音楽大学合格後の「お礼」について知っておきたいこと
留学先の音楽大学に合格された方から、「合格のお礼はどうすれば良いでしょうか?」というご質問を複数いただきました。今回はこのテーマについて、私自身の経験と現地事情に基づいてお話しします。
現金のお礼は絶対NG!
最も大切なポイントは「現金をお礼として渡さないこと」です。
これは本当に重要です。日本では昔、「菓子折りの下に現金や商品券」を添えてお礼をする文化が存在していました。私の学生時代(約35年前)もまさにそうで、音楽大学の教授にご挨拶に伺う際には、それが「常識」とされていました。
しかし、この日本特有の文化をそのまま海外に持ち込むことは絶対に避けてください。オーストリアでは、現金を渡す習慣は存在せず、教授から「これは何の意味だ?」と困惑されるだけです。
過去には、ある日本人の親御さんが教授に現金入りの贈り物を渡してしまい、教授が非常に驚き戸惑ったという事例もあります。教授にとっては不快なサプライズになることすらあります。
この習慣が生む不公平とリスク
このような行為が広まると、本来実力で勝負するべき入試の世界に、「金銭的余裕のある家庭の子が有利」という不公平が生まれてしまいます。真面目に努力してきた学生たちの機会を奪う結果になりかねません。
では、お礼をしたいときはどうすれば?
もちろん、感謝の気持ちを伝えたいときもあると思います。そんな時は、ちょっとした気遣いのあるプレゼントで十分です。
- 日本のお菓子などの「小さな手土産」
- 地元の名産品や、軽くて気の利いたお土産
高価な物や大きな贈り物は避けましょう。実際に、ある教授は大きな人形をいただいて困ってしまい、最終的に返却したというエピソードもあります。インテリアに合わず、処分にも困るため、迷惑になることもあるのです。
食事に招待したい場合
学生と教授の関係がすでに築かれており、会話もできるようであれば、ご夫婦でお食事に招待することもあります。ただし、これは教授の性格や状況によりますし、苦手とされる方も多いので慎重に。
最も大切なお礼は「誠実な学びの姿勢」
教授が心から喜ばれるのは、学生が真面目に学び、実力を伸ばし、学内で優れた成績を収めることです。それが一番の「お礼」であり、何よりも大きな信頼につながります。
また、レッスン料や伴奏ピアニストへの謝礼は、忘れずきちんとお支払いしましょう。伴奏料は別途発生するのが通常です。トラブルを避けるためにも、事前にしっかり確認してください。
まとめ:感謝の気持ちは、形よりも誠実さで
オーストリアの教授陣は、金品を期待しているわけではありません。必要以上の贈り物をするより、一生懸命に学び、音楽家として成長していく姿を見せることが、最も誠実なお礼になるのです。
日本と海外の文化の違いを理解し、気持ちの伝え方を間違えないように心がけましょう。