このお題は本当に人気があって、「どんな親御さんの子供が伸びるのだろう?」もっと言うと「子供が『成功』するような親はどんな親?」ということを、多くの親御さんが知りたいと思っているのです。
私も例外ではなく、超一流の子供達を育ててきた巨匠クラスの教授先生はどんなご意見を持っていらっしゃるのかと思い、伺ってみました。どの教授、というのは書きませんが多くの演奏家を育て上げた教授です。
「先生、成功する子供の親御さんのことについて教えてくださいます?」というと、「ああ、親軍団、彼らはもう、本当にあり得ない。それについて書けと言われたら、何冊でも本が書けるよ」と笑いながらおっしゃいます。しかし、「あり得ない親軍団ばかりだけれど、その親軍団なしには成功がない、というのも事実なんだ」とおっしゃいます。まあ、そうよね。わかります。
私達も親同士で「『本気組』の親は全員クレイジーよね」と自分達でもよくわかっています。
毎日数時間、コンスタントに子供に楽器の練習をさせる、レッスンに遠距離で出かける、出費に関しても、『普通の人』からしてみると、理解のできないことばかりで、頭がおかしいんじゃないか、と思われても当たり前だと思います。
それだけならまだ普通なのですが、自分の子供を思う(?)あまり、枠を超えて非常識になる親も多いことは残念ながら事実です。
さてさて、ある売れっ子の少年がいて、彼は欧州で引っ張りだこです。
「彼の成功の秘訣は?」と聞くと教授はすかさず「母親が素晴らしい!」という答えが返ってきました。「どういうふうに?」と聞くと、親の中では逸脱して「優れている」とおっしゃる。私は非常に興味を持って、そのお母さんと知り合いたいなあと思っていた所、ひょんな共通点があり、偶然彼女ととても仲良くしてもらうことが出来たのです。
いろいろ話を聞いていて「ああ、なるほど」と教授のおっしゃった意味が本当によくわかりました。
まず、彼女は「周りを気にしない」「他の子と自分の子を比べない」のです。とどのつまりは、「他人の子供の悪口を言わない」「くだらない小さいことを見つけて、人の子供を蹴落とそうとしない」です。これ、実際、本気組の親がふつうにやるのを、私は結構目にしてきました。
そして彼女もご主人も、子供に異常なプレッシャーをかけません。教授に気に入られるように仕向けたり、不自然な小細工が一切ないのです。あくまで自然です。
子供がコンサートやコンクールでミスって落ち込んでいる時、彼女はいつも子供に言うそうです。
「来年の今頃は今日のミスを覚えてもいないはず。そして去年より今日の方が確実に進歩しているのは、自分でもわかっているはず。だからそれでもうOK。ミスは『余計なこと』例えば、間違えたら怖いとか、誰かに笑われる、とかそういうことを考えているから起きるの。楽しく演奏することに没頭しなさい、それが出来ないのなら本当にその楽器が好きなのではないのかも知れないから、よく考えるのよ」、と言うそうです。ふむふむ、確かにそう。言うのは簡単、実行するのは大変だけど。。。正論です。
親にそう言われたら、子供は気が楽になるなあ、とも思いました。
他人のゴシップには興味はありませんが、どの教授のどの学生がどんなテクニックで演奏するとか、そういう面でのリサーチはきちんとされていて、自分の耳や目で多くの情報を収集しています。そしてそれを人と(例えば私と)普通にシェアしてくれる。この情報はうちだけの秘密にしておこう、みたいな邪念が全くないのです。
教授がその子をめちゃめちゃ可愛がるのが、本当によくわかります。
伸びる子の親の特徴は、心が歪んでいないこと、「自分だけ!」「自分の子だけ!」と、欲にまみれていないこと、あくまで正当であって、何が大切かを本当にわかっている人、だと彼女から学んだ気がします。そうありたいものです。