みんな大好き「絶対音感」これはあった方が良いの?絶対音感はいったい何のため?

ピアノとヴァイオリン

私の個人的意見ですが、「絶対音感」があってもピアノやヴァイオリンの演奏が残念だったら、なんの意味もないと思います。演奏が上手ならば、あってもなくてもいい、と私は思います。「絶対音感」は「手段」であって、決して「目的ではない」と思うからです。

オーストリアでは日本のように、ピアノやヴァイオリンを習うことが一般的ではないため、「絶対音感ブーム」なるものは、聞いたことがありません。日本でピアノ教師をしている友人によると、「絶対音感が育ちます!」と宣伝すると、生徒集めに良いキー・ワードとなるそうです。食いつく親御さんも多いようですが、これ、いったい何に使うんでしょう?なんのメリットがあるのでしょうか?頭が良くなるのかな?など色々考える方がいると思います。

しかし、日本で音楽大学を受けるのであれば、絶対音感はあるに越した事はありません。なぜなら入試に「調音」や「初見視唱」の科目があるからです。そのためには、数年間きちんとソルフェージュの訓練を受けなければ、入試を通過する事は難しいかもしれません。私も他の音大出身者同様、小さい頃から音大受験を頭に入れていたので、ソルフェージュのレッスンも受けて、しっかり絶対音感が身につきました。この為には欠かせないものです。

私も聴こうと思ったら、すべての音は音名で聞こえます。楽器の音でなくても同様です。聴こうと思ったら、全部ドレミで聞くことも全く問題ありません。

面白いことに、体調の悪い時はフラット系(例えばDes-Dur)で聞こえて、ハイな時はシャープ系(Cis-Dur)で聴こえたりするので、本当に不思議です。

娘も絶対音感がありますが、ドレミでは聴こえないそうです。この音は何?といわれたら、どの高さのCisとかDとか当てられるけれど、曲が始終ドレミで聴こえるのは頭がおかしいんじゃないの?と失礼なことを言っています。これはピアノ科特有なのかな?とも思います。どうなんでしょう?

ヴァイオリンを学ぶのに、音感は絶対に必要ですが、平均率だ純正律だあるので、これはまた別のめんどくさいお話になります。基本的に、相対的な音感があればそれはそれで充分なのではないかと思っています。ヴァイオリンや他の楽器のことはあまりよくわかりません。

特に訓練はしませんが、ピアノのレッスンで音当てクイズは子供たちのお気に入りです。

レッスン初日で、ドレミを覚えたと同時に、単音で音を当てることからはじめて、和音に音を増やしていくと、本当に聴こえるようになってきます。考えてみれば、三声や四声の調音も、こうやって訓練してきたので、訓練次第で耳は育っていきます。そんなに大変な仕事ではありません。普通にソルフェージュをレッスンに取り入れると、自然に音感は身についていきます。大人も同じです。繰り返し、歌う、当てる、歌う、の訓練です。

単音よりも、和音として、和声の色の違いや変化を聴き分けられる事の方が理想のような気がします。よって、絶対音感は、それ自体は目的ではなく、音楽の学習の際に同時に自然に学ぶものであって、ツールだと私は思っています。音だけ当てられてもなんの意味もありません。

演奏家にとっては、素晴らしい演奏が出来る事が大切であって、その手段の一部である「絶対音感」を目的にするのはちょっと違うと思います。絶対音感インターナショナルコンペティションで1位になっても(そんなのないと思うけれど)仕事にはならないでしょうし、なんに使うの?というのが私の疑問です。取り間違えないことは大切です。