きらいな楽器はありますか?面白い生徒嬢からの質問で思い出したこと

ピアノとヴァイオリン

「ねえねえ、嫌いな楽器ってある?」と生徒嬢にキラキラした目で聞かれて、ふ、と考えました。「う〜ん、特にないなあ」と答えたのですが、よく考えると、あった、あった。ありました。
子供の頃に大嫌いだった楽器。それはヴァイオリン。

うちの近くには多くのピアノ教室がありましが、ヴァイオリン、いえ、「バイオリン教室」もありました。そこを通りかかると、それはまあ悍ましい、すっごいノコギリというかニワトリの首を絞めたような分数バイオリンの音が聞こえてくるのです。当時小学生だった私は、毎日耳を塞いでその家の前を走って逃げたものです。

これは音大に入るまで続き、大学生になって、「堀米ゆず子先生」の演奏を毎コンで聴いて、「なんだ、こんなに美しい楽器だったのだ」と見直したものなのです。10代でヴァイオリンを聴くことをシャットアウトしていた時間が悔やまれます。

子供の頃あんなに嫌いだった楽器を自分の子供が学び、生涯の仕事にするなんて、当時はどうやって想像出来たでしょう。世の中とは面白いものです。

さて、話を元に戻します。

「私は特にないけど、貴女は嫌いな楽器あるの?」と聞くと、「待ってました」とばかりにかえってきた答えが、「リコーダー!!!!!」

普通のオーストリアの学校では、日本のように縦笛(リコーダー)やピアニカとか学ぶ機会は全くと言っていいほどないのですが、彼女の通ったリセ・フランセ(ウィーンにあるフレンチスクール)では音楽の時間にやらなければいけなかったそうです。うちの長男の時代はなかったんだけれどね。

「もう、あのピーピーいう恐ろしい音、耐えられないの。本当に大っ嫌い!」というので、「おお、それは大きな誤解。吹いてる人が上手いと、感激して飛ぶわよ」と説明しました。

これ、このリコーダー、実は私も大嫌いでした。
ご存知のように私の時代(大昔)日本の学校でリコーダーはほぼ義務でした。で、ちょっとでも穴が塞がってないと、生徒嬢のいうようにとんでもない、「ピーーーーー!!!!!」という爆音が出るし、うまく吹けないし、単旋律だし(当たり前)つまんないなあ、と思っていたものです。

しかししかしです。
ある時、フルートを専門に学ぶ同級生がリコーダーを演奏したら、まあ、なんと甘美で心を揺さぶられる美しい音色。失神するほど感激したのを今でも思い出せます。

だからね、嫌われるべく楽器などないのです(私にとって)
演奏者がプロであれば、どんな楽器も美しく鳴るのです。