人生ほぼ初めての入院と小手術の体験記 ウィーンにて(3)

ウィーン生活

先日から人生ほぼ初めての入院と小手術の体験記 ウィーンにて(2)の続きです。音楽に関係ないので、興味のない人はどばしてください。

手術が終わって私達の病室に戻ってきたBさんも綺麗なオーストリア人。私よりひとつ年上です。
返ってくるなり彼氏(ご主人?)に電話して、甘えた声で「手術は全然大丈夫だったけど、1時間かかったから腰が痛いわ〜、お腹も減ったし喉もカラカラ〜」なんてやってたから、面白い人だなあと思っていたのですが、話を聞いてどびっくり、なかなかの苦労人です。

病気でご主人を亡くし、最愛の妹さんを亡くし、ご自身も数ヶ月前は盲腸が破裂しちゃって緊急入院、よって「病気」「病院」「入院」に関して徹底的に調べているので、かなりの「プロ患者」でした。妹さんのお話のくだりでは私はもう、涙・涙。

しかしながら、人生経験がディープなだけあって、「生きることへの感謝」がもう、半端じゃありません。
とてもポジティフ思考だし、彼女の話に私はかなり心を打たれました。本当に世の中いろんな人がいます。

食事の許可が出たBさんは私に「ごめんなさいね」と気づかいながらも、ガンガン飲んで食べていました。
術後はみんなこんなに食欲があるなんて、本当に驚きです。

そうこうするうちにAさんが手術を終え、ベットごと運ばれて来ました。
想像するよりずっと元気。みんなこうなの?と内心驚く私。手を振りながらニコニコしてはじめのセリフが「終わったわ〜〜〜、これで飲んで食べられる。もう、お腹減って死にそうよ」

「いよいよあなたの番ね〜〜〜!」とAさんとBさんに言われ、もう待ちきれない私。
3人で楽しくおしゃべりをして、やっと私の番となりました。

Aさんは「ギリ帰宅できるわ!私、ご飯を食べたら帰っちゃうけれど、グットラックね!!!」Bさんは「頑張ってね〜、帰ってきたら食べられるわよ!」ってみんな食に対する執着、すごいです(笑)

さあ、ここからが本番です。

ベットごと最上階にある手術フロアーまで看護師さんが運んでくれます。
初めての経験。ベットに乗せられたまま移動させられるなんて。。。。。寝ている私の視界に入るのは、どこを見てもアルミの壁・壁・壁。

あーあ、すごい、ドラマみたい。写真撮ってインスタ載せてみんなに見せたい、なんて思ったのも束の間、色々な場所を通って、手術台らしきところに乗せられました。テレビでやっているように、2、3人で「せいのっ」って下のシーツごと移動させるやつです。「ああ、これ本当にやるんだ」とドキドキ。

男性が数人いて(今考えると女性はいなかった気がする)誰が手術するのかもわからない。
多分流れ作業なんでしょう。やっぱりドキドキです。「『私、失敗しないので』って誰か言って!と心の中でふざけていると(心配でハイになっちゃってる)現れたのがイケメンの男性。

彼が私の手を優しく触って、「僕が麻酔科医の〇〇です。心配しないでね、すぐに気持ちよくなりますからね」と言って点滴を繋いで。。。

はい、そこから私は意識がぶっ飛びです。もちろん何も覚えていません。

目が覚めた時、私はだだっ広い部屋にいました。
もうね、10年分まとめて熟睡したような、それはもう爽やかな素晴らしい目覚めでした。どっこも痛くないし、本当に手術したの?って感じです。

これまた違う男性が私の元にやってきて、「大丈夫?気分はどうですか?」と聞くので、「この世で経験したことがないくらい爽やかで最高な気分なんですけど」と言ったら、笑っていたけれど、本当にそんな感じでした。

ここでは毎日、本当に沢山の手術をするのでしょう。私のように手術を終えた人が複数人ベットの上で寝ていました。外科手術を受けた男性は、それはもう気の毒で「痛い〜痛い〜」と訴えていたので、ああ、気の毒だなあと思いつつ、心の中で私みたいな女性の方が図太いのかしらとも思いました。

さて、私もニコニコ手を振りながらお部屋にカムバック。
Aさんはさっさと食事をして、彼氏にお迎えしてもらい帰宅したそうです。よってその夜はBさんと夜を過ごすこととなりました。

しばらくすると看護師さんがきて、私と歩く練習。
手術自体はどってことないらしいのですが、とにかく麻酔に気を使います。看護師さんが両手を取ってくれて、ちょこちょこ歩き、全然フラフラしなかったのでひとりでお手洗いにも行って、待望のお水と食事の登場です。

まずはお水とお茶を持ってきてくれて、遅い時間だったのに質素ですが、きちんと夕食も運んでくれました。黒パンにチーズ、野菜ちょっと、というものですが、流石に美味しかったです。空腹は何よりのスパイス、とはよく言ったものです。

手術室に入って出てくるまで約1時間でした。
私の場合は、実際に施術しているのは数分だったそうですが、術前術後の準備に大変時間がかかるそうです。いやあ、しかし皆さんのチームワークは半端ないです。

その夜、私もBさんも手術を受けてかなり疲れていたのですが、結構お話ししました。
今考えると、人生におけるポジティフな話に終始しました。ここの病院は看護師さんも受付の人も、お医者さんも麻酔科の先生も全員フレンドリーでユーモアがあって最高!という話から、人間、生きている今が何よりも大切だという話などなど。

そして前述のように「プロ患者」の彼女から、かなり参考になる情報をたくさんもらいました。
どんな検査が大切で、どんな検査にはどんな注意が必要か、何科の手術はどの病院が安心できるとかもう、一生分参考になりました。

終始、明るく楽しい会話だったのですが、はやり術後の組織検査結果の話になるとちょっと暗くなります。はっきり言えば、「悪性だったらどうしよう」ということです。それでも、頭を振り払って、「今はそんなことは考えないようにしましょう!」と同意しました。

次の朝、たらふく朝食を食べてBさんと先生、看護師さん達とお別れしました。
本当に親切にしてくれて、どんなに安心(それでもドキドキだったけど)した気持ちで手術できたことか、言葉に尽くせないほどです。感謝感謝。

しかし約1ヶ月たっても結果が送られてきません。
すごく心配だし、さすが待ちきれずに病院に電話をしました。

「まだ結果が送られてこないんです。お願い、心の準備はできています。悪性なら言って!!!」と詰め寄ったのですが、「大丈夫、『特に何にもなし』って書いてありますよ」とあっさり言われて安心したのでした。

息子と子供達の父親は詳細わからないので、私が死ぬくらい思ったのでしょう。娘に言わせるとかなりしつこく病院に電話しろだの、様子を見にいけだの言われ「うざかったよー」だそうですが、これもまた、ありがたい限りです。

これを機に、健康には気をつけ、きちんと年に一回は検査をして、毎日後悔のないように生きようと思いました。しかし、この世の中にはまだまだ知らないこと、知らない人が沢山います。生きることは楽しいことですね。