちょっと違った練習とは言えない練習方法とは?

ピアノとヴァイオリン

私のところに通っている、ある幼稚園の年長くんはとても可愛くて、私はメロメロです。
なにか新しいことを教えると、嬉しそうにその大きな二重の目を輝かせて、口角を思いっきりあげて、「にや〜〜〜〜」っと笑う。その笑顔がもう、たまらんというか、ほんとうにたまりません。見ているだけで幸せになる笑顔です。

さて、その彼、はじめてのレッスンでは、身体全体がもう、岩のように硬直していて、ひとつの音を出すだけでも、「そんなに突っぱんなくても〜〜〜」と思うくらいだったのですが、レッスンを重ねること、まるで石鹸が溶けるように腕も手首も指も自然体になり、嘘のように進化しています。

その子に前回のレッスンで、左手で「ド」の音だけを弾かせ、右手で好きな音を弾いてみる、という遊びをしました。右手で「ミ」を弾いてみると「なんか綺麗だよね〜」と誘導し、「ミのフラット、Es」を同時に弾くと、「あらあら、ちょっと悲しくない?飼ってたハムスターが死んじゃったって感じだよね」という、お得意のやつを教えていました。「レ」を弾くと、「あら、なんかちょっと綺麗じゃなくない?」「レのフラット、Des」を同時に鳴らすと、「もう、きったない音だなあ〜」みたいな感じです。短2度の和音でなんかのメロディーを弾くと、まるでおバカな漫画のシーンのようになるので、子供にはバカウケします。

まあ、こんなことをやって遊ぶのですが、それを彼はおうちで、かなり興味を持ってやっているそうです。(お母さん談)汚くぶっ叩いて遊ぶのではなく、注意深く音を聞いて、それを楽しんでいるので、めちゃめちゃ弾きのように聴こえても、うるさくない、というのは良くわかります。

実のところ、こういうことに興味を持って自分でもハマってやる子は伸びます。
きっと、クラシックでない分野のアマチュア・キーボードの人が、いろいろなコードの音の変化にハマるのと同じような気がします。そういう大人の人達は、自分がそのコードの音に魅了され、いろんなアレンジが楽しくてたまらないので、たとえ演奏自体はクラシックの大堂、アルゲリッチみたいにいかなくても、かなり上手なピアノ弾きになったりするのです。

クラシックでも同じことです。この遊びをやって、和音の不思議さに魅了されて、知らないうちに和声の種類を手の内に全部覚えてしまうと、将来は譜読みもめちゃめちゃ早くなります。楽しんで伸びる、とはこのことです。
やっぱり、感激して実行することは身に付きます。これも大切な「ピアノの練習」のひとつかもしれません。